すごいニュースが飛び込んできましたね!
新国立競技場、アーチ中止を提言 建築家槙文彦氏らのグループ
2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムとなる新国立競技場(東京都新宿区)の建設計画で、建築家の槙文彦氏らのグループが30日、屋根を支える2本の巨大なアーチ構造が巨額の建設費と工期の長さの要因になっており、取りやめるべきだとする提言を発表した。アーチの間の開閉式屋根も不要とした。
2015/05/30 23:24 【共同通信】
今の新国立競技場計画が破綻していること、それはもう、あらゆる面で破綻していること、その結果そこに関わってきた文科省はじめ審査員や有識者の精神が破綻しつつあること、を指摘してきました。
間に合わない、作れない、どうしよう、、今の立場から逃げたい!と右往左往し始めている。
それに対し、大丈夫!出口はある!と真国立競技場計画というのを大慌てで検討し始めているところだったんです。
それは、先日の報知新聞で報道された950億円の提案をしている民間業者がどこか分かったからなんです。
その民間企業とは!
建築業者じゃありませんでした。
設計事務所でもありませんでした。
日本の企業でもありませんでした。
アンダーアーマーでした。
アンダーアーマー!!???
ユニフォームの?
と思われるでしょう。
彼らはユニフォームだけではないのです。スポーツマネジメント事業にも大きく乗り出しています。読売巨人軍ともコンサルタント契約をしているようなところです。そこが一部の政治家と積極的にロビー活動に入っている。
やばい!
苦し紛れにこれに飛び付く、一部の政治家や官僚も!何かとバーターでアンダーアーマーの案を自らが準備したかのように装う可能性。FIFAの事件のこともある。
やばい!やばい!やばい!
日本の、東京のオリンピック。そのメイン会場である競技場について、ここまでのグダグダを生み出した日本の建築業界。有名建築家たち。その軌道修正は絶対に日本の建築業界でおこなわなければなりません。
そうでないと、いくら安藤忠雄氏がすべての元凶だとしても、これまでそれを野放しにして、いまだに捕捉できないでいる、問いただすことができないでいる、日本の建築業界全体が無能ということになるわけです。
だから、焦っていた。
新国立競技場というスターウォーズでいえばデス・スター。あと一歩のところで墜とせそうと、ルークがデス・スターの弱点である溝の中の廃熱口にプロトン爆弾に照準を合わせたそのときに背後から、ダース・ベーダーが飛来してきたような最悪の気分
ところが!キター!
ミレニアムファルコン
ハン・ソロ船長とチューバッカ
それが、槇先生のグループによる代替案
磯崎さんじゃない、槇先生がハン・ソロだった。
と、いうわけでちょっと落ち着いて真国立競技場計画を進めていきましょう。
初代の国立競技場に学べ!です。
まず、前提条件は敷地を活かす!でした。
この初代競技場の優れている点は敷地形状を活かすだけではないんです。
敷地形状に対し建築物を最小限にとどめている点です。
上図で黒く塗られた部分しか建築しません。
後は敷地の段差を利用している。
競技場の配置レイアウトを見てみましょう。
非常にうまく収めてあります。
まず、初代の方が森が多い。
そして入り口のポジション取りがトラックセンターとあわせてあり、非常に導線計画もよい。
そして!当時よりも有利な条件がある。
西側が川じゃなくなった。
外苑西通り、キラー通りとなっているんです。
じゃあ、この建物部分は外苑西通りに平行に走ってどこからでもアプローチできるビルみたいなものです。
そのビルはこんな形状をしています。
構造断面図でわかりにくいと思いますので、周辺状況を含めるとこんな感じになります。
ねっ?シンプルでしょう?
観客席の形状に合わせて作られた細長いビルなんです。
この斜めの階段状のビルが、戦時中の学徒動員の映像に出てくる国立競技場です。
両サイドを折り曲げて時計台にしている点でも、意匠上非常に上手いのですが、初代国立競技場デザインの真骨頂は、この斜め階段上のビルの逆サイド。
外苑西通り側のファサードなんです。
じゃーん!
えっ?
競技場っていうより、なんかホテルとか大学とか東京駅とかみたいな。重厚さというか気品というか、素敵な感じ。
すごくキャラの立った近代建築だったんですよ。
これをね、復活させる。外苑西通りに面して。
なんかバブル以降建築ってとにかく新しい奇抜なものをつくる、作らなければならない、作らなければ褒められない。ほとんどの日本の建築家は、そんなドグマに脳を侵されている。
でも、みなさんも、そんな古い建築をまたつくるってあるの?って思われるでしょう。
ありまくりです。特にヨーロッパでは。
古い建物を新しく建てている。
ドイツのドレスデンなんかでは大戦でほぼ破壊された街を、皆で古い写真を持ち寄って、それ見ながら、人々の記憶もたよりに、戦後再生したんですよ、昔の姿に。
だから
国立競技場が壊されてしまった今
真のレガシーを再生する。
初代国立競技場をもって。
その再生した初代国立競技場をさらにバージョンアップする。
新国立競技場のグダグダの根本原因のひとつには、建築家の職能の評価基準があまりに自己表現に移行しすぎたことにもよります。
とにかくアートとしての自己評価しかないんじゃないかと、大学教育でも建築雑誌の誌面でも、建築業界の人間にこの30年間思わせ過ぎました。
はぐれ雲を描かれているジョージ秋山先生のマンガに登場する毒薬仁太郎という人物がいるのですが、さしずめみんな俺が俺が俺がオリがオリが、オリはダリなんだよう?病なんです。
それらを総称して私は「ドヤ建築」と名付けました。
新国立競技場問題を克服して計画をもう一度立て直すには、別のどこかの建築家が何か自分汁のアイデアを出す、そんな解決方法ではもはや誰も納得しないでしょう。
レガシーの継承はレガシーの再生
もはや、それしかないと思います。
(2015年5月31日「建築エコノミスト 森山のブログ」より転載)