できない言い訳とやれる理由は、時に表裏一体。東京都は「新生児里親委託」に踏み出すか?

私が熱心に取り上げております児童養護は、勿論今回のメインテーマの一つ。今回の質問の急所は、「東京都も、新生児の里親委託を始めるべきだ!」というもの。

議会もいよいよ大詰めです。

なんと私、週明けから25日の予算特別委員会終了まで

6回も質問・討論で登壇予定がありまして、文字通りに死んでます...。

闘ってる本がマニアックすぎる。

さて、白熱の答弁調整が佳境に入っておりまして、

私が熱心に取り上げております児童養護は、勿論今回のメインテーマの一つ。

社会的養護・児童養護・里親政策に関する過去記事はこちらから。

今回の質問の急所は、

「東京都も、新生児の里親委託を始めるべきだ!」

というもの。

日本では里親委託がまったく進まず、多くの赤ちゃんや子どもたちが

施設に送られてしまうことは、これまで過去記事の中で述べてきた通りです。

そして東京都を始めとする多くの都道府県では、

要保護となった生まれたばかりの赤ちゃん、新生児については

「障がいや病気の有無などを正確に見極めるため」

「最適な里親とのマッチングを慎重に行うため」

などの理由で、もっとも愛着関係が形成される新生児の時期の大半を

乳児院のベッドの上で過ごさせています。我が国では、これが「当たり前」でした。

上記理由の聞こえはいいのですが...

要は障がいや病気を持った児童を委託したら、里親からクレームがくるかもしれない。

里親側も、なるべく「希望にそった(丈夫で健やかな)」児童を手元に引き取りたい...

という、「大人側の理屈」がその多くを占めているのが実状です。

確かに、健康状態や様々な事情によって施設がふさわしい例も皆無ではありませんが、

「大人側の理屈」で、大切な乳児の時間を奪うことが許されるのでしょうか?

最新の研究では、成長や愛着関係の形成には、生後6ヶ月がもっとも重要だとされています。

そもそも、一定期間の観察で障がいや病気が見極められる保証はどこにもありません。

東京都では新生児委託(0歳0ヶ月)はこれまで0件。0歳時までその幅を広げても、

ここ3年間でわずか4件の里親委託しかありません。もっとも重要な6ヶ月どころか、

それ以上の長い期間を乳児院で過ごさせているのです。

資料要求の数々からはこの経過観察期間に合理的な根拠は見られず、

前例踏襲や人員不足をその理由としたものだと推察されます。

こうした日本の児童養護の現状に異を唱えて立ち上がったのが、愛知県です。

愛知県では、強い信念を持つ伝説的な児童養護施設職員が音頭を取り、

「愛知方式」と呼ばれる赤ちゃん養子縁組を初めて導入・実施しました。

一度きりの暴力による望まぬ妊娠や、想像を超える経済的な困窮...

様々な事情で、生まれたその瞬間から親元に居られない赤ちゃんが存在します。

愛知県では、こうした新生児たちを

「病院で生まれたら即、里親の元に措置する」

という仕組みを作り上げたのです。

この里親とは、特別養子縁組を前提とした「養子縁組里親」と呼ばれるものです。

里親はその子の名付け親にもなり、生まれた瞬間からまさに擬似的な親子関係を形成します。

こうした生まれた愛着関係は強固で、不調(里親から施設に戻されること)となったケースは、

なんとゼロ件であると言われています。

子どもが親を選べないように、親だって子どもは選べない。

児童養護は子どもが欲しい里親ではなく、子どもたち自身のためのもの。

ゆえに障がいや病気、性別などの有無や差異は一切関係なく受け止める。

そんな信念と哲学に基づいたこの「赤ちゃん縁組」での

里親委託・特別養子縁組を希望する方々には、

「子供の性別は問わない」

「病気、障害の有無を問わない」

「養子縁組の成立前に生みの親が引き取りたいと申し出たら、つらくてもお返しする」

など、非常に厳しい誓約書にサインをすることになります。

この条件を前に、里親希望者の多くは残念ながら脱落するそうです。

それでも、毎年多くの赤ちゃんと子どもが欲しい妙齢の夫婦たちが、

この方式によって里親委託、そして養子縁組へと導かれていっています。

こうした赤ちゃん縁組・愛知方式の有用性はついに厚生労働省も認め、

平成23年から「里親委託ガイドライン」の中で正式に推奨されています。

しかしながら東京都や他の多くの自治体も、導入には二の足を踏んでいます。

色々なお考えはあるのでしょうが、行政側のマインドがよく現れる象徴的なやり取りが

今回の質問・答弁調整の中にありました。

(愛知方式を東京都も導入するべきだ!という質問原稿への答弁調整中)

音=わたし、東=東京都の職員さん

東「でもね先生、愛知方式は非常に条件が厳しいんですよ。

9割近くの里親さんは、その条件ではサインをしないと聞いています」

音「じゃあ裏を返せば、1割の里親さんはどんな条件でも子どもを受け入れるということですよね?

里親登録をしているにも関わらず、未委託の『休眠里親』は東京都で200人弱います。

つまり、単純計算なら20名前後は愛知方式の条件を承諾する可能性があります」

音「毎年、乳児院に措置されてしまう新生児は50~80人。

東京都が愛知方式の導入に踏み切れば、約3割の赤ちゃんに家庭が与えられるかもしれません。

そのようには考えられないんですか?」

東「...」

※参考資料

ビジネスの世界でもよく、

「できない言い訳より、やれる理由(方法)を考えろ!」

と言われます。

できない言い訳とやれる理由は、時に表裏一体です。

東京都の担当職員さんにやる気がないわけでは決してなく、

むしろ非常に熱心に取組んでいらっしゃる方だと思うのですが、

こうした保守的というか、どうしても堅実な考え方が身についてしまっているのかもしれません。

「9割無理なら、そりゃあ無理だわ...」と感じるか、

「1割も可能性があるのか!それはやってみるべきだ!」と捉えるか。

行政に限らず、何事にもここのマインドに彼我の差があるように思います。

愛知県でこうした硬直状態を打ち破ったのは、

愛知県公務員の中の「三悪人」と言われた伝説の職員だったそうです。

彼の著作は、この分野に興味がある方には全員に読んでいただきたい傑作です。

さて、この提案への答弁がかえってくるのは、16日の予算特別委員会。

ずばり舛添都知事に質問する予定ですので、どんな答えが返ってくるのか、

私自身も期待を込めて待ちたいと思います。

ネット中継もあります。

私の出番は16日(月)19:50頃~です。

お時間のある方、ぜひご覧いただけますと幸いです。

20時近いなんて、なんてサラリーマンにも優しい時間...!

さて、決起大会の準備と質問原稿に戻ります。

それでは、また明日。

(2015年3月15日「おときた駿公式ブログ」より転載)

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