妄想の理想的読者ではなくて、あなたの顔を思い浮かべながら記事を書いています

「この記事待ってた!」と思ってもらいたいのです。

こんにちは、Six Apart ブログ編集長のことぶきです。

2月21日に、Faber Company 月岡さんが主催する「コンテンツ勉強会」とのコラボ企画として、初めて大阪でオウンドメディア勉強会を開催しました。会場は、株式会社ユニクエスト・オンラインのおしゃれなラウンジ。当日は、これからオウンドメディア立ち上げる予定の方にも多くご参加いただけたので、「オウンドメディアの対象読者と彼らに与える価値」について手を動かしながら考えるワークを実施しました。というわけで、今回のイベントレポート記事は、勉強会参加者にいただいた質問に回答する形にしてみます。

Six Apart

「誰」のためのメディアかを考えよう

オウンドメディアを作るにあたって最初に考えたいのは、そのコンテンツの受け手が誰で、その人に何を与えたいか、ということ。それを考えるために、こんなワークシートを用意しました。

Six Apart

これは、以前このSix Apart ブログで公開したオウンドメディアの目的・対象・価値を俯瞰するためのフレームワーク「オウンドメディア・キャンバス」をベースに「対象読者」・「読者に与える価値」の2つに絞ったものです。

これらを考えていく際のひとつのヒントとして、ことぶきからお伝えしたのが「対象読者のところは、できれば、誰か知っている人の顔を思い浮かべてみてください」ということでした。

Six Apart

あの人の顔を思い浮かべながら記事を書く意味

ワークシートを前に手を動かしている参加者から「なぜ、具体的な誰かを想定すべきなのでしょう?」という質問をいただきました。

勉強会の場では、質問くださった方にその意図や背景などを問いかけながら、その人にとって参考になりそうな事例を交えつつ、私の考えを共有し対話しましたが、この記事の作り方も全く同じです。あのとき質問いただいた方の顔を思い浮かべながら、そのあと直接チャットで会話した内容も踏まえつつ、この記事が質問のお返事になるようにと思いながら書いています。

毎日大量の記事が更新されているいま、自分に関係ないと思われたらスルーされてしまいます。多くの人に自分に関係あると思ってもらうためにも、少なくとも「あの人」、ここでは仮に田中さんとしましょう。田中さんには「この記事待ってた!」と思ってもらいたいのです。

田中さんのために書いた記事を、どう届ける?

田中さんの質問に答えるために、メールを書くような気持ちでひととおり書きたいことを書く。情報が正しいか、または偏っていないかを確認する。そして、田中さんの同僚や近しい人が読んでもわかる程度に、必要な情報を補足して全体を調整する。編集チームからのフィードバックを受ける。記事が完成する。公開ボタンを押す。

さて、その記事、どうやったら田中さんは読んでくれるのでしょうか。

ここでもういちど、田中さんの顔を思い浮かべてください。彼/彼女はどんなルートで記事に出会っているでしょう。

Twitter や Facebook をいつ見ているのかな、あのグループにシェアされる記事にはよくいいねしているようだ、あのインフルエンサー関連ならば絶対読んでいるはず、そういえばあのニュースアプリをヘビーユースしていたような。田中さんの会社の社内チャットに、誰かが「この記事参考までに」ってシェアしてくれたら、絶対読んでくれるだろうな。

こうやって考えていくだけで、どんなルートならば田中さんに届くか、そのためには、何をしたら良いかが思い浮かぶのではないでしょうか。

田中さんに連絡できるならば、記事を直接メールで送っても良いでしょう。公開前に記事を送って「この記事、こないだのご質問の答えになっている?」と聞いて、記事作りに活かすのもアリです。対象読者と直接対話し深く知ることは、今後の記事作りに活かせます。

妄想の読者ならばどうだった?

以前開催したカスタマージャーニーマップをテーマにした勉強会でも、最初にできるだけリアルな対象読者像(ペルソナ)を作ろうという話がありました。

なぜ、リアルな対象読者像を作る必要があるのでしょう。それは「自社にとって都合の良い行動」をしてくれる妄想の理想的読者を作ってしまわないためなのです。

例えばひとつ、妄想の理想的読者を考えてみましょう。たとえば、自社のオウンドメディアに記事を公開したとき、妄想の理想的読者の行動は「公式SNSの記事投稿告知にすぐに気づいて、記事を読みに来てくれて、最後までじっくり読んでくれた上に良いコメント付きで記事をシェアしてくれて、さらにはいくつかリンクをクリックして回遊し、最終的には何らかのコンバージョンをしてくれるはず」といったもの。残念だけれど、これって都合が良すぎますね。この都合の良いルートでの最適化ばかり考えてしまうと、それ以外の視野を狭めてしまうことになります。

記事公開後の結果振り返りについても、アクセス解析から得られる数字や行動パターンといったデータを参考に最適化していくことも大事です。それに加えて、誰か一人を深掘りして、行動や思考の遷移を辿っていくことで見えてくる新しい発見は多いはずです。

実際に記事を読んで行動を起こしてくださるのは、それぞれ異なる事情と課題と行動習慣を持つ、どこかにいる実在の誰かです。現実味ある対象読者を想定したメディア運営のためにも、実際にいる人の顔を思い浮かべて膨らませていく、または直接聞いてみるのは、やりやすい方法のひとつではないでしょうか。

「あの人のために」は、たくさんいていい

これまでのようなことをお話ししたあと、大阪での勉強会で聞かれたのがこんな質問でした。

「対象読者として想定する人は、一人だけに絞るべきでしょうか?」

多くのメディアでは、読んでもらいたい読者層はいくつかのクラスタにわかれるでしょう。そのクラスタ毎に、誰かの顔が思い浮かぶと良いと思います。ただし、単体の記事は想定する読者像を一人に絞った方が書きやすいと思います。

3つのまとめ

この記事の要点を、3つのポイントにまとめました。

  1. 具体的な誰かの顔を思い浮かべて記事を作ることは、(実際には存在しない)都合の良い妄想の理想的読者を作らないためにも大事。
  2. その人と直接話し、状況や課題をよく知ろう。
  3. その人が役立つ記事を作り何らかの行動を促すために記事を作り、きっちり届けよう。

さまざまな記事作りの方法論があると思います。ですが、個人的な経験では、自分が伝えたいことを伝える記事ではなく、相手の顔を思い浮かべて書いた記事の方が書きやすいし、広まることも多かったです。

まとめを図解してみました。

Six Apart

この記事も、質問をしてくださった方の顔を思い浮かべながら書きました。この記事が、彼女の質問への答えになっていればいいなと思っています。さらには、彼女以外の方にもお役に立てば、なおうれしいです。

というわけで、大阪開催のオウンドメディア勉強会へのご参加、ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました!

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