真国立競技場へ

約1年前に新国立競技場コンペにも参加された建築家の伊東豊雄先生が、「国立競技場の改修案出すぞ!」のときも地鳴りがしましたが今回は晴天の霹靂晴れ渡った青空に突如雷鳴のとどろきを聞きました。

相変わらず出口不明の新国立競技場問題ですが!

なんと!本日、「号外」といってもいいような話題があったんです!

これです!

スポーツ報知一面です。

この2年間、もめにもめている。

この1年間、しこってしこってしこりまくっている。

この2か月でさっさと壊しちまった国立競技場。

その赤茶けた土も無惨な更地の写真と共に踊る文字。

新国立競技場計画を見直す可能性です。

いやあ、驚天動地とはこのことでしょう。

約1年前に新国立競技場コンペにも参加された建築家の伊東豊雄先生が、

「国立競技場の改修案出すぞ!」のときも地鳴りがしましたが

今回は晴天の霹靂

晴れ渡った青空に突如雷鳴のとどろきを聞きました。

う~ん、どうなんだろう。

そもそも、報知新聞あらためスポーツ報知からというのが不思議です。

2015年5月15日9時0分 スポーツ報知

この記事で注目すべきは第一番目まずここです。

政府内では、この計画を支持する声が広がっており今後、新計画案が採用される可能性が浮上

政府内で―――――支持する声が広がる

新計画案が――――採用の可能性

という部分。

その裏には、

コンペで選んだザハもどき新国立競技場案に―――問題があり

日建設計が取り組んでいる修正案でも――――――解決できない

ということに政府が気付いている、認めている。

ということだからです。

誰かが、政治家にも信頼されうる建築の専門家の誰かが

そのことを説得し、批判するだけでなく代替案を示したということになります。

注目すべき第二は

JSCは「約3億円の黒字」としているが、複数の政府関係者は「現行案のままでは、五輪後数年で赤字になる」と指摘

JSC――――コスト黒字としたが

政府関係者――――赤字になる

の部分です。

JSCを政府関係者が否定した。という事実です。

いやあ、これ官僚社会でいえば死刑宣告ですからね。

よくステレオタイプな権力批判、政府批判や官僚批判がありますが、彼らにとってそうした小市民からの文句というのはまったく痛くないんです。市民からの批判でクビになることはありません。

特にキャリアは

彼らの敵はむしろ内輪なんです。

常にお互いがお互いを監視し合う、足を引っ張り合う、騙し合う、そして同期の出世の芽を摘む。

そうでなければ、自分がヤられる。

基本、いわゆる優等生、秀才、頭のキレル連中です。

お互いに大した能力差はない。

その中で、成果による評価よりもむしろ、失敗による降格的人事。

上役からの、業務能力に好悪や運も含めた全人的な明文化されない評価の仕組み。

そして同期の中からは一人しか事務次官までは到達できません。

そんな人生ゲームなんです。

そのあたりを非常につぶさに分かりやすく描いて面白い作品に、

原作:田島隆先生、作画:東風孝広先生コンビによる

「激昂がんぼ」(ブチギレがんぼ)というマンガがあります。

これ、すっごい面白いんです。

主人公、下の表紙の向かって左は、アンダーグラウンドの事件屋(表に出てくるときは当然コンサルタントを名乗ります)である神崎守。

右側が地方二流国立大学卒のキャリア官僚の二宮亮です。

この二人が芸南市の港湾開発を巡って、一時は反目し合いながら共通の目的をもって共闘していくうちに互いの境遇から友情が芽生えるというお話しなのですが、その中で描かれるエグイ官僚世界の描写が非常にオススメなんです。

特に国土交通省と総務省の縄張り争いや、上司がコケたら部下まで全員が左遷出向になってしまうくだりなど、官僚の行動様式を理解するためにはうってつけの素材です。

私としましては皆さんに、新国立競技場問題を通じて建築知識に通じてほしいのですが、同時に政治システムや官僚システム、そしてそこで起こる人間ドラマにも通じて欲しいと思っています。

そうすることによって、問題に対する「思考停止」の状態、ステレオタイプ化された「効力の薄い怒り」から離脱し、

実行力のある批判や冷静で正しい現状認識に至ることができるからです。

話はJSCと政府に戻りますが、

これまでJSCの中の人は政府推進派の先兵として新国立競技場問題に身を粉にして取り組んでいたはずです。

それは、文科省からの指示は絶対命令だからです。

それが、記事をそのまま読むなら「政府関係者から否定」されてしまったわけです。トカゲのシッポ切り、もしくは戦場に置き去りです。

JSCの運営試算(デタラメ、でも指示をこなしただけのはず)をした人間は丸つぶれということです。

なかなかやらないんですよ。

官僚社会では

そういう目に見えるようなことは

知らず知らずに本人と周辺だけに分かるように切り捨てられるんですけどね。

そこが画期的な部分です。

そして、もっとも説得力のある部分

現行案の工期は約42か月となっているが、新計画案では約30か月で大幅に短縮される。

早い!

1年分早い!

なぜ速くなるのかも解説します。

そして最後に極め付け

政府関係者は「現行案からの大幅な変更となるが、問題山積みの現状を打開するには、この計画しかないと思う」と明言。

「大きな政治決断が必要になる」の部分です。

かなり、かなり、踏み込んでいる。

「間違いを正す!という政治的判断」という一番美味しいところは誰がもっていくのか!

河野太郎先生なのか、下村博文先生なのか、

それとも、まったく別の先生が登場するのか、

興味深い展開です。

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