雪かきコミュニケイション

大雪は邪魔で迷惑なものだけど、雪かきコミュニケイションは悪くない。日ごろまったく交流のないご近所さんとこうして会話が出来て、きっと次に会ったら挨拶が出来る。先の都知事選では「防災対策」も重要な案件だったが、防災対策には日ごろからの、こうした地域のコミュニケイションが一番重要な気がする。

東京は2週続けての大雪になった。

8日の雪もすごかったが、今回も本サイトによれば「最深積雪は東京都心で27センチと先週末の大雪に並び、横浜で28センチと16年ぶりに20センチを超えた」そうだ。東京都に住み始めて30年になるが、こんなに続けざまに大雪が降ったのは初めてじゃないだろうか。

折りしも受験シーズンだし、土曜日といえども出勤や通学の人も当然いるわけで、病院に予約が入っている、透析へ行く、冠婚葬祭など、どうしても出かけなくてはならない人にこの雪はひたすらうらめしいものだろう。朝からゴミの収集、郵便配達、宅配便、新聞配達、牛乳配達、みなさん、本当におつかれさまです、おせわになります、とも思う。

しかし大雪は悪いことばかりでもない。

私の住む地域は人通りが少ない住宅街。放っておくといつまでも道は雪に覆われたまま。夜になって凍結でもしたら危険だ。「ヨシッ、雪かきだ!」と意を決して長靴を履き、手袋、ニット帽、マフラーと完全防備で表に出たが、手には100均で買ったへなちょこチリトリ。ありゃ。それでヨイショ、ヨイショと雪かきを始めると、私の家の向かいにある公共施設の男性が大きな雪かきスコップを手に「それじゃ、腰が痛くなるでしょう? 大丈夫、私がやりますよ」と、瞬く間に家の前の雪を片付けてくれた。「ありがとうございます!」とお礼を言い、では私はこちらをと、脇の小道を少しやり始めたら、今度は同じ施設の女性2人が「いいですよ、やりますよ」と大きなスコップでガシッガシッと雪を除けてくれた。「うわああ、ありがとうございます」と顔を上げて見ると、2人とも若い女性だ。

「今日は朝から出勤されたんですか?」

「ええ、そうですよ」

「電車動いてました?」

「遅れてたけど、大丈夫でした」

「たいへんですねぇ」

「いえいえ」

と、お互いニコリ。たわいない会話だけど、目の前にある施設だというのに、この地域へ引っ越してきてから1年、誰とも挨拶も会話もする機会もなかったので、初めて話が出来た。

それから3人が施設に戻った後、私はその脇の小道をさらになんとかしたいと思った。すると小道沿いのアパートから若い夫婦が出てきて、やはりへなちょこチリトリで雪をパラリパラリ払い始めてる。彼らも今まで話もしたことのないご近所さん。目の前の施設に余ってるスコップを2本借り、彼らの元へ行ってみた。

「これ、借りてきました。いっしょにやりましょう」

そう差し出すと、なんと男性は草履履きにくわえ煙草。

「大丈夫ですか?」というと、「ああ、濡れてかまいませんから。ありがとうございます。うわ。やっぱりスコップだとぜんぜん違いますねぇ」と、驚いた声を出してザクザクやり始めた。

私もスコップでザクザクやり、女性もチリトリでザクザク。ベタ雪で重く、溶けた水が滝のように流れる。汗をだくだくかきながら、3人で家4軒分の路地に細い小道を貫通させた!

「やったぁ!これで通れますね」

「よかったあ」

と、トンネル工事でも成し遂げたように大喜びする私たち。すると男性が、

「残りもうちょっと僕たちでやりますよ。スコップは返しておきますから。ありがとうございます!」と。なんて、たのもしい!

大雪は邪魔で迷惑なものだけど、雪かきコミュニケイションは悪くない。日ごろまったく交流のないご近所さんとこうして会話が出来て、きっと次に会ったら挨拶が出来る。先の都知事選では「防災対策」も重要な案件だったが、防災対策には日ごろからの、こうした地域のコミュニケイションが一番重要な気がする。あれして、これしてとお上任せにするのではなく、私たち自身が日ごろからこうしてつながっていくことって大切だと思う。雪はいい機会を与えてくれた。

とか書いている間に晴れてきたじゃないか。

大雪/崩落した屋根

大雪 画像集(2014/2/14-15)

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