このところ世界で債券の利回りが上昇(=価格は下落)しています。
その原因は、何でしょうか?
第一番目の説明はドイツ国債が急激な利回り上昇を見ており、アメリカの債券市場の参加者たちはそれを横目で見ながら米国債のトレーディング戦略を決めているからというものです。
ドイツ国債が売られている理由、そしてそれと米国債との関係については別のところで書いておきましたので、それを参考にしてください。
さて、米国債が売られているもうひとつの理由は、最近の原油高です。
アメリカは世界の原油の20%を消費する、最も重要なマーケットです。その米国市場はこれからサマー・ドライビング・シーズンに入るのでガソリン需要が増えると見込まれています。
去年、アメリカの原油の指標銘柄であるウエスト・テキサス・インターメディエーツ(WTI)が急落した原因は、シェールオイルの増産でした。
原油価格の下落はインフレを押し下げる効果があったので、2014年の年初から年末にかけて、各国のインフレ期待は下のグラフのように変化しました。
つまりインフレが下がった分だけ、各国の中央銀行がもう一段と踏み込んだ緩和政策を維持できる余裕をもたらしたわけです。このエネルギー価格下落のボーナスは、いまどんどん減り始めています。
下は最近のWTIの動きですが、綺麗なダブルボトムをつけています。
原油が底入れしている理由は、不採算になったシェールオイルの油井(下のグラフの青)が、どんどん休止していることによります。
これがじわじわ効いてきて、とうとう米国の原油生産高は天井を打った観があります。
原油生産が天井を打ち、供給が減り始めたので、積み上がっていた原油の在庫も、ようやくピークアウトする様相を見せています。
つまり、今後は原油が先高する可能性が高まっているのです。これは30年にも渡った債券の長期バブル相場が、ひょっとすると終わってしまうリスクを孕んでいます。
若しアメリカ国内の石油の需要と供給のバランスが取れれば、原油相場は思いのほか早い時期にまた上昇トレンドに入る可能性もあります。
そのわけは、そもそも世界の原油の需要は去年以降の原油安局面でも、決して異常なほど減っていなかったからです。(下の青のグラフ参照)
先進国の原油在庫の水準も、特にひどいダブつきは見られません。
2014年同様、ことしのアメリカ経済も第1四半期はいわゆるソフト・パッチ(軟弱な地面)にはまり込んでいます。これはカリフォルニアの港湾労働者のストライキなどの影響です。
でも今年の下半期は、再び米国経済が力強く復活すると思うので、その時は本格的に原油価格に上昇プレッシャーがかかってきます。
(2015年5月13日「Market Hack」より転載)