マウスでは、食事によるヒスチジン摂取が十分でないとヒスタミン不足を生じ、ヒトの不安に似た行動が増えることを、東北大学大学院医学系研究科の吉川雄朗(よしかわ たけお)助教と谷内一彦(やない かずひこ)教授らが明らかにした。十分にヒスチジンを摂取することでヒスタミン神経系が正常に維持され、不安行動の改善につながる可能性を初めて示した報告として注目される。9月20日に米栄養学会誌Journal of Nutritionのオンライン版に発表した。
ヒスタミンは、必須アミノ酸の一つであるヒスチジンから脳内で合成され、脳内では神経伝達物質として機能しており、覚醒作用や不安を和らげる作用があると考えられている。ヒスチジンはカツオや鶏肉などに豊富に含まれる。食事中のヒスチジンがどれくらい神経ヒスタミン系に大切か、わかっていなかった。研究グループは、ヒスチジン含有量を25%に減少させた低ヒスチジン食と通常の食事をそれぞれオスのマウスに2、4週間与え、行動などを調べた。
その結果、低ヒスチジン食を与えたマウスでは、脳内のヒスタミン量が減少し、神経から放出されるヒスタミンの量も減っていた。このマウスは、50センチ四方の空間に入れて観察するオープンフィールドテストで、開けた中央部が不安から苦手で、壁際を好む行動をとっていた。明るい箱と暗い箱がつながった装置に入れて行動を見る明暗箱試験でも、不安で明るい箱を避け、暗い箱を好むことを見いだした。これらの実験で、通常の食事に比べて、低ヒスチジン食を摂取し続けたマウスでは、不安な行動が増加することを確かめた。
研究グループは「今後、ヒトでもヒスチジン摂取の重要性を調べたい。この研究は、新しい抗不安薬やサプリメントの開発につながるだろう」と期待している。
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・東北大学 プレスリリース