TPP体制は、ISD条項のみならず、これまでの国内法を意図的に乗り越えようとする空恐ろしい仕掛けが込められているのではないか。

5月30日、宇都宮でTPPについての県民集会が行われた。

アメリカのNPOパブリックシチズンの女性弁護士ワラックさんの講演を聞き、そのあとパネルディスカッション。

パネラーはワラックさん、前日本医師会会長の原中さん、谷博之参議院議員、そして私。モデレーターは福田昭夫衆議院議員。

●TPP国民集会でのワラック氏の発言の中で、もっとも強く耳に残ったことを書いておきたい。

それは、加盟国の国内法が、協定に対応して自動的に変更されるといった条項が盛り込まれている点だった。そして、それを防ごうとすると、新たな条件をのまなければならないとされている点だ。

時間が限られており、ワラック氏のこの発言の正確な中身については、質問することはできなかったが、一番気になった発言だった。

TPP体制は、ISD条項のみならず、これまでの国内法を意図的に乗り越えようとする空恐ろしい仕掛けが込められているのではないか。

どなたか、このワラック発言の中身を正確に教えてほしい。

TPP対話集会では、特にISD条項の問題点に絞って発言した。マスコミは、この条項の危険な内容をもっと伝えるべきではないか。なにしろ、最高裁判所もぶっとぶ権限を世銀の内部機関に与えてしまう怖い内容を持っているのだ。

「I」は、インベスターであり投資家のこと。「S」はステートであり、TPPの参加国のこと。

協定違反を理由に、巨大企業からの損害賠償を加盟国にぶつけることを認めている。いちばん問題なのは、だれがそれを判断するのかという点。

協定案では、判断するのは裁判所だと思っていたら、実は全くのはずれ。裁くのは司法機関ではない。世界銀行の内部機関(「紛争解決処理センター」)が裁定する。

しかも、上訴が認められていないから、不服申し立てすることが認められていない。日本の最高裁判所もアメリカの最高裁判所も、手を出せない治外法権の世界を作ることになってしまうのだ。

こんなことでよいはずがない。だから「主権侵害のTPPは反対」と言わざるを得ない。

自民党も昨年暮れの衆議院選では「主権侵害のTPPは絶対反対」と言っていたのに、全くとぼけている。国民だましの公約違反は絶対に許せない。

(この記事は、やなせ進公式ブログ6月5日の記事を再編集したものです)

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