1月25日夜、選挙の最終結果は発表された。アレクシス・ツィプラス氏は、勝利演説が予定されているプロピュライアへと向かった。少し震える手で自分の前にある青色のフォルダーを開き、この時のために準備したスピーチを取り出した。彼はスピーチの言葉が全て詳細に検証されることを承知していた。そのため、その国民を激励する内容は、一言一言が慎重に選ばれていた。彼はスピーチを終え、その場から数歩離れた。喜ぶ聴衆は踊り出した。突然ツィプラス氏は向きを変え、こう叫んだ。「国民には、これを祝って踊る権利がある。彼らはそうする権利を5年間も、我々から奪ったのだから」。
この5年間、ギリシャの人々は誰を支持しようと誰に投票しようと、最も良くて不確実な状況下での不安で無感覚な生活、最も悪い時は無一文で安定感も将来への期待ももてない生活を送ってきた。ある友人が指摘したように、病院の一室に閉じ込められ、寝たきり患者の手を握りながら生きていくことを余儀なくされたかのような感覚である。
財政破綻に陥る寸前にあわただしく署名された最初のメモランダム、患者を生きながらえさせる薬を再投与するためトロイカ体制の意図に左右されるようになった生活、私たちはそういったものを目にしてきた。誇り高い勤勉な国民である私たちは、厳しい緊縮政策の導入で不意に生活が変わるのを経験した。
新しい首相は、そういったことすべてに挑むことを約束している。あるいは、国内的にも国外的にも変えようと努力することを。国内的には、国民には彼の味方が多いようで、彼には類まれな機会が与えられている。ハフポスト・ギリシャ版による出口調査によると、ギリシャ人の55%が、政治的・経済的なレベルでの交渉により適しているとし、急進左派連合(Syriza)が率いる政府を中核に据えることを支持している。野党第一党となった新民主主義(New Democracy)が再編成を行い組織を立て直すまでには時間がかかるため、新首相は、政治的な機会を手にしたことになる。
経済的な制約はまだ重くのしかかる。新政府の財政チームは、新政府が約束している新たな交渉のための準備期間が必要となるため、緊急支援策の延長を要求しなくてはならないだろう。しかし海外の資金提供国がどのような反応を示すかはまだ定かではない。ユーログループ代表者らは、市場支配力間の過酷な戦いに言及する。彼らは経済危機はあまりにも大きく、次期首相を「丸飲み」にするだろうと予測している。
ヨーロッパ自体が、あるいはヨーロッパ全体が、変化を望んでいるかどうかは現時点ではまだわからない。過去数年間で、ヨーロッパの経済基盤の脆弱性はかなり明らかになった。明らかでないのは、新首相がプロピュライアスクエアでのスピーチで述べたように、「ヨーロッパで変化を遂げる一地域を、ヨーロッパの残りの人々が受け入れる」かどうかである。ギリシャの歴史は、新たな政治勢力や見解は、国が危機を乗り越えた時に浮上することが証明してきた。現在私たちがどの時点に立っているのかまだわからないが、確実なのは、今は転換期にあるということだ。だからもしかすると、アレクシス・ツィプラス氏のスピーチに登場し、しかしそれほど言及されることはなかったこの文句を、とりあえずのところ私たちは記憶に刻んでおくべきなのかもしれない
「ギリシャは時間と空間を求めている」
この記事はハフポストギリシャ版に掲載されたものの英訳を翻訳しました。