ネパール地震 私が現地で見た「本当の」顔を伝えたい

2015年4月に起きたネパール大地震。被災地支援にあたった写真家は、苦境の中でも尊厳を失わない人々の表情をとらえた。

あなたは希望以外、持っている全てのものを失うことが想像できるだろうか? 完全な孤独の中で、それでも愛する能力は失わないでいることを。

私自身、そんなシナリオはひとつも想像することができなかった。2015年の4月に起きたあの恐ろしい地震の後に、ネパールへ旅するまでは。この旅で、私以上のことを経験してきた多くの人々に出会った。何年間も絶対的な貧困の中で暮らし、地震で家や命など全てを失った人々に出会った。親を失った子供たち。息子や娘を失った両親。兄弟や姉妹を失った人々。人生に生きる意味を与えてくれていた全てのものを、彼らは失ったのだ。

これらの出会いは、私に多くの学びを与えてくれた。本当の苦しみとはどんなものか、本当の喪失とは実際はどういう意味なのか、前よりもずっと理解が深まった。今までより広い視点で、毎日の生活を見つめるようになった。

そしてそれは、本当の希望や、本当の幸福の意味を理解するということでもあった。このような絶望的な状況に置かれた人間は、とても不幸に違いないと、誰もが思うだろう。しかし、私が写真に収めた人はみな友好的で、希望を持ち、前向きだった。私が、恵まれた生活の中で遭遇したことのないようなものを、彼らは見せてくれた。

彼らが語ってくれる話や、彼らの希望に溢れた表情に感動した私は、「フェイス・オブ・ネパール」というプロジェクトで人生や希望、愛への新たな考え方を示そうと考えた。

叡智

世界があなたに課した苦痛が垣間見える。しかし、瞳の奥には、私への愛や、人生への愛といったものが隠れている。

恐れ

シンドゥーパルチョークであなたに出会った。ここは地震の被害が最も大きかった地域だ。ここに来る途中、地震で完全になぎ倒された村々を、私は車で通った。あなたの家族は、他の大勢の人々と同じように、テントで暮らしている。

誇り

私は食料を届けにあなたの村に到着した。子供や大人が私の方へ押し寄せ、私の手から袋を引っ張って取ろうとする。でもあなたはじっとしている、黙ってただ一心に私を見つめる。

孤独

あなたは山地からここへ来て、今はほんの数本の細い枝に支えられた防水シートの下で暮らしている。あなたは一人っきり。何もかも、全ての人を失ってしまった。

幸福

あなたにあまり多くのものは持って来られなかった。4冊のノートと2本のペン。それで何になるというのか、と私は自問する。しかし、あなたの目は喜びで輝いている。あなたは幸せそうに、感謝するように私を見る。

感謝

私はあなたに目を向ける以上の事はできなかった。それなのに、あなたはお返しに、人生について多くのことを私に教えてくれた。

尊厳

私はあなたを見た。あなたはゆっくりと顔を上げ、私を見た。あなたは打ちのめされているように見えた。なにしろすべてを失ったのだから。それがあなたの目が語るただひとつの物語だ。

しかし、それは単に何かを失ったという物語ではない。あなたはあなたの世界を失った、それは事実だが、優美さや威厳、誇りは失ってはいない。

フェイス・オブ・ネパールについての詳細はこちら

この記事は最初にハフポストドイツ版に掲載され、その後ハフポストUS版に翻訳・掲載されたものを翻訳しました。

▼画像クリックで開きます▼

ネパール「第3の性」で生きる

【関連記事】

注目記事