カフェがCDレーベルを始める意味

CDって買ってますか? すごく音楽好きな人ならCD屋さんに行って、色々と試聴して買ってると思うのですが、普通の生活をしている人なら、最近は本当に買わなくなったんじゃないでしょうか。
George Remington via Getty Images

CDって買ってますか? すごく音楽好きな人ならCD屋さんに行って、色々と試聴して買ってると思うのですが、普通の生活をしている人なら、最近は本当に買わなくなったんじゃないでしょうか。

僕は以前、ルシッド・フォールのCDをリリースするときに、「今、CDはどうやって買ってますか?」と、色んな人から聞き取りをしたことがありました。

すると答えはこんな感じでした。

「昔はCDは月に1~2枚は買ってたけど、最近は1年に数枚」

「今でもたまに新しいの聞きたいなとは思うけど、CD店には何か決まったCDを買うという目的がない限りは行かない」

「ライブに行って演奏にすごく感動したら、帰りにそのライブ会場で買う」

「FBで趣味が良い友人がススメてたり、ツイッターでフォローしている人がススメていて、そのURL先に試聴があって、そのままワンクリックで買えると買う」

「すごく好きなカフェでかかってて、良いなあと思ったら、実はそのカフェで売ってたので買う」

なるほど。そんな感じなんでしょうね。

でも、最後の「好きなカフェでかかってて」というシチュエーションにすごく可能性を感じませんか?

日本には素晴らしい「ジャズ喫茶文化」というものが存在して、「こだわりのあるマスターが心血注いでセレクトした音楽ソフトを最高の状態で聴く」という「日本の喫茶道」みたいな様式があります。

今の日本の音楽にこだわるカフェはその「日本独特の様式」を受け継ぎながら、新しい方向を模索しているんだと思います。

そしてそれが発展したカタチが「カフェがレーベルを持つ」です。

例えば今度、姫路のハンモックカフェさんが「ハンモックレーベル」というレーベルを9月4日に始めます。

状況をよく知らない方は「ふーん、カフェがレーベル」と思うかも知れないのですが、これ、かなりの覚悟がいると思うんです。

今、全くの新録のCDを責任もってリリースするのって、そうとう「売る自信」がなければならないんです。

アマゾンで売って、タワーとHMVで売って、それでも1000枚いかない新譜のCDなんて、普通なんです。

それを「ひとつの飲食店」が引き受けるって、ホント、驚くべきことなんです。

でも、もしかして「みんなに愛されているカフェ」なら逆に可能なのかもと思うんです。

例えばハンモックカフェには毎日何十人も来店して、そのほとんどのお客さまが、ハンモックカフェのお店の雰囲気、食事、飲み物、そして流れている音楽、に共感しています。そんな好きなカフェが自身のレーベルでCDを出すんだったら「必ず買うよ」という人が年間にすると千人以上にはなりそうです。

今は「バーン!」と広告を出して、FMで「ガンガン」かけて、CD店の一階の目立つところに「ドドーン」と並べたからと言ってCDはそう簡単に売れません。

それよりも、小さなカフェの店主が、すごく音楽が好きで、そしてその音楽を「自分のカフェを愛してくれているお客さま」と一緒に楽しめたらという方法で展開する方が、数字も良いかも知れないし、そして何よりも確実に「同じ趣味の音楽が好きな人」に届くんだと思うんです。

そんな小さなカフェやバーといった個人経営の小さな飲食店のレーベルやCDをいくつか紹介します。

ハンモックカフェ

姫路のお食事にもこだわった小さなカフェの中村夫妻が9月4日にハンモックレーベルを立ち上げます。

Bar Music

広島で68年続く老舗の「中村屋」の長男中村智昭さんが渋谷で経営している音楽バーです。

café vivement dimanche

鎌倉で20年続く名店のマスター堀内隆志さんはランブリング・レコードで様々なCDをプロデュースしています。

アプレミディ

ご存知渋谷アプレミディの橋本徹さんもアプレミディ・レコーズというレーベルを運営しています。