持続可能な開発目標(SDGs)実施指針の骨子に関して、私たちSDGs市民社会ネットワークの意見は以下の通りです。(2016年10月31日提出済み)
<指針・付表骨子 評価できる5つのポイント>
私たちは、政府が総理を本部長とする「SDGs推進本部」を設立し、全省庁の参加によりSDGs政策の形成が進んでいることを高く評価します。また、「SDGs推進円卓会議」が「指針骨子」にも明記され、推進本部の枠組みの中に、マルチステークホルダープロセスが公式に位置づけられたことも高く評価します。さらに「指針骨子」の以下の5つの点を評価します。
- 「現状の分析」で、「SDGs指標とダッシュボード」報告書を引用する形で、日本におけるSDGsの現状について、「達成まで程遠い」指標もあることを示し、取り組みをさらに強化すべき分野があることを明記している。
- 「主要原則」で、「2030アジェンダ」で強調されている、普遍性、包摂性、参加型、統合性、透明性と説明責任の5点を盛り込んでいる。
- 「主要原則」や「体制」で、「人権の尊重」を明記している。
- 「体制」で、SDGsの国内実施における「地方自治体」の参画の意義および役割を明確に定義している。
- 「体制」で、民間企業の「ビジネスと人権の観点に基づく」取り組みの意義を明記し、賞揚している。
<指針・付表骨子 5つの問題提起>
一方、骨子には、市民社会の観点から見て不十分な点も散見されます。以下の5点を指摘し、提案を行います。
1.ビジョンと優先課題
(ア)
「指針骨子」で「人間の安全保障」が、SDGs実施指針の指導理念として明記されておらず、「付表骨子」でも、施策の一つ(「国際機関との連携促進」)として出てくるに過ぎない。
<提案>
a) 「人間の安全保障」を、「指針」の「ビジョン」および「優先課題」の最上位に明確に位置づける。
b) 「人間の安全保障」を、「付表」8(SDGs実施推進の体制・手段)の「重点政策」の最上位に明確に位置づける。
(イ)
「指針骨子」の「ビジョン」では、SDGsの達成年限である2030年に、日本及び世界がどのような経済・環境・社会の状態にあるべきかが明確に示されていない。
<提案>
以下の項目について、「2030年のあるべき経済・環境・社会像」を、「2030アジェンダ」の重要なキーワードを含めて、具体的に記述する。
- 国内外の貧困および格差
- 世代間の衡平
- ジェンダー平等をはじめとする社会的包摂と人権
- 最も脆弱な立場に置かれた人々を含む参加型社会
- 持続可能な経済と労働
- 気候変動、生物多様性の喪失など地球環境問題の克服
- 防災および減災
2.推進に向けた体制
「ステークホルダーとの連携」で、SDGs達成に固有の役割を果たしているNGO/NPO等の市民社会に関する表記について、民間企業等と同等の地位を与えられておらず、その固有の役割の重要性も明記されていない。
<提案>
NGO/NPO等市民社会との連携について一段落を設け、政府との対話・協働を進めることを明記し、理由として以下の点を記述する。
★ NGO/NPO等は政府や民間企業には難しい、社会的脆弱性を抱えるコミュニティなどとの協働を行っており、「2030アジェンダ」が掲げる「誰も取り残さない」を実践するうえで不可欠。
★ 市民社会はグローバルなネットワークを持ち、新たな社会課題を迅速に社会に提起したり、政府・企業等の抱える課題について積極的に提言しており、「2030アジェンダ」が掲げる「社会の変革」に不可欠。
3.フォローアップ・レビュー
策定された「SDGs実施指針」について、定期的な見直しについての記述がない。
<提案>
策定された指針については、「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム」(HLPF)が4年に一回開催されることなどを踏まえて、一定期間(例えば4年)ごとに必ず見直しを行うことを明記する。
4.「付表骨子」に関して
現行の「付表骨子」は、各省庁から提出された「具体的施策」を8分野に縦割りで並べたものであり、普遍性と統合性において不十分。
<提案>
「具体的施策」の分類に際して、縦軸となる8つの「優先課題」に加え、横軸として以下の課題を「分野横断的課題」として指定し、これを用いて分類する。これにより、新たに導入・補完すべき施策の必要性が明らかになり、今後の取り組み方法の改善に役立てることができる。
- 格差の是正
- 包摂性の向上
- 人権の尊重・推進
- ジェンダー平等・主流化
- 地球生態系の保全・自然資本の維持・防災
- 地域の持続性の向上・地域課題への取り組み(国内のみ)
今回の意見募集には、多くの意見が集まったと存じます。「SDGs実施指針」にこれら市民の声が反映されるよう、期待しております。
■参考資料<現時点で、パブコメ提出している団体>
・その他は随時HPにて情報配信します➡こちら
動く→動かす事務局長
稲場雅紀