安全対策を徹底し、ベビーカー置き場も完備。「東京大仏」の乗蓮寺さまに、謝罪のため伺いました

現場ではしっかりとベビーカーや子連れ参拝客に対する配慮が行われていた。

こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。

本日は私が「ベビーカー論争」として取り上げたブログにてご迷惑をおかけした寺院である、乗蓮寺さまに訪問させていただきました。

「東京大仏」という名物を有し、初詣の際には長い行列ができる有名スポットです。

私の軽率な表現により、あたかもこちらのお寺が心無い対応により「ベビーカー自粛」を呼びかけたようなイメージが流れてしまいましたが、乗蓮寺さまがその決断に至るまでにはきちんとした背景や理由がありました。

また、決してベビーカーを排除しているわけではなく、参拝にあたっては「ベビーカー置き場」も設置されています。

まずはそうした点を改めて、伺ったお話を元にお伝えさせていただきたいと思います。

初詣「ベビーカー自粛」要請で大騒ぎ 「差別」批判へ寺側の意外な言い分

すでにJ-CASTニュースの記事でも報道された通り、乗蓮寺は前年まではベビーカーや車椅子に優先対応を行っていました。しかしながらその優先措置を悪用する参拝客が現れたり、ベビーカー参拝した家族が敷地付近で待ち合わせをするなどして、参拝客を誘導する動線が混乱。

そうした中で2015年にベビーカーを起因とする事故でけが人が発生し、警察からのアドバイスもあって、不本意ながらとうとうベビーカー利用自粛を決断せざるを得なかったというものです。

お寺側の安全管理に対する意識は、極めて高いものがあります。写真のように急な石段が続く参道では、ちょっとしたきっかけで大惨事が起きるとも限りません。

初詣に関わる重大事故として、1956年の「彌彦神社事件」というものがあります。初詣に殺到した参拝客が石段の途中に滞留し、ごった返したことで重さに耐えきれなくなった玉垣が倒壊。次々と倒れ込んだ参拝客たちの被害は大きく、なんと死者124人・重軽傷者77人を出す大惨事となりました。

これに対して最高裁判所は、過失致死被告事件として「神社側は多数の参拝客による事故の可能性を予見し、交通整理などの手段を講じるとともに、安全な誘導を徹底する注意義務があった(要約)」とする判決を下しています。

こうした歴史的教訓もあり、乗蓮寺の安全対策は徹底しています。大晦日~年始には地元警察から25名の人員が出るのに加え、自発的に36名の民間警備員を雇って交通整理を実施。

急な階段の途中には絶対に人を滞留させず、その手前で待機させて上の混雑が緩和されたら誘導を再開するなどの対応を行っているそうです。また、こちらの画像で取り上げた正面は入り口専用の一方通行となり、出口としては敷地内左手にあるスロープから退出する運びとなります。

そしてこのスロープが、ベビーカーを利用した参拝客が訪れた際の優先通路となっていました。ベビーカーを通す場合、多数の参拝客が出てくる流れの一部を断ち切り、逆方向に進む動線を一箇所作らなければなりません。

非常に多くの通行量がある状態で、こうした相互通行の流れを一時的に作り出す負担は非常に大きく、指示が行き渡らなければ大きな事故につながる可能性もあります。

こうした中でもなんとか対応を続けてきたものの、制度の悪用者や事故などのやむを得ない事情により対応の変更を決断せざるを得なかったというわけですね。

また今回のベビーカー論争の中で、

「『ベビーカーで参拝は遠慮してください』ではなく、ベビーカー置き場を設置すれば問題が解決するのでは?」

という意見がありましたが、まさにその通りで、乗蓮寺は初詣時のベビーカー置き場をすでに設置しています。ベビーカーでお越しの参拝客を見かけたら、そちらにベビーカーを置いて整列して下さるよう、警備員が誘導を行っていたとのことです。

看板の表現だけを見た印象とは異なり、現場ではしっかりとベビーカーや子連れ参拝客に対する配慮が行われていたということも、ここで再度お伝えしておきたいと思います。

改めて、こうしたお寺側の事情や配慮が伝わらず、あたかも寺自体が不寛容な対応を行っていたかのように受け取れる記事を書いたのは私の過ちであり、ご迷惑をおかけした関係者の皆さまに心より申し訳なく思っています。

私自身としてはベビーカー利用に対する論争そのものがテーマであり、具体的なお寺の対応について責める意図は持っていなかったのですが、

「あなたがブログ記事で取り上げたタイミングから、明らかに強い批判を含む問い合わせが増えた」

「寺側にも事情や背景があったことをしっかりと調べてから、それが伝わる形で情報発信をして欲しかった」

というご住職のご意見はもっともであり、長年に渡ってお寺が築いてきた信頼や評判を棄損してしまったことは慙愧の念に耐えません。

住職になられる前にはもともと、NHKなどの報道機関とも一緒にメディア関係の仕事をしていたというご住職からは、現場を丁寧に見て取材・調査をする重要性と、事実や利害関係者に配慮した正確な情報発信の必要性について厳しいご指導をいただきました。

今後、社会問題について提起する際には、その情報発信によってもたらされる影響力を深く考慮し、単に「論争」という抽象的な対象ではなく、実際の利害関係者となりえる方がいることに十分な注意を払っていきたいと思います。

お寺の損なわれたイメージや信頼は一朝一夕に取り戻せるものではありませんし、ご住職にもこれをもってご寛恕いただいたわけではありません。乗蓮寺の取り組みがしっかりと伝わるよう、改めて今後も私からの情報発信を継続していくものです。

この度、多大なるご迷惑をおかけした乗蓮寺の関係者皆さまにこの場で改めて心よりお詫びするとともに、本日のお時間を取っていただいたことに深く感謝いたします。ご住職にご指導いただいた安全管理に関する書籍なども拝読し、来年の初詣にはぜひ実際に参拝したいと考えています。

ブログ読者の皆さま、今回の件で様々な意見を下さった方々につきましても、引き続き厳しいご指導ご鞭撻をいただけますと幸いです。

この度は誠に、申し訳ありませんでした。

おときた駿

(2017年1月8日「おときた駿公式サイト」より転載)

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