新国立競技場の建設コンペをめぐる議論について (3)

と、まあザハ・ハディドという人も名前の語感から受けるような、生まれつきモビルスーツやRPGとかに登場する俗世を超えた魔道師、魔女みたいな人ではなくてキャリアのスタート時点ではちょっと英国留学をかました優等生であったわけです。

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と、まあザハ・ハディドという人も名前の語感から受けるような、

生まれつきモビルスーツやRPGとかに登場する俗世を超えた魔道師、魔女みたいな人ではなくて

キャリアのスタート時点ではちょっと英国留学をかました優等生であったわけです。

で、そのザハをはじめとする「本国では建たなかっただろうな~の建築家」に実作の機会を与えたのが、

日本だったと、その機会に大きくかかわっていたのが磯崎新という人だったというところまででした。

で、まあザハはわかったけど、新国立競技場のコンペでなんでザハなんだよ、

についてです。

そもそも、この新国立競技場のコンペ、

オリンピック誘致を目指して2012年の7月に募集要項を発表

2012年の9月中に応募登録し受付、2012年の10月に一次審査、

2012年11月に最優秀案の決定。

と通常ではあり得ないくらいのハイスピード、

じっくり考える暇などないスケジュールなんですね。

通常、わたくしなんかふつうの住宅の相談を受けた場合でも

7月に最初の面談、法的条件や敷地与件などを調査して2週間は欲しいところです。

で、なんとか案をまとめて8月の初旬に打ち合わせ、お盆休み挟んで修正して

役所の相談に出向き9月に大体の概略が決まって、構造設計の検討に2週間。

で、これでイケそうです。と実行可能な第一案が10月くらいというのが一般的です。

つまり、100㎡ほどで家族4人収容の機能も読める一般住宅でも、まともな案を作成するには、

関係役所との交渉やエンジニアリングの検討を含めると2か月は欲しいんですね。

それが、8万人収容で29万㎡、新競技場としてラグビーやサッカー、

陸上競技の大規模な国際大会が実施できる最高水準の機能に加え駅や道路からのアクセス、商業施設のゾーンなどなどを検討せよ。となると、

よほどの天才的頭脳と処理能力に加え所員100人をもってしても不可能と言わざるを得ないスケジュール感なんです。

まあ、それでやれ!と。

そして、コンペティションということで、コンペというのは設計競技という意味で、案を競うんですが、応募資格の方も相当ふるっていて、世界史的にも類をみない条件が課せられていました。

それは、

1) 高松宮殿下記念世界文化賞(建築部門)

2) プリツカー賞

3) RIBA(王立英国建築家協会)ゴールドメダル

4) AIA(アメリカ建築家協会)ゴールドメダル

5) UIA(国際建築家連合)ゴールドメダル

以上いずれかの受賞経験があること、というものです。

1) 高松宮殿下記念世界文化賞(建築部門)

3) RIBA(王立英国建築家協会)ゴールドメダル

4) AIA(アメリカ建築家協会)ゴールドメダル

5) UIA(国際建築家連合)ゴールドメダル

ここまでは、いずれも名誉称号のようななもので、

長く建築家活動をおこなっている著名な建築家に贈られる賞です。

プロ野球でいえば名球会みないなものです。

2000本安打とか200勝とか

なので、この1)、2)、3)、5)までは、受賞メンバーほぼ似通っていて

5) UIA(国際建築家連合)ゴールドメダルだけは1989年から始まり、

3年に1回しか出ないのでご存命の方は8名しかいません。

UIA(国際建築家連合)ゴールドメダル受賞者リスト

1984年 ハッサン・ファトヒー (1900-1989)

1987年 レイマ・ピエティラ (1923-1993)

1990年 チャールズ・コレア

1993年 槇文彦

1996年 ホセ・ラファエル・モネオ

1999年 リカルド・レゴレッタ

2002年 レンゾ・ピアノ

2005年 安藤忠雄

2008年 テオドロ・ゴンザレス・デ・レオン

2011年 アルヴァロ・シザ

AIA(アメリカ建築家協会)ゴールドメダル受賞者リスト

2013年 トム・メイン

2012年 スティーヴン・ホール

2011年 槇文彦

2010年 ピーター・ボーリン

2009年 グレン・マーカット

2008年 レンゾ・ピアノ

2007年 エドワード・ララビー・バーンズ

2006年 アントワン・プレドック

2005年 サンティアゴ・カラトラバ

2004年 サミュエル・モクビー

2003年

2002年 安藤忠雄

2001年 マイケル・グレイヴス

2000年 リカルド・レゴレッタ

1999年 フランク・オーウェン・ゲーリー

1998年

1997年 リチャード・マイヤー

1996年

1995年 シーザー・ペリ

1994年 ノーマン・フォスター

1993年 ケヴィン・ローチ

1992年 ベンジャミン・トンプソン

1991年 チャールズ・W・ムーア

1990年 E・フェイ・ジョーンズ

RIBA(王立英国建築家協会)ゴールドメダル受賞者リスト

2013年 ピーター・ズントー

2012年 ヘルマン・ヘルツベルガー

2011年 デイヴィッド・チッパーフィールド

2010年 イオ・ミン・ペイ

2009年 アルヴァロ・シザ

2008年 エドワード・カリナン

2007年 ヘルツォーク&ド・ムーロン

2006年 伊東豊雄

2005年 フライ・オットー

2004年 レム・コールハース

2003年 ホセ・ラファエル・モネオ

2002年 アーキグラム

2001年 ジャン・ヌーヴェル

2000年 フランク・オーウェン・ゲーリー

1999年 バルセロナ

1998年 オスカー・ニーマイヤー

1997年 安藤忠雄

1996年 ハリー・サイドラー

1995年 コーリン・ロウ

1994年 マイケル&パトリシア・ホプキンス

1993年 ジャンカルロ・デ・カルロ

1992年 ピーター・ライス

1991年 コーリン・スタンスフィールド・スミス

1990年 アルド・ファン・アイク

1989年 レンゾ・ピアノ

1988年 リチャード・マイヤー

1987年 ラルフ・アースキン

1986年 磯崎新

1985年 リチャード・ロジャース

1984年 チャールズ・コレア

1983年 ノーマン・フォスター

1982年 バートホールド・ルーベトキン

1981年 フィリップ・ドーソン

1980年 ジェームズ・スターリング

高松宮殿下記念世界文化賞(建築部門)受賞者リスト

1989年 イオ・ミン・ペイ

1990年 ジェームス・スターリング

1991年 ガエ・アウレンティ

1992年 フランク・ゲーリー

1993年 丹下健三

1994年 チャールズ・コレア

1995年 レンゾ・ピアノ

1996年 安藤忠雄

1997年 リチャード・マイヤー

1998年 アルヴァロ・シザ

1999年 槇文彦

2000年 リチャード・ロジャース

2001年 ジャン・ヌーヴェル

2002年 ノーマン・フォスター

2003年 レム・コールハース

2004年 オスカー・ニーマイヤー

2005年 谷口吉生

2006年 フライ・オットー

2007年 ジャック・ヘルツォークとピエール・ド・ムーロン

2008年 ピーター・ズントー

2009年 ザハ・ハディド

2010年 伊東豊雄

2011年 リカルド・レゴレッタ

2012年 ヘニング・ラーセン

2013年 デイヴィッド・チッパーフィールド

ということですべてに受賞経験がある人は2名しかいません。

やはり、世界の安藤忠雄さんですね。

太字は2つ以上の受賞経験者です。

意外なことに丹下健三先生が三冠取ってないんですよ。

で、2)の プリツカー賞というのがくせもので、

今では建築のノーベル賞といわれるほどの権威になっていますが

プリツカーというのは人の名前です。

これは1979年にハイアットグループの総帥ジェイ・プリツカーが私的に始めた賞です。

このプリツカー氏はキエフからアメリカに移民したウクライナ系のユダヤ人で、

今では全米屈指の大富豪に列をなしているそうですが、

1957年、昭和32年にポっと出のおっさんです。

1979年 フィリップ・ジョンソン (1906-2005)

1980年 ルイス・バラガン (1902-1988)

1981年 ジェームス・スターリング (1924-1992)

1982年 ケヴィン・ローチ

1983年 イオ・ミン・ペイ

1984年 リチャード・マイヤー

1985年 ハンス・ホライン

1986年 ゴットフリート・ベーム

1987年 丹下健三 (1913-2005)

1988年 ゴードン・バンシャフト (1909-1990) オスカー・ニーマイヤー

1989年 フランク・ゲーリー

1990年 アルド・ロッシ (1931-1997)

1991年 ロバート・ヴェンチューリ

1992年 アルヴァロ・シザ

1993年 槇文彦

1994年 クリスチャン・ド・ポルザンパルク

1995年 安藤忠雄

1996年 ホセ・ラファエル・モネオ

1997年 スヴェレ・フェーン (1924-2009)

1998年 レンゾ・ピアノ

1999年 ノーマン・フォスター

2000年 レム・コールハース

2001年 ヘルツォーク&ド・ムーロン

2002年 グレン・マーカット

2003年 ヨーン・ウツソン (1918-2008)

2004年 ザハ・ハディッド

2005年 トム・メイン

2006年 パウロ・メンデス・ダ・ロシャ

2007年 リチャード・ロジャース

2008年 ジャン・ヌーヴェル

2009年 ピーター・ズントー

2010年 妹島和世 西沢立衛 (SANAA)

2011年 エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ

2012年 王澍

2013年 伊東豊雄

すでに設計実務活動からリタイアしている方もいますから

と、いうことでこの新国立競技場のコンペに応募可能で、

現役の建築家というのは非常に限られているのです。

ただね、わたくしが思うのはなんで

プリツカー賞、

RIBA(王立英国建築家協会)ゴールドメダル、

AIA(アメリカ建築家協会)ゴールドメダル、

UIA(国際建築家連合)ゴールドメダル

なんだよ!ってことです。

日本の建築だろ?しかもオリンピック誘致なんだろ?

じゃあなんで、日本の建築学会賞受賞者が候補資格にはいってないんだよ!

しかも、言ってみりゃ引退直前の勲章みたいな賞だし、

海外の権威におもねって、、

応募可能な人なんてほとんどいねえじゃん!

これっで公募とかうそぶいているのか、、

この募集基準決めたやつ、馬っ鹿じゃねえの?

って真面目に思っているんです。

また加筆します。

(2013年10月23日「建築エコノミスト 森山のブログ」より転載)

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