アメリカでは大学へ行く価値はまだまだある! なぜなら高卒に比べ生涯賃金が8千万円も増えるから

大学なんて、もう行く価値ないんじゃないの? そういう声が最近多く聞かれるようになっています。そこでサンフランシスコ連銀のメアリー・デイリー副調査部長が「大学に行く価値は、まだあるのか(Is it still worth going to college?)」と題したレポートを発表しました。

大学なんて、もう行く価値ないんじゃないの? そういう声が最近多く聞かれるようになっています。そこでサンフランシスコ連銀のメアリー・デイリー副調査部長が「大学に行く価値は、まだあるのか(Is it still worth going to college?)」と題したレポートを発表しました。

結論的には:

四年制大学の学位を取得することは平均的学生にとってまだ十分に価値のある投資である。調査データ(1)を分析すると、大卒という学歴を得ることによる生涯賃金の増加総額は、学位取得に必要な諸々のコストならびに大学へ通っている間の失われた賃金に比べてはるかに大きい。こんにちの典型的なアメリカの大学の年間コストは200万円(2)だが、40歳までにそのコストを全部取り戻せる。それ以降、定年退職するまでの生涯賃金差は8千万円にもなる。

ということだそうです。

まずメアリー・デイリーは大卒と高卒の平均給与差(プレミアム)を割り出します。ここでは過去のインフレ率(CPI-U)を考慮し、2011年のドルの価値に統一して議論を進めます。なおMBAなどの四大卒以上の学位を取得した人たちは、調査の対象から外してあります。

2011年の大卒平均プレミアムは約200万円($20,050)でした。これは高卒より61%も高い給与水準です。

大卒平均プレミアムはある程度上下しており、1970年代後半は縮まり、1980年代には拡大しました。1968年の調査開始から最新のデータまでの全期間を通じての平均は$20,300で、高卒より57%高い給与水準でした。

それと短大卒などの、四年に満たない学位の場合、プレミアムはずっと少なくなってしまいます。

なおこの方法ではすべての大卒の給与を、卒業した時代にかかわらず一緒にしてしまっています。そこで1950・60年代に卒業した人たち、1970・80年代に卒業した人たち、1990・2000年代に卒業した人たちという風にコホート(cohorts特定集団)に分けて分析すると1990・2000年代に卒業した大卒の10年後のプレミアムは268万円にもなっていることがわかりました。

一方、大学へ通うことのコストの計算にあたっては授業料と、大学に通う期間、失われた給与を合計しました。これらのコストはすぐ発生する一方、大卒プレミアムは生涯に渡って享受される恩恵であることから、タイミングに大きな差が出ます。このため将来の収入はインフレの分だけ割り引いて考える必要があります。メアリー・デイリーは1990年から2011年のトリプルA債の平均利回り、6.67%をここでは使用しています。

サンフランシスコ連銀の授業料計算式(エクセル)に自分の考える妥当な割引率などを代入すれば、ブレークイーブンの授業料コストが幾らであるかが計算できるようになっています。

高校を卒業してから20年後、つまり38歳という想定でシナリオを立てると、その時までに得た大卒プレミアムは831万ドル、6.67%の割引率でブレークイーブン授業料は212万円という計算になります。

(1)ここで使用されているのはPSID(Panel Study of Income Dynamics)と呼ばれる1968年からアメリカで始まった所得に関する調査で、1万8千の調査対象に対し、一生涯に渡って所得、貯蓄、支出、健康、婚姻、出産、子供の教育、寄付、その他人生のあらゆる面に関する継続調査を行うものです。この調査はミシガン大学が中心となって行われており、そのデータは無料でウェブ上で公開されています。3000以上のピア・リビューされた学術論文が、このデータベースを基にパブリッシュされています。

(2)ここでは計算を単純化するため、1ドル=100円を使用しました。

(2014年5月7日「Market Hack」より転載)

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