テレビとライブで子どもの脳活動は違う

テレビで学習する際の子どもの脳活動は、目の前の他者からライブで学ぶ場合と異なることを、上越教育大学の森口佑介准教授と東京大学大学院総合文化研究科の開(ひらき)一夫教授が確かめた。

テレビで学習する際の子どもの脳活動は、目の前の他者からライブで学ぶ場合と異なることを、上越教育大学の森口佑介准教授と東京大学大学院総合文化研究科の開(ひらき)一夫教授が確かめた。子どもがテレビなどの画像から学習する際の脳内機序の特徴を初めて示した発見で、学習へのテレビの有効利用の手がかりになる。8月2日付の米科学誌Trends in Neuroscience and Educationオンライン版で発表した。

生後6カ月の幼児でも、目の前の他者とテレビの中の他者を区別しており、テレビによる認識や学習は重要な研究課題となっている。これまでの研究で、3歳以下の幼児はテレビから学習が十分できないのに対して、4歳ごろからはテレビの他者から学習できることが知られていた。しかし、テレビから学習する場合と、ライブで学習する場合とで、学習プロセスや脳内機序が同じかどうかは分かっていなかった。

森口佑介准教授らは、5、6歳の子どもと20代の成人、それぞれ15人の男女で実験した。ライブで学習する場合と、テレビで学習する際の脳の活動度について、近赤外線で脳内酸化ヘモグロビン量の変化を外側から計測する近赤外分光法で調べた。目の前のモデル(ライブ条件)とテレビに映ったモデル(テレビ条件)がカード分けゲームをしている様子を観察した後、モデルと同じルールでカードを分けるよう、参加者に学習を指示した。

子どもと成人のどちらでも、カード分けの学習成績は、ライブ条件とテレビ条件で同じだった。しかし、子どもの脳の運動関連領野は、ライブで活動が上がるのに比べて、テレビで学習する場合、活動が平均的に弱いままだった。運動関連領野は運動指令を出す脳領域で、他者の行動を観察する時にも活動することが知られている。成人では、ライブ条件とテレビ条件いずれも、脳の運動関連領野の酸化ヘモグロビン量は時間とともに増加した。

森口佑介准教授は「子どもは5、6歳になれば、テレビからも学習できるが、脳の運動関連領野の活動は弱いままだ。この違いがどういう意味を持つか、さらに詳しく調べる必要がある。長期的な学習効果などに影響するのかもしれない。テレビやパソコンなどからの学習の必要性は今後も高まってくる。脳の活動の面からも、子どもたちがいかにしてデジタル機器から学べるか、を探りたい」と話している。

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科学技術振興機構(JST) プレスリリース

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