葉の光障害防ぐビタミンC輸送体を特定

植物で長年探し求められてきたビタミンC輸送体(トランスポーター)を、岡山大学の宮地孝明准教授らが初めて突き止めた。このトランスポーターが、光合成の際に葉で起きる光障害を防ぐのに重要な役割を果たしていることも実証した。

植物で長年探し求められてきたビタミンC輸送体(トランスポーター)を、岡山大学の宮地孝明(みやじ たかあき)准教授らが初めて突き止めた。このトランスポーターが、光合成の際に葉で起きる光障害を防ぐのに重要な役割を果たしていることも実証した。光ストレス耐性を強めた作物の育種などに役立つ成果といえる。岡山大学の森山芳則(もりやま よしのり)教授、馬建鋒(ま けんぼう)教授、理化学研究所の黒森崇(くろもり たかし)上級研究員らとの共同研究で、1月5日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。

植物は強い光で盛んに光合成するが、光の過剰なエネルギーが葉緑体に蓄積し、葉の組織が壊れて変色する葉やけなどの光障害を起こす。ビタミンCは、植物が強い光にさらされると、細胞質のミトコンドリアで作られて、同じ細胞内の葉緑体へ運ばれ、過剰な光エネルギーを熱として逃して、葉の光障害を防ぐ。しかし、ビタミンCの輸送で鍵を握る輸送体の実体は謎だった。

研究グループは、十分にわかっているシロイヌナズナのゲノム(遺伝情報)のうち、膜タンパク質を作る多くの遺伝子を大腸菌で発現させて精製した。それを小さな袋状の人工膜小胞の膜に組み込んで、それぞれのタンパク質の輸送活性を調べた。AtPHT4;4と名付けられていたタンパク質がビタミンCを小胞内によく運び込むことを見いだした。

このトランスポーターは、光が強く当たる葉の表側の葉緑体に多く発現し、葉緑体の入り口にある包膜に局在していることも顕微鏡で観察した。この遺伝子の発現は強い光を当てると、大きく上昇し、効率的にビタミンCを葉緑体に運ぶことを確かめた。このビタミンCトランスポーターの遺伝子を欠損したシロイヌナズナを作って解析したところ、葉緑体のビタミンC含量が少なく、光ストレス耐性が低下することも実証した。

宮地孝明准教授は「ビタミンCトランスポーターの特定は植物では初めてだ。光障害を防ぐ機能は、植物が進化で獲得してきた巧妙な生存戦略のひとつで、その解明に大きく前進した。ビタミンCトランスポーターはイネやトウモロコシなどの重要な作物にも存在しており、その輸送機能の増強が、強い光の中でも光合成能力が高い作物の育種に向けた目標になるだろう」と話している。

関連リンク

岡山大学 プレスリリース(日本語)

理化学研究所 プレスリリース(英語)

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