超小型衛星で地上の5mも見えたぞ

東北大学と北海道大学が共同開発した超小型地球観測衛星「雷神2」が、高解像度多波長望遠鏡システム(HPT)を用いた望遠撮影の実験を始め、7月2日に梅雨の晴れ間を捉えて、地表の5mまで識別した写真を撮影することに成功した。

東北大学と北海道大学が共同開発した超小型地球観測衛星「雷神2」が、高解像度多波長望遠鏡システム(HPT)を用いた望遠撮影の実験を始め、7月2日に梅雨の晴れ間を捉えて、地表の5mまで識別した写真を撮影することに成功した。

雷神2は重さ43kg、1辺50cmの立方体で、開発費3億8000万円の安価な超小型軽量衛星。今回撮影した写真の地表5mの解像度はこれまで、重さ150kg以上の衛星で実現しているが、重さ50kgクラスの衛星としては世界最高という。研究チームが、新潟県南魚沼市の市立大巻中学校付近の水田を撮った代表的な写真を公開した。

写真は南魚沼市の3.2km x 2.2kmの範囲で、水田を区画する幅5m未満の農道まではっきり識別でき、地表での空間解像度は当初目標の 5m を達成した。仙台高等専門学校と共に開発した液晶フィルターや、特殊セラミックスのミラーなど先端技術を応用して製作したHPT望遠カメラ(長さ38cm、重さ3kg)で撮影した。その優れた技術と、衛星の高度な制御がかみ合っていることがわかった。

両大学の研究チームは「国際的に競争の激しい重量50kgクラスの超小型衛星開発で、日本の技術の優位性を世界に示せた。このクラスの超小型衛星は高度な実用衛星へ向けて大きな一歩を踏み出した」と意義を強調した。

東北大が2009年に打ち上げた雷神は、電源系のトラブルで十分に機能していない。雷神2は、その経験を生かして改良され、東北大が衛星バスシステム、北海道大が搭載観測機器を担当して3年間で作られた。種子島から5月24日に大型ロケットH2Aで宇宙航空研究開発機構(JAXA)の陸域観測技術衛星「だいち2」の相乗りとして打ち上げられ、高度約630㎞の地球周回軌道を飛行している。

研究チーム代表の吉田和哉・東北大大学院工学研究科教授は「今後、より高度な衛星姿勢制御方法の確立を目指して運用していく。また世界初となる、波長選択が可能な宇宙用液晶フィルターを用いたスペクトル撮影にも挑戦する。これが成功すれば、森林の種類や作物の生育状況、海洋のプランクトン群集なども解析できる可能性がある。超小型衛星でも大型衛星に匹敵する性能が出せることを実証したい」と話している。

写真1. 雷神2のHPT望遠カメラが撮影した新潟県南魚沼市の一部

写真2. 雷神2が撮影した南魚沼市立大巻中学校付近の拡大と地図

(いずれも提供:東北大学、北海道大学)

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東北大学 プレスリリース

北海道大学 プレスリリース

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