初の商業衛星打ち上げ 改良型H2A打ち上げ

今回の改良型は、2段目エンジンを余分に噴射することで飛行時間を延ばし、より円軌道に近い位置に衛星を投入する。

カナダから受注した初の商業衛星を載せたH2A改良型ロケット(29号機)が24日午後3時50分、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた。衛星が予定の軌道に投入できたかどうかの最終確認は午後8時半ごろになるが、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と運用を担当する三菱重工業の合同チームは成功に自信を示している。

衛星は、カナダの大手通信会社テレサットからの放送通信衛星。2013年に三菱重工業が打ち上げを受注した。H2Aは01年の初号機以来、国の衛星を打ち上げてきたが、今回が初の民間受注衛星の打ち上げ。政府や運用を担当する三菱重工業は、今後本格的な国際的な宇宙ビジネス参入を目指す。

JAXAと三菱重工業の合同チームは、H2Aの打ち上げ性能を向上させ、宇宙ビジネスでの国際競争力を高めるために「基幹ロケット高度化プロジェクト」と名付けた研究開発を続け、今回の打ち上げに臨んだ。具体的には、衛星側の負担を少なくするためにロケットを改良し長時間飛行する技術で、合わせて関連するさまざまなロケットやエンジンの制御、調整技術を工夫した。

打ち上げられた衛星は、赤道上空約3万6千キロの静止軌道に投入される。これまで、静止軌道への打ち上げは細長い楕円(だえん)の「静止トランスファー軌道」にまず衛星を投入。次にロケットから分離された衛星に自力エンジンを噴射させて高度3万6千キロの円軌道に投入する必要があった。今回の改良型は、2段目エンジンを余分に噴射することで飛行時間を延ばし、より円軌道に近い位置に衛星を投入する。衛星は燃料を節約できて寿命を延ばすメリットがある、という。

今回の打ち上げ費用は推定120億円。世界の商業衛星は年間20基程度打ち上げられるとみられるが、欧米の衛星打ち上げビジネス価格は高くても100億円以下。低価格化が進む中で日本は、衛星寿命を延ばすなど今回開発した新たな打ち上げ技術をアピールして参入する。

関連リンク

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