石破 茂 です。
地方創生関連の国家戦略特区法改正案は、本日の参議院本会議で可決され、今国会に提出した私の所掌する法律案はすべて成立致しました。
尽力いただいた関係委員会、国対をはじめとする皆様、政府のスタッフの皆様に心より感謝いたします。
この7月7日で議員生活30年目となりました。
昭和61年、中曽根内閣の「死んだふり解散」と言われた衆・参同時選挙で、7月6日投票、翌7月7日開票という変則的な日程でした。
当時私は29歳、まだ中選挙区制度下で得票は56534票、鳥取全権区での当選者4名中最下位という「疑似落選体験」を味わいました。上位3人の当選が決まり、残る一議席をめぐって自民党の私、社会党の武部氏、公明党の熊谷氏の3人でデッドヒートが展開され、ようやく午後2時過ぎに当確が出た時の感激は今も忘れません。
先帝陛下の崩御、リクルート事件に端を発する政治不信の高まりに伴う激しい政治改革議論、竹下・宇野・海部と目まぐるしく変わった政権、消費税の導入と、様々なことがあった当選一回の頃が、遠い過去のようにも、つい昨日のことのようにも思い出されます。
参議院の一票の格差について、鳥取・島根、徳島・高知を合区する案が具体化しつつあります。
日本国憲法上、衆議院と参議院に異なる位置づけはなされておらず、第43条に「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と定められているだけですが、最高裁判決などに鑑みれば、両院ともに格差は二倍以内、というのが憲法上の要請でしょう。
米国やスペインの例がよく採り上げられますが、国家の成り立ちや憲法上の位置づけが異なるため単純に比較することは困難ですし、我が国においては「選挙制度や権能が酷似している二つの院が存在していることをどのように考えるか」という議論を決して避けてはならないと思います。
二十年以上前、政治改革や選挙制度を議論していた時に、「国会議員の定数削減と地方分権は一体で進めなくてはならない。外交、防衛、通貨、財政、教育の基本以外の分権を徹底することにより、地方の発展は地方の権能において図られるべき」ということを党でも国会でも訴えた覚えがありますが、未だそれが明確な形とはなっていません。
権限とともに財源も当然委譲しなくてはならないのですが、税源の偏在や交付税制度の在り方など困難な問題があり、議論の進捗がはかばかしくないというのが実態で、今奇しくも地方創生とともに分権担当相でもある私に課せられた課題は重大です。
40年以上前、小学生6年生の社会科の試験で、「国会議員Aは、ある法案の採決に当たり悩んでいる。その法案は日本全体のためにはなるが、彼の選挙区には不利益となるものである。国会議員Aのとるべき投票行動について論ぜよ」という問題が出されました。
そのとき、「国会議員は全国民の代表者なのだから、たとえ選挙区の利益に反しても当然賛成すべき、というのが正解なのだろうけれど、この議員は選挙区で厳しい立場におかれるだろうな」と思ったものでした。
たとえば「参議院は地域並びに職能の代表者によって組織する」のような形で憲法を改正する、といった議論にも、正面から取り組むべきでしょう。その際には、衆議院との権能の違いも明確にすべきです。
「議論には時間がかかるし、自民党は衆・参両院とも改正発議に必要な三分の二の議席を持っていないのだから、どうせ無理に決まっている」と最初から諦めてしまうのは敗北主義というものではないでしょうか。
いずれにせよ、「今回は4県の合区と幾県かの定数増減だけでなんとか済ませ、根本的な議論は先送りにしよう」という姿勢は決して取るべきではありません。選挙区や政党の利害を超えて民主主義と国家の在り方を真剣に考えている議員は他党にも少なからずいるはずであって、この議論は自民党こそがリードすべきものと考えます。
「明治日本の産業革命遺産」の登録については、いずれ回を改めて論じたいと思います。
ここまでの議論は外務省を中心に進められてきましたが、指定された以降の所掌は内閣府となり、この担当大臣も私となっております。ジャーナリスティックな議論ではなく、ことの本質をよく見極めたいと思っております。
本日夕刻、19日午後9よりTBS系で放映される「ナポレオンの村」の披露試写会に行って参りました。この原作本「ローマ法王に米を食べさせた男」(高野誠鮮著・講談社新書)は、実に痛快で面白い本でした。あっという間に読めるものですが、お勧めです。
週末は、11日土曜日が稚内市長、商工会議所会頭をはじめとする皆様との懇談会、自衛隊稚内分屯基地訪問、北海道グラウンドワーク「地方創生を語る会」で講演・パネルディスカッション、宗谷管内市町村長との意見交換会、稚内市内視察、市長村長・地方議員・経済人との交流会(稚内市内)。1600から「地方創生でニッポンが変わる」(テレビ東京系、収録)の放映があります。
12日日曜日はおといねっぷ美術工芸高校視察(音威子府村)、夕張市内を市役所はじめ10か所視察、市長・経済人・農協関係者との懇談会(夕張市内)、という日程です。
都心は梅雨の晴れ間の覗いた一日でした。
台風接近中の地域の皆様、お気をつけてお過ごしくださいませ。
(2015年7月10日「石破茂オフィシャルブログ」より転載)