森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化の話題を幅広く発信しています。
4月号の「時評」欄では、待機児童ゼロを目指して保育所の増設が進められる中で、公園がその用地として使われている状況について、京都学園大学教授・京都大学名誉教授の森本幸裕さんが論じています。
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公園用地を保育所・保育園建設に、敷地のなんと30%も使えるように法改正するとの報道が2月初めにあって驚いた。
深刻な待機児童問題に対して、子どもがうるさいという近隣住民の保育所建設への反対解消はたいへんだから、公園を使おうというのだろうか。
一方で現実の公園を見ると、ほったらかしで見苦しい、決まりきった木で囲まれた土の砂漠は活用されていない、植え込みは怪しい人が隠れる場所になるかもしれない。
それなら本屋とカフェのセットで小奇麗にして、「空き地」は保育所に、と考えられても無理のない公園もあろう。
でも、これは公園が不要なのではなくて、オープンスペースのデザインの質や管理水準が低い上に、地域で活用する適切な仕組みが欠如しているのが一番の問題ではなかろうか。
●奥に建設中の保育所のため、この公園は元の面積の半分近くが廃止された。公園を転用する動きは各地で始まっている=東京都杉並区
もともと公園は、自然を壊してできる都市にこそ必要とされるオープンスペースを、身近に確保するものだ。
温暖化で頻発する集中豪雨による内水氾濫や激化するヒートアイランド現象などに対して、ますます都市内の自然の意義が高まっている。
だから公園内に設置できる施設には制限があって、建ぺい率(建築物の平面積/公園面積)は原則2%となっていた。
それに加えて休養施設や教養施設で10%、それも文化財級なら20%、さらに野外ステージのような開放性の高い施設なら10%を特例で上乗せすることは可能だった。
これを国は2012年に、自治体が地域の実情に合わせて独自に基準を設定できるように変更したところだ。
京都市もその政策に乗って、カフェや健康づくり活動の基地などを作るには2%では苦しいので、5000平方メートル以上の公園なら4%まで公園施設を認める基準作りをした。
実は筆者もその片棒を担いだのだが、それは「空き地」と見られやすい公園の機能と魅力の向上につながればとの思いからだった。
だが、施設建設で損なわれる生態系サービスを、屋上緑化や敷地の雨庭化で担保する条件を付けなかったことが、今になって悔やまれる。
ここで、公園用地がどのように生み出されたものか振り返ってほしい。
用地は降って湧くものではない。例えば、たくさんの地権者をまとめて区画整理をする時には、地権者の元の持ち分の減歩で公共用地を確保する。
土地区画整理法の施行規則では面積の3%以上を公園として確保することになっている。
全国に開設済みの街区公園、近隣公園、地区公園の約半数はこうして生み出されたものだ。それでも、1人当たりの公園面積は目標に届いていない。
かつて公園発祥の国イギリスで、敷地の3割程度に質の高い住宅を配して、その不動産価値で7割程度の面積に美しいイギリス風景式庭園を公園として確保したことを思えば、わずか3%の公園がさらに侵食されるのは一体なぜなのだろう。
この逆風を、せめて地域に貢献できる生態系サービスを向上させた「森の保育所づくり」につなげられないものか注目したい。