顔採用をなくすためには、どうすれば良いのか

誰もが聞いたことのあるワードではないだろうか。

顔採用。

日本で就活をしたことがあれば、誰もが聞いたことのあるワードではないだろうか。私も学生の頃から顔採用という概念は、なんだかおかしいとモヤモヤ思っていたけど、それが現実なのだ、と思って諦めて受け入れていた。

けれど今、採用される側ではなく、採用する側になり、話を聞いていく中で再び顔採用という言葉をよく聞くようになった。堂々と採用の場で顔採用という言葉が使われており、とある企業では面接での好評価の理由が「可愛いから」とコメント欄に記入されていることもあるそうだ。こういった話を聞けば聞くほど、「顔採用は当たり前」とされる風潮に対して、おかしいんじゃないか、と思い始めた。

そもそも顔採用は、「顔という生まれつき変わらないものを基準として、就職における機会の可否を決める」という考え方だ。生まれつき変えられないもので判断することは、人種や性別で能力があるかどうか判断することと一緒で間違っていると思う。そして、もう一つおかしいと思う理由がある。それは、顔採用という言葉が使われるのは、男性よりも女性に多いということだ。

経験上、明らかに顔採用は性別における差別に繋がっていると思う。採用の担当をしたことがある人ならば、気付いている人もいるかもしれないが、女性は「かわいい」や「綺麗」など容姿のことで多く言及されるのに対して、男性は大学時代にやってきたこと、実績などで評価されることが多く、「かっこいい」「イケメン」という容姿の話は主なトピックにはなりにくい。

そして、この事実は研究結果が裏付けていた。顔採用は男性より、女性に多く起きることが明らかになっている。ウェストスコットランド大学の研究によると、男性の候補者は過去の経歴や実績で判断されるのに対して、女性の候補者は顔で判断されることが多いそうだ。

つまり、女性と男性で同じ仕事に応募しても、女性の方が顔採用されることが多く、異なる評価軸で見られていることがわかる。これは、男性と女性を不平等に扱って、平等な雇用の機会を与えられていないということではないだろうか。

そもそも、なぜ女性は可愛く、綺麗だと採用されるのか。営業を取れるから?クライアントに好かれるから?それは何を意味するのだろうか。女性は、知識や能力をつけて、容姿以外のところで戦うことは求められていないのだろうか?日本企業は女性に対して求めている項目の中で、「容姿の美しさ」の優先順位が高く、スキルやポテンシャルなどの項目の優先順位は低いのだろうか。

では、一体どうすれば良いのか。顔採用をなくすためには何ができるのか。

まず最初に、声を大にして言いたいのは、「顔採用あり」とプロフェッショナルな場で言うのをやめにしたらどうだろう、という提案だ。

採用の場で、「この子、かわいいからいいね」とか「可愛い子を取りましょう!」とコメントしたり、面接シートの評価理由に「かわいいから」とか記入したりすることを社内で禁止してはどうだろうか。そうすることで、まず顔採用は良くないという認識を企業全体で持ってもらうことから始める必要がある。

ちなみに、アメリカ、オーストラリア、フランス、カナダなどでは顔で判断することは、人種や性別で雇用の機会を差別する可能性があるとされている。そのため、差別が起きないように、履歴書に顔写真を貼り付けることを義務とすることは違法となっている。結局、面接のときに顔を見られてしまうけれど、少しでもマイノリティ(人種や性別など)に対するバイアスを減らすためのアプローチを実践していると言えるだろう。

日本では、顔採用がすぐに人種差別に結びつくわけではない。けれど、顔採用は様々な差別につながる可能性は否定できないだろう。まずは、社内で顔採用に対する考え方を見直すことが大切だ。

そして、もう一歩進んで総合職と事務職の職業別の採用の方法ではなく、各部署に対する採用をし、Job Descriptionを用いるのはどうだろうか。Job Descriptionというのは、従業員の職務内容に関する責任や権限、職務の難易度、必要な能力や資格、経験年数等の詳細を個別に定義し、書面化されたもののことである。もちろん、各部署採用制度は賛否両論あるかもしれない。しかし、顔採用をなくし、バイアスを減らすと言った意味では、非常に効果的である。

日本の企業は、新卒で入社する際、自分が就職する部署や仕事内容が決まっていないことが多くある。しかし、担当する部署や仕事内容が決まっていれば、そこで必要とされる能力やスキルは明確になるはずだ。「感じがいい」「気に入られそう」など抽象的な判断基準ではなく、具体的な採用基準が設定されるからこそ、基本的には能力を主に見ることにつながり、容姿は判断する際の小さな要素になると思うからだ。

顔採用は、「当たり前のことで、仕方がないこと」と思いがちだ。確かに、採用される側の人間であれば、この制度に則って選考を受けなければならず無力に感じるかもしれない。一方で、採用する側にいる人々は違和感を覚え、おかしいなと思ったら、声を上げるべきだと思う。そして、企業は自身の企業価値を上げるためにも、公平に人材を判断し、採用できる制度を作るべきではないだろうか。