こもたろが療育園を卒園する半年前に関西へ引っ越しをされたN先生。N先生はこもたろが療育園に入ってからの約4年間、ずっと彼の成長を見守ってくださった、いわば恩師。
夏休みの帰省で兵庫県へ行ったので、そのN先生と連絡を取り、会ってきました。N先生はこもたろが楽しめるところを提案してくださり、一緒に過ごし、お別れの前にファミレスでお食事をしながら、ゆっくり話をしました。
N先生が「こもたろくん、だいぶ成長したね...」とこもたろを優しい瞳で見つめながら、噛みしめるように言いました。先にも書きましたが、N先生は療育園入園当時からのこもたろを知っています。あの頃の壮絶だった彼を...知っているのです。
私「そうですね。こういうお店に入っても、大人しく待っていられるようになって。誰にも(この子に障がいがあると)気付かれずにお店を後にすることもあるんですよ」
別に普段、隠そうといるわけではないのですが今までがもう大変だったので、ついこんな言葉が出たのだと思います。
ちょっと前の我が家の外食と言えば、ファーストフード店でした。こもたろが待てない子だったので...料理がすぐに出てくるファーストフード店しか入れませんでした。そして彼が少し成長して、ファミレスに挑戦して。それでもその当時は"場をもたせるオモチャ"を持参していきました。小さな紙と色鉛筆、タイヤ回しのための車のオモチャ、蓋の開け閉めができるもの。
そうやって食事が運ばれてくるまでの時間を稼ぐ。食事が運ばれてきたら私はこもたろに食事を食べさせます。こもたろは食事が終わると、今度はその場に留まることに恐怖を覚え泣きだすので、夫がお姉ちゃんを引き連れて、足早にこもたろを車内まで抱えて行きました。私はひとりテーブルに残り、既に冷えた料理を黙々と食べる。そしてお会計を済ませて、車に向かう。外食する時は必ず夫のサポートが必要でした。すぐに周囲には「あの子...」と何かしら感じとられていました。
N先生とこんな話をしながら、当時を思い出していました。
N先生「でもこういう経験があったからこそ、今のたろくんがいるんだよね」
N先生「私ね、こもたろくんにいつか、是非やってほしいことがあるんだ」
私「やってほしいこと?」
N先生「自分の気持ちを文字に起こしてほしい。こもたろくんが書いた絵に、是非、自分のことばを書いてほしい」
(こもたろは絵を描くことが大好きです)
N先生「あとね、このときはこんなことを感じていたんだ、とか、こう思っていたんだ、とか。実は私たちが正しいと思って行っている対応が間違えてるかもしれない。そういうのを教えてほしいなぁ」
N先生は「発達障がいはみんなこう」という一辺倒な考えは持たない方で、いつも個々のレベルで子どもたちを見て、個性を尊重し、それぞれの子に合わせた対応を提案してくれる先生です。
それゆえ、療育園の保護者から絶大なる信頼のある先生でした。
「正しいと思って行っている対応が間違えてるかもしれない」――こういう柔軟な考えのある先生だからこそ出てくる言葉なのだと、改めて感じ、自分の凝り固まってきた考えを一度リセットして、もっと柔軟に物事を捉えようと思い直したのでした。
~続く。
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