学校では教えてくれなかった「英語を読むコツ」 注目すべきは「固有名詞」

毎朝のサバイバル英文読解 その4

学生の頃と違って忙しい社会人の皆さんにとって、英語を読むことは「目的」ではなく「手段」ではないでしょうか。英文から有益な情報を引き出すための手段として英語に接するのならば、学生のときのように単語をコツコツ覚えて1文1文精読するのではなく、ある程度の単語力で英文の意図を効率的に把握する力が必要です。

難しいことに思えるかもしれませんが、じつはちょっとしたコツを知っているだけで、皆さんの英文読解力は劇的に向上します。そのコツとは「英語の文章の定石を知る」ということ。定石ですから、急場しのぎではなく、一生使えるツールです。学校では教えてくれなかった、でもとても重要な「英語を読むコツ」を、実際に問題を解いてもらいながらお教えしましょう。

【問題】

Q この英文の書き手は「エイプリル・フール」をどんな日だと考えているでしょうか?

April 1 is sometimes "All Fools' Day." So it is to be celebrated not because some of our fellow human beings are fools, but because, in some ways, we all are. As the American writer Mark Twain once said: "The first of April is the day we remember what we are the other 364 days of the year."

【解説】

文中の「具体例」を見抜けると、読解力は格段に上がる!

話題や主張をわかりやすく伝えるために、また自説を強化するために、具体例は頻繁に用いられます。英語を効率的に読み進めていくときに意識しておきたいのは、「具体例に入るサインを見逃さないこと」です。なぜかというと、「主張」と「具体例」という英文の構成を見抜くことで、具体例から前段の内容を推測したり、逆に前段の内容から具体例を推測したりと、わからない箇所を頭の中で補う力が身につくからです。

では、具体例が始まるサインとは何か。

「英文の中で、具体例を見抜くために何に注目しますか?」と問われれば、真っ先に思い浮かぶのはfor exampleでしょう。しかし、記事の第1回で解説したbutと同様に、とりわけ知的な英文であればあるほど、このfor exampleも使われません。

しかし、この表現に頼らない「具体例発見のサイン」は、重要なもので3つあります。今回は問題を通して、そのうちの1つをご紹介しましょう。

注目すべきは「固有名詞」

さて、では何に注目すべきかというと、「固有名詞」です。文中で固有名詞が出てきたら、その文(固有名詞を含む文)から具体例が始まります。「文章中」というのは、言い換えれば「第2文目以降」ということです。

固有名詞自体は文の中のどこにあってもかまいません。文頭でも文中でも、固有名詞を含んだその文からが具体例です。言い換えれば、固有名詞を含む文の先頭に、「見えないFor exampleがある」とも言えます。知的な英文の書き手は、何か具体例を出したいなと思ったときに、For exampleより固有名詞を使うことが多いと思ってください。

be to構文の超カンタンな訳し方

この固有名詞のルールの威力を実感していただく前に、まずは覚えておくと役に立つ文法事項を見ておきます。

1文目April 1 is sometimes "All Fools' Day."は「4月1日は『あらゆる愚かな者の日』と呼ばれることがある」です。

2文目の前半So it is to be celebratedでは、is toという形が使われています。この形は文法ではとくに重要な、「be to構文」と呼ばれるものです。このbe to構文に対応するには「予定・意図・義務・可能・運命」の5つの訳語を覚えて、それをその場その場で当てはめて考えましょうとよく言われますが、実は「~することになっている」という意味が核となっていて、このまま当てはめればほとんどの英文は解決します。

言い換えれば、英語ネイティブは5つの意味を覚えているのではなく、この核となる意味だけを感覚として持っていると言えます。今回の英文でも、it is to be celebratedは「祝福されることになっている」で意味は十分に理解できますね。無理に「予定」だの「意図」だとの考える必要はまったくありません。

省略は「反復」から考える

2文目の前半(だから~祝福されることになっている)の後半、not because some of our fellow human beings are fools, but because, in some ways, we all are. には、記事の第1回でも登場した、あのnot ~ but ... という形が使われています。その間にbecauseが挟まって、「~という理由ではなく、...という理由で」となっています。

Not because some of our fellow human beings are fools,

But because, in some ways, we all are .

最後のwe all areに注目してください。これだけだと「私たちは皆」何なのかがわかりません。ということは、「最後のwe all areの後に何かが省略されている」と考えられます。

ここは大事なところで、省略が起きているときには、「反復による省略」を真っ先に考えましょう。ここでは、not becauseの後にあるsome of our fellow human beings are foolsを見て、foolsが省略されていると考えます。

今回はbutという、あまりにもわかりやすい主張の目印があるので、この反復による省略は見抜きやすいのですが、にも関わらず、多くの人がいい加減に読んでしまいがちなところです。we all areの部分でしっかり省略されているものを頭の中で補いながら意味を理解しないと、読み進めるにつれてどんどんわからなくなってしまうので、こういったところを丁寧に読むことはとても大事なのです。

以上から、この2文目の後半は、「私たち人間の中に愚か者がいるからではなく、何かしらにおいて、私たちは皆愚か者だからこそ」となります。この部分が英文の核心部分です。

Not because some of our fellow human beings are fools,

But because, in some ways, we all are .

「私たち人間の中に愚か者がいるからではなく

何かしらにおいて、私たちは皆愚か者だからこそ

読まなくても先がわかってしまう!

第3文目はAs the American writer Mark Twain once said(アメリカの作家、マーク・トゥエインがかつて次のように言った)で始まります。

さて、Mark Twainという「固有名詞」が出てきました。ですからこの文以降が、前の内容に対する具体例となります。ここで英文の書き手は、自分の主張を述べた後に「かの有名なマーク・トゥエインも言っているように」と、自分と同じ趣旨の発言を引用することで主張を補強しているわけです。

そう考えると、Mark Twainのセリフを丁寧に読まなくても、その趣旨を予想できてしまいませんか? おそらくそれは、主張部分のin some ways, we all are (fools)をMark Twain風に言い換えた内容であるはずです。

実際、Mark Twainのセリフの解釈はかなり難しいです。「何を言っているのかわからない」と思った人も多いのではないでしょうか。

しかし、別にそれでも構わないのです。きちんとin some ways, we all are (fools)の部分が主張だと把握して、Mark Twainのセリフがその具体例になっていると判断できれば、意味はわからなくとも英文の内容はつかめてしまうからです。「あ、マーク・トゥエインって人も『人間はみんな愚かだ』と言っているのね」と判断すればいいわけです。

マーク・トウェインは『トム・ソーヤーの冒険』などの著者として知られるアメリカの作家ですが、こういった有名人や偉人の言葉というものは、格好をつけるからなのか、とにかく解釈が難しいということがよくあります。そういったときほど、「直前の内容と同じことを言っている」と考えて読み進めていけばいいわけです。

問題文の和訳例

4月1日は「あらゆる愚かな者の日」と呼ばれることがある。だからその日は私たち人間の中に愚か者がいるからではなく、何かしらにおいて、私たちは誰もが愚か者だからこそ、祝福されることになっているのである。アメリカの作家、マーク・トゥエインがかつて次のように言った。「4月1日は残りの364日、私たちが何者であるのかを思い出す日なのだ」と。

関正生

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