サイクロンPAM、津波のような被害

バヌアツに大きな被害をもたらしたサイクロンPAM。最大瞬間風速は80m/s、高潮による高波の高さは14mに達したとされている。3月11日〜12日にかけて、この強風と高波がツバルに到達した。

バイツプ環礁に押し寄せた高潮による高波

バヌアツに大きな被害をもたらしたサイクロンPAM。最大瞬間風速は80m/s、高潮による高波の高さは14mに達したとされている。3月11日〜12日にかけて、この強風と高波がツバルに到達した。

珊瑚礁だけでできた平均海抜2mに満たない海抜の低い9つの島で構成されるツバルは、今までも度々サイクロンによる被害を受けてきた。1972年10月に発生したハリケーンBEBEはツバルの首都フナフチ環礁を直撃し、島内の90%の建物が倒壊、5名の死亡が確認されている。

被害の記録があるのはフナフチ環礁だけではなく、他の離島も高潮の被害に直面してきた。特にヌイ環礁では数回の歴史的な被害が残っている。直近では1992年1月のサイクロンBETSYが島民の記憶に新しい。その当時を知っている長老は、西から押し寄せてきた高波が、島の上を東の方角に通り抜けていき、その海水により島はひざ下ほどの高さで冠水、海水が引いていくまでに3・4日かかったと話す。海水の塩分は主食のタロ芋、ブレッドフルーツ、ココナツ、バナナなどを枯らし、雨水が溜まっている地下水(ウオーターレンズ)にも混入し、しばらく洗濯に使う水もなかったという。

今回のPAMの被害は首都のフナフチ環礁以外のすべての離島に及んだ、各離島にある小型のデーゼル発電所は冠水し発電不能となっていたが、いくつかの離島の人々は、電話局の非常用のバッテリーを駆使してインターネット接続を確立し被害の報告を首都に送った。ハリケーンが通過した13日朝にツバル政府は国家非常事態宣言を発令し近隣各国に緊急支援要請を行った。

翌日14日からツバル政府は離島の被害状況の確認を急いだが、変わらぬ強風に阻まれ、調査体制には大きな遅れが生じていた。しかし、各離島の派出所に配備されている衛星携帯電話などによって、離島の被害状況が徐々にあきらかになってきた。

翌週、ツバル政府の災害対策官のスメオ・シル氏のRadio New Zealandのインタビューによると、今回もヌイ環礁が大きな被害を受けている事が報告されている。島民の半数が家を失い避難生活を強いられている他、海水の塩害被害によって、主食のタロ芋、バナナ、が全滅、豚などの家畜にも大きな影響が出て、食べるものがない状況に陥っている。また、ガソリンなどの燃料も枯渇しており、漁に出ることもままならない状態にあると、事態の深刻さを強調した。

ヌイ環礁の居住地がある部分の被害の概要(速報)

NUI環礁在住のアマツア・アラ・ロレシ氏がFacebook経由で発信した写真を見ると、今回の被害がいかに深刻であるかが分かる。それは津波の被害と重なる。

南太平洋大学のパトリック・ナン教授が2009年のCOP15の直後に朝日新聞のインタビューに答えて「10〜15年後には、キリバスやツバルなどサンゴ礁の島国では国全体が居住に向かなくなるだろう。」と述べている。その理由として海面上昇もあるが、気候変動によるハリケーンやサイクロンなどの影響も上げている。今回のPAMがもたらした強風や高潮の被害が度重なれば、島が沈んでしまう前に、島を捨てることを選択する必要もでてくるということだ。

気候変動の抑止に対して、私たちは何もできないまま5年間も無駄にしてしまっている。ナン教授の予想では、南太平洋の島国に住む人々に残された時間はあと10年も無い。そして、私たち日本人に対して残された時間はどれほどなのだろうか?

下記の写真はロレシ氏の撮影した写真の隣に、2013年2月に筆者が撮影した同じ場所の写真を並べてある。比較しながら見て欲しい。

島の西側にある集会場は押し寄せた波と強風によって、屋根の一部が壊され、建物の中は波に運ばれた瓦礫で一杯になっており、避難場には使用できない状況になっている。人力のみで瓦礫を撤去し、屋根を直すのには相当な時間が必要である。

島の東側、ラグーンに面して設置されている百葉箱の足元も冠水している。

島の中央部にある教会の周辺には、強烈な流れとなった海水の痕跡が残されている。

住宅への被害も過大、床上浸水や住宅内への瓦礫の流入、一部、壁や屋根が壊された家もある。家の脇に転がっている緑色の円筒形は、雨水を貯めるためのタンク。飲水の確保が最も重要となっている。

主食のタロ芋畑は海水で一杯になってしまっている。タロ芋は塩水に弱く、このような状況になると、すぐに腐って溶けてしまう。

島の中央部まで流されたアルミニウム製のボート

強風で吹き飛ばされた倉庫

海沿いの住居跡、波に流されて基礎のみが残っている

波によって住居内部に流れ込んできた数台のバイク

高潮は女性のひざ上にまで到達している。子供が抱えているのは、流されずに残っていた子豚。豚は泳げないのため大多数が死んでしまったと考えられる

強風と高波によって破壊された住居。約半数の家族が住居を失い、避難生活を余儀なくされている。

このような被害に対して、NPO法人ツバルオーバービューでは、災害支援金を募っています。下記リンクから、少額でも構いませんので、沢山のみなさまのご支援をお待ちしています。

何卒よろしくお願いいたします。

注目記事