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2015年12月04日 15時39分 JST | 更新 2016年12月01日 19時12分 JST

市民講座「進行する気候変動と森林 ~私たちはどう適応するか」を開催

「進行する気候変動と森林~私たちはどう適応するか」をテーマに、第3回「森林環境」市民講座(森林文化協会主催)を10月24日(土)、75人の参加者を迎えて東京・築地で開きました。

森林文化協会の発行する月刊『グリーン・パワー』は、森林を軸に自然環境や生活文化の話題を幅広く発信しています。パリで気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)が始まりましたが、12月号ではこの会議を控えた10月24日に森林文化協会が開催した、市民講座「進行する気候変動と森林~私たちはどう適応するか」の内容を紹介しています。

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「進行する気候変動と森林~私たちはどう適応するか」をテーマに、第3回「森林環境」市民講座(森林文化協会主催)を10月24日(土)、約75人の参加者を迎えて東京・築地で開きました。

●「森林環境」市民講座で意見を交わす松下和夫さん、中静透さん、原澤英夫さん、竹内敬二さん(左から)

コーディネーターの松下和夫・京都大学名誉教授は、冒頭で「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2100年までに温室効果ガスの純排出量をゼロにする必要があるとしており、気候変動対策には時間がない。11~12月にパリで行われる気候変動枠組み条約第21 回締約国会議(COP21)の議論が重要になる」と、間近に迫ったCOP21の意義を強調しました。そして、温室効果ガスの排出を抑える緩和策に加え、広範囲に予測される悪影響に対応する適応策が、対策の両輪として重要になることを指摘しました。

生態系を活用した防災・減災を

「気候変動に伴う生態系影響と適応」と題して講演した中静透・東北大学生命科学研究科教授は、将来予測として、気温が北日本ほど上がり、降雪量は本州の日本海側で減り、今より強い台風の発生が増えることなどを紹介しました。すでに①高山植物が急速に衰退②ブナやオオシラビソなどの生育適地が減少③東北地方においてタケの分布が拡大④台風による風倒木が大量発生⑤樹木の病気が北へ拡散⑥シカなど野生動物が増加、といった現象が、発生しつつあるそうです。

そして自然生態系の適応策を打ち出すに当たって、①生物多様性への悪影響の低減②他分野の適応策による生物多様性への影響の回避③生態系を活用した対策の構築、の三つの視点が重要と説明。各地の保護区を「緑の回廊」でつないだネットワークの構築、生態系を活用した防災・減災(Eco - DRR)の実現などの必要性を訴えました。

「適応策をめぐる国内外の動向」の講演で原澤英夫・国立環境研究所理事は、IPCC 第5次評価報告書が気候変動による主要リスクとして①海面上昇・沿岸の洪水・高潮被害②大都市部の洪水被害③極端現象によるインフラ施設・ライフラインへの影響④熱波の健康影響⑤食料供給・食料システムへの影響、などを挙げたことを解説。マングローブ林の再生、洪水の早期警戒システムといった適応策は、すでに一部で実現しているようです。

熱波を機に取り組んだ欧州

1990年代には適応策を説く研究者が「敗北主義者」と批判されましたが、欧州では数万人規模の死者が出た2003年の熱波を機に取り組みが進んだといいます。原澤理事は、前日に日本政府が公表した「気候変動の影響への適応計画」(案)も取り上げ、現行の施策に適応という考えを組み込む、情報共有を通して国民各層の理解と協力を図る、地方公共団体レベルでも取り組む、などの大切さを説明しました。

講演後の質疑・討論では、『グリーン・パワー』に「環境ウオッチ」を連載中の竹内敬二・朝日新聞シニアライター(編集委員)もコメンテーターとして加わり、東日本大震災後に整備が進む防潮堤の是非、人工林が抱える気候変動リスク、今後の里山保全の方向性、自然エネルギーを"いじめない"エネギー政策への転換などについて、参加者の質問に答えながら、活発な意見交換がなされました。

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この市民講座の登壇者4人を含む研究者らが執筆した年報『森林環境2015』(特集:進行する気候変動と森林 ~私たちはどう適応するか)を2015年3月に発行しました。内容にご関心のある方は、森林文化協会HPをご覧になるか、森林文化協会にお問い合わせください。

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