国産材を主体に フェアウッド100%の家具作り/うちのeco力

家具にこれまでほとんど使われることがなかった杉、さらには小径木や間伐材を有効活用しており、林業の課題解決につながる取り組み

森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化の話題を発信しています。10月号では、企業の環境貢献を紹介する連載「うちのeco力」において、国産材による家具作りに力を注ぐワイス・ワイス(WISE・WISE)の話題を取り上げました。

滑らかな曲線を描く白木の椅子。体を優しく受け止めてくれる座り心地。自然と「どこの山の木ですか」と聞きたくなる。

家具メーカー、株式会社ワイス・ワイス(WISE・WISE)=本社・東京都渋谷区=の製品の一つ、「KURIKOMA」だ。その名のとおり宮城県栗駒山のスギで作られている。社会貢献型の商品を表彰する一般社団法人ソ-シャルプロダクツ普及推進協会主催の「ソーシャルプロダクツ・アワード」2015特別賞(東北復興)に輝いた。

●宮崎県諸塚村の木を使ったテーブルと社長の佐藤岳利さん。手前の「KURIKOMA」

など椅子も国産材製だ=東京都渋谷区神宮前5丁目のワイス・ワイス本社

審査員の評は「単に復興支援というだけでなく、家具にこれまでほとんど使われることがなかった杉、さらには小径木や間伐材を有効活用しており、林業の課題解決につながる取り組み」としたうえで、「デザイン、座り心地のよさや見た目のあたたかさ、持ち運びしやすい軽さ、と商品そのもののレベルも極めて高い」とある。

家具に使うには耐久性で課題があったスギ。「KURIKOMA」は、スギの繊維を交差させて張り合わせる積層の造りで、背柱・脚・座枠を一体化した工法になっている。製材所は同県栗原市の栗駒木材株式会社。開発には駒沢女子大学空間造形学科教授でインテリア・家具デザイナーの榎本文夫さんが加わった。

開発のきっかけは、社長の佐藤岳利さん(51)が東日本大震災の被災地のためにできることを模索していた時、現地の製材所で聞いた一言だった。「被災地では今、復興関連の建設事業などが盛んだが、一段落したら仕事がなくなってしまう」職人たちの長年の経験に裏付けられた技に加えて、CLT(直交集成板)と同様の構造を家具に採用することで、JIS 規格の3倍の強度を達成した。

1996年創業。国産木材を素材の主体にして商品生産するまでには紆余曲折があった。

当初は「おしゃれでカッコいい品をより安く」の路線。低価格競争は2008年のリーマン・ショックのころにかけて激化し、「同業他社より少しでも安く」が第一。そのために海外の安価な木材を調達、中国での生産比率を半分近くまで高めていた。

同年、大口顧客のあるホテルから品質にクレームがついた。全品交換で数千万円もの損

失を出した。プライベートでは2009年に初めて赤ちゃんを授かった。これが転機となり、「『何のために仕事をやっていたのか。この子の未来のために役に立つ仕事をせねば』と考え直した」。安心・安全を第一に、食品同様に素材のトレーサビリティー(追跡可能性)を徹底させる路線に切り替えた。

国際環境NGO「FoE Japan」の協力を得て4年がかりで素材の流通経路を調査。2013年、産地が明らかで資源の再生のため管理された森林からの木材、フェアウッド(合法木材)使用率100%を達成した。

佐藤さんは「まだやりたいことの10%ぐらいしかできていませんが、全国各地の地域の方々と手をつないで地域と未来が真に豊かになる仕事をしっかりやっていきたい」と話した。

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