光アップコンバージョンの新材料開発

電気に変換が困難な低エネルギー領域の光を太陽電池などでも利用可能な短波長光に返還する材料を、東京工業大学大学院理工学研究科の村上陽一准教授らが開発した。

植物や藻が光合成で利用しているのに電気に変換が困難な低エネルギー領域の光(長波長光)を太陽電池などでも利用可能な短波長光に返還する材料を、東京工業大学大学院理工学研究科の村上陽一(むらかみ よういち)准教授らが開発した。

こうした研究分野は、光(フォトン)アップコンバージョンと呼ばれる。国内外で研究が行われており、日本でも九州大学のグループが、難しかった固体材料でも低いエネルギー光を高いエネルギー光に変換することに成功している(2015年8月4日ニュース「フォトン・アップコンバージョン 固体材料でも新成果」参照)。

村上氏らは、イオンだけからなり室温付近で液体の有機塩である「イオン液体」を色素と一緒にゲル化(液状物質が流動性を失い固体状になる)させる方法で、新しい光アップコンバージョン材料を作り出した。新しい材料は、透明で不燃性。さらに流動性がなく不揮発性という特徴を持つ。これらは全て光アップコンバージョン材料が実用段階で必要とされる性質だ、と研究グループは言っている。

写真.光アップコンバージョン材料。赤色の光を入射すると波長の短い青色に変換する(東京工業大学提供)

太陽電池や光触媒、人工光合成などの光エネルギー変換では、それぞれの材料に固有な「しきい値波長」が存在し、それより長い波長の光はエネルギーに変換できないことが大きな制約となっている。研究グループによると、今回の成果の要点は、イオン液体をゲル化して流動性を抑制しても、アップコンバージョン効率に影響する色素分子の拡散性が全く犠牲にならないという特徴を発見したことにある。

光吸収波長(利用できない低エネルギー光)と発光波長(利用可能な高エネルギー光)は、使用する色素によって変えることが可能。光アップコンバージョン技術の応用に向けた基盤的材料として、今後は各目的に対して最適な色素側の開発・探索が課題、と研究グループは言っている。

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・2015年6月15日ニュース「低エネ光の利用期待できる分子膜開発

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