「貧しい若者から、富める高齢者へ」シルバーパスによる所得再配分、やめませんか?【都議会定例会「討論」その1】

本定例会で、待機児童対策のために急きょ組まれた「大型補正予算」が約37億円。これと比べても、年間160億円というシルバーパス事業の大きさがよくわかります。討論でも述べさせていただきましたが、「貧しい若者から、富める高齢者へ」の所得再配分を是正するために、この制度は見直しが不可欠です。

さてさて、今日からは何回かに分けて、

本定例会最終日に行った「討論」の中身をご紹介したいと思います。

討論って何ぞや?という方は↓

(写真は前回の討論のもの。今回は撮影なし...)

全文をコピペして、はい報告!みたいなことをすると、

誰も読んでくれないのは間違いない気がしますので、

トピック毎になるべく解説していきたいと思います。

私の討論全文はこちらにて。

【平成26年第三回定例会最終日】 おときた駿 討論

今回はまず、「シルバーパス」に関する部分から。

すでに何度かブログで取り上げておりまして、

「またシルバーパスかよ...」

と思う方もいらっしゃると思うのですが、

私はこれと闘っていくと決めたのです(キッパリ)。

シルバーパスのすべての意義を否定するものではありませんが、

これには典型的な有権者に媚びるバラ撒き発想が根底にあり、

世代間格差の助長を象徴するような政策だと考えられるからです。

参考:

まず、基本的な仕組みからおさらいしましょう。

シルバーパスは、寝たきり状態を除く70歳以上の都内在住の高齢者の方が、

申請により1,000円または20,510円で発行してもらうことができる交通パスで、

都営交通+αの都内さまざまな交通機関を無料で利用することができます。

この費用の違いは何かというと「所得」の違いで、

区市町村税の課税対象となる所得基準を上回っている高齢者の方には、

20,510円の負担をお願いすることになっています。

東京都シルバーパスのご案内

この20,510円というのがつまり、シルバーパス一枚の「価格」で、

この価格×枚数が東京都の財源から東京バス協会に「補助交付金」として支払われています。

その発行枚数は90万枚以上、平成24年度実績で補助交付金は160億円弱となっており、

この金額は毎年3億~5億円のペースで増加していっています。

ちなみにシルバーパスの「価格」算出式は以下の通りです。

(これに対する突っ込みは、また後ほど)

200円(都内バス運賃の平均額)×10(乗車回数見込み)

×12(ヶ月)×0.8547(共通バスカードの割引率)=約20,510円

さて、本定例会には厚生委員会へ陳情・請願として、

「請願27第7号シルバーパスの改善に関する請願」

が提出されておりました。

この請願の要点としては2つ、

・多摩モノレールにもシルバーパスが使えるようにしてほしい(パス利用の拡大)

・シルバーパスの利用料金を、所得の段階に応じて細かく負担軽減してほしい

シルバーパスの更なる拡大・負担軽減(財政負担増)という内容で、

私どもの方針とは相反するものであります。

共産党さんが紹介議員ですしね。

確かに現在、一定の所得がある方は1,000円→20,510円とその負担が

飛躍的に増大する現行の制度ですが、そもそもこの基準には財産などのストックが

まったく加味されていないため、9割以上の対象者が1,000円での発行となっています。

高齢者の方はフロー(所得)でその生活状況を図ることは難しく、

所得があってもストック(資産)を持たない方もいれば、その逆もあり得ます。

段階に応じて...というところには部分的に賛成しますが、負担軽減だけが目的ではなく、

限られた財源が本当に必要な人に行きわたるよう、一人ひとりの資産状況や、

シルバーパスの使用頻度に応じて負担金額を変えていく制度を取るべきです。

ただ、23区に比べて多摩地区における交通機関で

シルバーパスの利用範囲が狭いという「多摩格差」があることは確かですので、

最終的にはこちらの請願については一部「趣旨採択」とさせていただきました。

実は先だって第二定例会の最終日、

シルバーパスについての文書質問を提出しておりました。

議事録出るのがやたら遅いので、PDFで恐縮ですが↓

(シルバーパスについてはP12~)

そもそもこのシルバーパス事業、

広域自治体で実施しているのは全国で唯一東京都だけです。

その目的は

「高齢者の社会参加を助長し、高齢者の福祉の向上を図ること」

だそうですが、それならば東京都の右から左まで使える必要はありません。

高齢者の適正な行動範囲、基礎自治体くらいの広さに絞るべきでしょう。

従って、広域自治体がシルバーパスを発行する明確な意義は見出せません。

「そうはいっても、(東京23区は特に)自治体をまたいで活動する人がいる」

という指摘があります。

そうした実態を計るためにも、また使用頻度によって適正な運用をするためにも、

シルバーパスのIC化を段階的に進めて調査することを提案しましたが、

「現在の磁気方式は、高齢者に広く定着している(=ICカードなんて使えない)」

「ICカードの導入には、新たなシステム開発などに経費がかかる」

と、後ろ向きな回答でした。

もちろん、それぞれに一理はあります。

しかし高齢者全員とは行かなくても、ICカードを試験的に使ってもらって、

その使用頻度・行動範囲などのデータの蓄積は進めていくべきです。

なにせ、今のシルバーパスは

「だいたい月に10回くらい乗るだろう」

というどんぶり勘定で算定されており(※上記計算式より)、

そのかける枚数分が東京都から東京バス協会に支払われているのです。

何も、いきなりシルバーパスをやめろと乱暴なことを言うつもりはありません。

少しでも適正な形に変え、また資産を十分に持っている高齢者の方には、

徐々に負担をお願いできるような道を模索するべきなのです。

最近、高齢者の方が多い集まりで話をするとき、

「シルバーパス、70歳になると安価でもらえて、お得ですよね?

でもこれを一枚申請すると、東京都には20,510円の財政負担がかかります。

これが積もり積もって、子育てや介護に回す財源が少なくなってしまうんです」

という説明をすることにしています。

そう伝えると、

「安くもらえるから、ラッキーくらいにしか思っていなかった」

「そんな負担になるのであれば、私は生活に困ってないし、申請をやめようかしら」

「限られたお金だろうから、必要なところに回してほしい」

そんなことを言ってくださる高齢者の方もいます。

本当に発行を遠慮してくれるかはわかりませんが、申請式ですから、

シルバーパスに対する正しい理解を広めていくことは重要です。

本定例会で、待機児童対策のために急きょ組まれた「大型補正予算」が約37億円

これと比べても、年間160億円というシルバーパス事業の大きさがよくわかります。

討論でも述べさせていただきましたが、

「貧しい若者から、富める高齢者へ」

の所得再配分を是正するために、この制度は見直しが不可欠です。

今後も調査・研究を進め、しかるべき政策提言を行って参ります。

それでは、また明日。

■以下、討論の該当部分を掲載■

次に、厚生委員会に付託されました請願26第7号、

シルバーパスの改善に関する請願について申し上げます。

現在、東京都が発行しているシルバーパスの発行枚数は90万枚以上に及び、

それにかかるコストは平成24年度実績で約160億円となっています。今回、子育て支援の

拡充のために組まれた補正予算が約32億円であることと比較すれば、その大きさがよくわかります。

シルバーパスの意義のすべてを否定するものではありませんが、

そもそも広域自治体でシルバーパスを発行しているのは全国の都道府県で

東京都ただ一つであり、その合理的な理由については明らかではありません。

加えて、所得に応じて一定の負担をお願いする仕組みではあるものの、

財産などのストックを条件に加味しないことから、9割近くの方がその対象外となっています。

この請願の後半部分、多摩モノレールへのシルバーパス適用については、多摩地区と区部との

格差解消の観点から趣旨採択と致しましたが、シルバーパス政策は「貧しい若者から、富める高齢者へ」

の所得再配分の一因ともなっており、制度の見直しが不可避であることを、申し述べておくものであります。

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