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2018年09月19日 13時11分 JST | 更新 2018年09月19日 13時11分 JST

「踊る広報」という生き方 ~サラリーマンでもやりたいことを諦めないパラレルキャリアについて~ (玉木潤一郎 経営者)

踊る広報・柴田さんのような生き方をするためには、様々な環境が必要なように思える。

スポーツや音楽や芸術など、学生時代に打ち込んできたことを社会人になって止めてしまう人は多い。

たとえその道のプロフェッショナルにはなれなくとも、かつては高いレベルで取り組んできた活動を仕事中心の生活になっていく中では続けられなくなる。完全に止めなくても趣味程度になってしまう人も多いだろう。

それというのも従来の働き方の中では、企業に勤める身で仕事以外に夢中になって取り組んでいるものがあるとは言いづらかった事情がある。しかし働き方が多様化する現代では、本業を持ちながらやりたいことに妥協せず堂々と第2のキャリアを築くことに挑戦している人も現れ始めている。

■"踊る広報"という生き方
人材派遣会社・株式会社ビースタイルで広報担当として働く柴田菜々子さんもその一人だ。大学卒業後に企業への就職の道を選んだものの、学生時代に打ち込んだコンテンポラリーダンスへの思いを捨てきれなかった。

一年間迷った末に上司に退職を申し出たところ、仕事とダンスのいずれか一択ではなく両立の道があることを教えられた。考えた末に彼女が選んだのは、「週3日の会社勤務と週4日のダンス」だった。

週3日の会社勤務は、ダンサーとして活動するには週4日が必要だという計算からの逆算だった。しかし正社員である限り成果は要求されるし、両立を認めてくれた会社のために彼女自身も妥協したくはなかった。

そこで週3日で週5日勤務のころと同じ成果を挙げるにはどう働けばいいかを上司と模索し、幸い理解ある周囲の協力を得て、驚くべきことに現在のところ週5日勤務と同様の成果を達成しているという。

一つの仕事を抱えているだけでも大変な思いをしている私たちからすれば相当な苦労に思えるが、菜々子さんから直接聞いて感じるのは、それはまさに二つのことが並行(パラレル)して彼女の人生を彩る濃密な日々だ。

■パラレルキャリアとは
本業を持ちながら第2のキャリアを築く生き方を「パラレルキャリア」と紹介したのはP.F.ドラッカーだが、これはいわゆる副業の推奨ではない。そのため、本業以外の活動から報酬を得られるかどうかは問題ではない。 実際に20代半ばからダンスに復帰した柴田さんがプロのトップダンサーを目指すのは難しい。その代わりに彼女が目指したのは、ビジネスで得た知識を使ってダンス業界を発展させることだった。ダンサーが活躍できる場を広げるためにも、まずは自分が仕事とダンスの両立を実現させて、パラレルキャリアという生き方が現実に可能であることを証明したいと彼女は考えている。

■新しいキャリアを築く
新卒から定年まで一つの企業に依存する終身雇用の時代は終わろうとしている。働きながら自分の夢も追い続けられるようになり、いずれはその夢が報酬を生む可能性もある。

しかし果たしてそのようなチャレンジが誰にでも可能なのだろうか。踊る広報・柴田さんのような生き方をするためには、様々な環境が必要なように思える。

二つ以上のことを水準以上のレベルでやり続ける能力、本業である会社の制度と規則、上司や同僚からの理解、一歩踏み出す勇気、あるいはそんな苦労をしてまで自分がやりたいと思える好きなものが見つけられない人もいるだろう。

しかし筆者が柴田さんに取材したところ、私たちでも出来そうないくつかのポイントが見て取れる。

二つ以上のことをこなす能力について言えば、柴田さんも仕事と生活のリズムをつかむまでに一年以上かかったそうだ。けして器用なタイプではない上に、飽き性で入れ込み過ぎると飽きてしまうという性格も寄与して、焦らず少しずつ生活のリズムをつかんでいった。

実際にはダンスと本業の両立に関しては、まずは焦らず通常の会社勤務を3年間続けたのち、週3日勤務に移行してからダンスを再開した。いきなりどちらもバリバリこなすような高い目標を掲げるのではなく、まずはスタートに向けて動き出す。それを継続していく中で訪れる環境の変化や人との出会いを大切にしていくことで活動が広がっていく。

また会社や周囲の理解に関しても柴田さんの手法が参考になる。彼女は突然ダンスとの両立を宣言したわけではなく、入社当時からやりたいことがあると少しずつ言い続けていた。彼女のコミュニケーション技術の肝は「人は驚くと反発する」という点にある。たしかに急に宣言すれば、それがどんなことであれ組織では様々な摩擦を生むことを私たちも知っている。

準備万端でいきなり宣言する必要はなく、やれたらいいなあと思っていることを少しずつ告げていく。理解が得られればやり方はむしろ周りが考えてくれる。"踊る広報"というキャッチも考えたのは柴田さんではなく直属の上司だった。

■これからの働き方
繰り返しになるが、会社に生涯をささげる時代は終わろうとしている。そして会社が個人の生活を意味もなく制限することもなくなっていく。実際に現代では本業への専念を強要できない合理的な理由も多い。

柴田さんにとって収入面では本業といえる人材派遣業でも、婚前のキャリアを活かしたいと考える多くの既婚女性がスタッフ登録している。既婚女性は出産や育児、妊活、介護など様々な理由で本業に専念できないケースが多い。しかし企業の側からも有能な女性のキャリアを途切れさせたくないと考える声が聞かれる。

またクリエイター職などは、編集者をしながらライター、SEをしながらWEBデザイナーなど、平日は会社に勤めながら週末はフリーの創作活動をしている例も多い。フリーの活動で得たスキルや知識が本業に寄与する面も大きい。

会社から収入を得つつ個人がフリーランスで活動することが妨げられない時代になっていく。そしてこのような例は都心においてのみ可能なわけではない。いやむしろ経済が縮小する地方においてこそ、一つのキャリアに縛られずに活動することが求められていくのではないか。

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玉木潤一郎 経営者 株式会社SweetsInvestment 代表取締役

【プロフィール】
建築、小売店、飲食業、介護施設、不動産など異業種で4社の代表取締役を兼任。 一般社団法人起業家育成協会を発足し、若手経営者を対象に事業多角化研究会を主宰する。起業から収益化までの実践と、地方の中小企業の再生・事業多角化の実践をテーマに、地方自治体や各種団体からの依頼でセミナー・コンサルティングの実績多数。