新入社員が5月病で会社を辞めるのは悪いことではない? (シェアーズカフェ・オンライン編集部)

「会社に行きたくない」「会社を辞めたい」と感じている新入社員はどうすればよいのでしょうか。そこで上場企業の経営企画室出身、人事労務コンサルティングに強みを持つ社会保険労務士の榊裕葵氏に聞いてみました。

ゴールデンウィークが終わり、憂鬱な気分で会社や学校に通っている人も居るかもしれません。こういった状態を俗に5月病と言います。会社や学校などで、新しい環境に上手く適応できず、疲れが溜まって気分が落ち込んでしまう状態を言います。そのタイミングをもじって5月病と言います。

「会社に行きたくない」「会社を辞めたい」と感じている新入社員はどうすればよいのでしょうか。そこで上場企業の経営企画室出身、人事労務コンサルティングに強みを持つ社会保険労務士の榊裕葵氏に聞いてみました。

■ブラック上司・ブラック企業が引き起こす5月病に注意

――ゴールデンウィークも終わりましたが、5月病を患っている人はどうしたら良いのでしょうか。

5月病状態の新入社員が「とにかく頑張ろう。」と思いつめるのは逆効果です。5月病には様々な背景が考えられるので、まずは自分の置かれている立場を客観的に見ることが必要です。

会社に入社すると、新入社員はとくに、その会社の常識が全てになってしまいがちです。世間一般的に見てパワハラに該当するような処遇を受けていても、その異常さに気がつかないまま無理を重ねて体調を崩してしまうことがあります。

――新しい環境に慣れるのは誰でも大変だと思いますが、なぜ辞めたいとまで思ってしまうのでしょう。

「お前はこんなこともできないのか。」「お前は給料泥棒だ。」などと大声で怒鳴りつけ皆の前でさらし者にしたり、「今日中に契約を10件取って来い。取れるまで帰ってくるな。」と、過大なノルマを課す。あるいは「新入社員が休日を取るなんて10年早い。土日は自学自習して、その成果を報告せよ。」と私生活にまで干渉をする。

このような言動は、全てパワハラです。こんな扱いを受けたら、誰だって会社に行きたくなくなって当然でしょう。

――かなりブラック気味な企業ですね......。では、新入社員はどう対策を取れば良いのでしょうか。

特定の上司または先輩からパワハラを受けているということならば、人事部の窓口などに相談してみましょう。良識のある会社ならばしかるべき改善施策をとってくれるはずです。しかし、会社全体がそのようなパワハラ文化であるならば、退職を選択肢に入れることは間違っていません。会社のほうが異常なのですから。

■モチベーションが原因の5月病

――パワハラが原因ではなく、上司や先輩も親切だけどやる気が出ない、なんていう人もいると思います。辞める程じゃないけど新しい環境にちょっと疲れてしまった人です。そういう人はどうしたら良いでしょう?

上司や先輩の姿を見て、自分も10年後、20年後、そうなっていたいと思えるかを考えてみてほしいです。

新入社員に与えられる仕事というのは、野球で言えば「素振り」や「筋トレ」のようなもので、決して面白いと思える仕事ではないかもしれません。しかし、「だからこの会社はつまらない」とか「この会社を辞めたい」とか考えるのは早計です。野球でも、ホームランを打つためには基礎トレーニングが重要なのと同じよう、仕事においても、成果を出すためには、まずは、その会社の仕事の基礎となる事柄を学ぶことが大切です。

――目標やお手本、いわゆるロールモデルですね。

目指すべき先輩や上司も、最初は基礎から始めたはずです。だから、その先輩や上司に追いつけるよう、歯を食いしばって頑張ってほしいし、身近にそのような先輩・上司がいればモチベーションにもつながるはずです。

――お手本が見つからない人はどうしたら良いですか?

10年選手、20年選手の上司や先輩がやっていることが新入社員の自分と大して変わらなかったり、ワンマン社長が全てを握っていて役職が付いても何ら権限を与られなかったりするような社風の会社であれば、モチベーションが上がらないのは当然です。会社の社風はそう簡単に変わるものではないですから、辞めることを選択肢にしても間違ってはいないと思います。

万一その会社が潰れたり、自分がリストラされたりしても、その時点で年齢相応のスキルが身についていなければ、路頭に迷って困るのは自分です。それならば、今辞めてスキルを伸ばせる会社に入りなおすことも勇気ある選択だと私は思います。

■5月病の対応は必ずしも「頑張る」ではない

――なるほど。では最後に新入社員にメッセージをお願いします。

5月病ないし、その疑いを感じたら、やみくもに頑張ろうとすることは逆効果です。自分を憂鬱にさせている原因は何なのかを、一呼吸おいて、冷静に考えてみてください。親や上司は、「辛抱が足りない」とか「今やめるのはもったいない」とか言うかもしれませんが、そのような言葉を真に受けると、ますます自分を追い込んでしまいます。まずは、当事者である自分自身が、この会社で頑張り続ける価値があるのかどうかを見極めすることが大切です。

日本では、まだまだ、新入社員として入った会社に岩にでもかじりついて辞めないことが美徳だ、という文化も残っています。私は、その考え方が100%間違っているとは思いません。しかし、そのような考え方に縛られすぎることによって、新入社員が自身を追い詰め、最悪は自殺に至ってしまう可能性さえあります。そうまではならなくても、「辞めない」という選択肢を無理にとった結果、未来を狭める可能性もあるのだということを忘れないでください。

――本日はありがとうございました。

【取材協力】

榊裕葵(さかきゆうき)社会保険労務士

2011年社会保険労務士登録。埼玉県社会保険労務士会。上場企業の経営企画室でキャリアを積んだ社会保険労務士として、戦略的な人事労務コンサルティングに定評がある。

公式HP あおいヒューマンリソースコンサルティング http://www.aoi-hrc.com/

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