中小企業支援の新たな形「f-Bizモデル」に全国50超の自治体が熱視線

今、売上アップ支援という「攻めの経営支援」が求められています。それは...
秋元祥治

政府が力を入れる経済政策の中でも、大きな論点となっているのが各地の地域へ効果をいかに波及させていくか、ということ。まさに地方創生、が大きなテーマとなってすでに久しいわけです。

そして、地方創生の最重要課題とも言える中小企業支援の分野において、"お金をかけずに売上アップを実現するサポートを行う"と言われる富士市産業支援センター・f-Biz(エフビズ)の支援モデルに、高い注目が集まっています。f-Bizは、センター長である小出宗昭氏のもと、ブランディングやマーケティング、ITの専門家チーム主に売上アップに特化した無料の経営支援を行なっている。9年間でのべ26000件を超える相談が寄せられ、多数の新規事業や新商品など、売上アップの事例が生まれています。

これまでの公的産業支援といえば、補助金や助成金の申請支援や会計業務などの記帳指導、さらには制度融資の窓口支援などが中心でした。これらの「守りの経営支援」の取り組みも高度成長期などには有効だったでしょう。一方で人口減少フェイズに入り、いかに売上を上げていくかということに課題の主眼が置かれるようになった今、売上アップ支援という「攻めの経営支援」が求められています。

それは、単に取り巻く経営環境を診断し他人事のように分析をするのみでなく、実際の売上アップにむけて具体的な提案をしサポートまでしてくれる存在が求められている...それを具現化しているのがf-Biz、というわけなのです。

シンポジウムの様子(第二部)

先週、8月3日静岡県富士市では『Biz版 地方創生会議』が開催されました。

同会議には、f-Bizモデルの中小企業支援施設を設置した全国13市町の首長らをはじめ、各地の"ご当地○○-Biz"のセンター長が集結。各地域における支援事例た成果が共有され、f-Bizモデルを通じた地域活性について活発な議論が交わされました。

驚いたのは、とにかく高い全国からの注目度。全国からこのシンポジウムに全国50を超える自治体関係者が参加し、市長・副市長と行ったクラスの方も10名前後学びにお越しになられているのですから。

小長井・富士市長は会議の冒頭、「f-Bizモデルの支援こそ地方創生の切り札」とあいさつ。

第一部では、13自治体の市長および副市長が登壇し、各地域におけるf-Bizモデル開設の経緯や活動について発表。さらに、8月22日に「Iki-Biz」の開設を控える長崎県の離島・壱岐市の白川博一市長からは、全国391名の応募者から選ばれた森俊介センター長への期待が語られました。

また、Bizモデルを擁する自治体同士の連携強化を図る、「全国Bizサミット」の開催も決定しました。

第二部・パネルディスカッションでは、全国8つのセンターのセンター長が各Bizの支援事例を発表。

お金をかけることなく、「セールスポイントを活かす」「ターゲットを絞る」「連携する」といった知恵を出して売上を上げるというf-Biz流支援の秘訣を語りました。おおよそ20件の各地の支援事例の中には、本人たちの気づいていないセールスポイントを見出し展開する中で、売上が3倍となった民宿の事例や、大手メーカーの下請けに依存してきた小さな町工場が、トレンドを捉えターゲットをしぼった新商品を投入した結果全国から注文がやってくるようになった事など、会場からも驚きの声が上がる事例が続々と。

※富士市産業支援センター・小出センター長、各地のセンター長

2008年8月に富士市で始まった取り組みが今では10数地域に自治体主導でひろがり、50を超える自治体関係者が集まり、導入を積極的に検討するようになったのはなぜでしょうか。

「中小企業支援への手詰まり感」と言い切るのは、いいすぎでしょうか。日本の企業のうち99.7%が中小企業と言われています。商店街の1つ1つの店や、町工場など中小企業支援こそ地域活性化のど真ん中だ、と言っても過言ではないでしょう。

これまでの多くの自治体が取り組む中小企業支援は、1)展示会出店補助などの補助金、2)年に何度かのセミナー・講演会の開催、3)借り入れの際の利子の一部補助(利子補給と言いますね)、そして冒頭に言及した公的産業支援機関への資金拠出といったちころでしょうか。

つまり、ダイレクトに売上アップにつながるうち手がないのです。そうした手詰まり感の中で、f-Bizモデルへの注目が日増しに高まっているといえるでしょう。

f-Biz小出センター長は、「f-Bizモデルの成功に地域性は関係なく、すべては支援する人材の適性によって決まる」とシンポジウムでも言及。お金をかけずに知恵を出し、売上をあげていくには高いコンサルティング能力が求められ、それを実現できる人材の確保が重要だと指摘しました。

各地では年収1000万超の報酬で公募を行い、多くの母集団の中から適性ある人材を採用・育成を行うことで高い成果をあげています。一方、地域で支持される結果を出さなければ即座にクビとなるよう単年度契約とし、ともそれば「お役所仕事」と揶揄されるようなことのないような緊張感が成果につながるよう制度を設計しています。

地方創生や、中小企業支援といった中でにわかに注目されるf-Bizモデルの背景には、現状の自治体主導の取り組みへの手詰まり感が透けて見えます。そして、富士にはじまり全国各地で高い成果を上げているこうした取り組みへの期待は、まだまだたかまりを見せるように思います。

f-Biz・全国へ広がる"ご当地Biz"の広がりにこれからも目が離せません。

秋元 祥治

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