現国立競技場はチューンナップ出来るのか(4)

「新国立競技場のもう1つの可能性」5月12日の動画です。先日のシンポジウムに関する記事がたくさん出ました。

「新国立競技場のもう1つの可能性」5月12日の動画です。

前半50分間は伊東先生、中沢先生による提案の経緯と意図について

後半50:29より私が25分ほど世界のスタジアムの状況と改修の意義を解説

1:16:00より松隈先生の外苑と国立競技場の歴史的意味を解説

1:40:00より4人で対談といった内容です。

先日のシンポジウムに関する記事がたくさん出ました。

◎『GQ JAPAN』14/05/14

新国立競技場の何が問題なのか──

中沢新一氏と伊東豊雄氏が問題提起

◎『日本テレビ』『読売テレビ』14/05/12

建築家らが国立競技場の改修案を発表

◎『朝日新聞』14/05/13

建築家の伊東豊雄さん、国立競技場の改修案発表(大西若人)

◎『日本経済新聞』14/05/12

東京五輪へ国立競技場の改修案発表

建築家・伊東豊雄さん

◎『毎日新聞』14/05/12

20年東京五輪:建築家ら、国立競技場の改修提案(永田晶子)

◎『産經新聞』14/05/12

国立競技場は建て替えでなく改修で

伊東豊雄さんが案を公表

◎『東京新聞』14/05/13

五輪 国立競技場改築 「新築の半額で」伊東氏代替案(森本智之)

◎『中日新聞』『北海道新聞』『富山新聞』『福井新聞』14/05/12

現国立競技場の改修案を発表-建築家の伊東豊雄さん

◎『日刊スポーツ』『スポーツニッポン』『スポーツ報知』14/05/12

新国立競技場はコスト抑えた改修案

◎『ギズモード・ジャパン』『夕刊アメーバニュース』14/05/13

伊東豊雄氏の代替案「国立競技場は、新しく建て替えないで維持改修しよう」

◎『日刊ゲンダイ』14/05/14

改修なら半額 建築界"ノーベル"も新国立競技場に「待った」

この新国立競技場の問題の大きさとみなさんの関心の高さがわかりますね。

この中でもとくに『GQ JAPAN』14/05/14の記事

「新国立競技場の何が問題なのか」

中沢新一氏と伊東豊雄氏が問題提起

が、今回の伊東先生の意図を丁寧に記事にされていますので、

改修提案の中身がどうのこうのの前に

ぜひみなさん、まずはこれをお読みになってみてください。

で、伊東先生の「そんなわけでワシも改修を考え始めたんだが、、」

とはこんな感じです。

こ、これは、、

Gアーマー!

もしくは

ジェットスクランダー!

Gアーマーというのはですね、1stガンダムの第23話でマチルダさん達ミデア輸送隊が命がけでもってきてくれた、ガンダムの強化パーツです。

実際には放映開始後の視聴率の低迷と玩具スポンサーの強い意向による合体メカを出せ!という要求に対し苦肉の策として登場させたらしいのですが、結果としては1stガンダム屈指の名場面、第24話での「マチルダさ~ん!!」に繋がるという印象深いものです。

富野監督やハードSF好きから見るとこのGパーツのギミックは不本意のようですが、やはりあのマチルダさんが死を賭して守り運んでくれたものですし、強気のセイラさんの不慣れな操縦シーンも見ることができるということで、俺はGアーマーあり派なんですよ。

ジェットスクランダーも凄いものです。

マジンガーZを飛行させるのための強化パーツです。

元々、マジンガーZは正義のために、世界征服を狙う悪の科学者率いる組織と戦うロボットという不滅のアニメジャンルを確立した歴史的金字塔のような作品なのですが、初期マジンガーでは陸上歩行しか前提としていなかったのです。

ところが、敵の科学者が飛行型のロボット(正確は機械獣と呼びます)を開発してしまったため、

(永井豪先生が強すぎる敵を考えてしまってマジンガーと自分をを追い込んでしまった)

マジンガーZは窮地に立たされてしまったんです。

(もちろん永井豪先生もこれをどう解決するのか、、で窮地に立ったわけです。)

ジェットスクランダーの前に仮設的な手法も試されてました。

それはアフロダイAのオッパイミサイルを大きくして、

そのジェット推進力を使うというものですが、さやかが凄く嫌がっていましたけど、

忘れられないエピソードです。

飛行型の機械獣に対するその圧倒的な不利さを解消するために光子力研究所の粋を集めて開発されたのがジェットスクランダーです。これは飛行用のパーツなのですが、このギミックの凄いところは飛行が必要な状況になるまでは研究所で待機しており、必要とされたら自動操縦と自動追尾でマジンガーを追っかけていく、そしてジャンプ力を強化したマジンガーと空中でドッキングするという凄い発明。

もう初めてこれ見た小2の僕は、興奮で寝付けなかったですね。

後の「合体」という大技の始祖にして元祖なのです。

なぜ、このようにロボアニが強化パーツを取り入れるかというと

ただ単に強くなればいい、ではキャラが違ってくるからなのです。

つまり、それまで慣れ親しんでファンにも浸透している物語のキャラクターを、ストーリーのテコ入れをだからといって、むやみに強く変化させたり、まったく異なったデザインをかぶせるとそれまでのファンが離れるだけでなく、リアリティもストーリーも崩壊して、テコ入れどころか、人気の凋落、打ち切りになるやも知れないんです。

だからといって、何も手をつけないでいると徐々に視聴率が下がるんではないか、人気もなくなるんではないか、と心配です。

だから、それまでのキャラクターを活かした状態で強くする。

それが強化パーツという方法論なのです。

で、伊東先生の改修提案というのはこの「強化パーツ型」だということです。

伊東先生の改修方針というのは、まあアイデアの前段階のスケッチ的なものなのですが、単純にモデリングされただけの抽象的な図にもかかわらずスタンドの上に小さな突起のようなものがある。これ、プロジェクトXにもなったキューポラのある街で鋳込んだ聖火台ですよ。

そういった具体的なキャラクターサイドをいじらないというのがこの案の魅力だと思います。

伊東先生はこの改修イメージがイイとか言ってるわけではなくて、今の新国立競技場の状況は非常におかしいことになっている、進行が心配だ、中途半端な結果になる恐れがあるから、今からでも改修を前提に考え直してみては?といわれているだけなんです。

そのアイデアスケッチレベルでも聖火台サイドはいじらない方が絵画館への負担が少ない、というお考えだからなんですよ。

ま、僕が何を言いたいかというと、「建築にもキャラがある」ということなんです。

保存する意義、残す文化的価値、歴史的経緯を考える、改修の経済的効果、とかいうのはちょっと勉強しなくちゃよくわからない話ですが、

建築や街のキャラを変えるな!というのは分かるでしょ?

新しくなった東京駅の丸ビル、あれは完全に新しくなったけど、マイケル・ホプキンスを起用しているから、なんとなくキャラが継続していますよね。

マジンガーZも次のシリーズグレートマジンガーでキャラの継続を果たしています。

ガンダムシリーズなんか言わでもながですよね。

同様に、キカイダーとキカイダー01もそうだしゲッターロボとゲッターロボGもそうです。

今の国立競技場はですね。

それなりにキャラが立ってるんですよ。

それは、昭和とか高度成長期とか日本の社会事情だけではなくて、

「建築としての構造美」というやつです。

最小限で最大の効果とか、物体として機能に特化したときのシンプルさ、純粋性。

日本の美術工芸の特徴でもある洗練に洗練を重ねたときに個人の恣意が消える一種の匿名性。

そういったものです。

その証拠に、この国立競技場を真っ先に評価してくれたのが、

かの、ダイナミック機能美の巨匠建築家、シドニーオペラハウスで「俺が責任持つ行け!」って言ったサーリネンであったということを先日のシンポジウムで松隈先生から教えてもらいました。

そのようなわけでして、カタチが出来たけど構造がわからん、なんていうのは建築ではないんですよ、はっきり言って。

と同時に、絵画館周辺の外苑の景観の中で、健康優良児にして骨格しっかり安産型のナイスバディ、にもかかわらず遠慮がちに慎ましやかな元大和撫子、今はスポーツのお母さんっていうのが、国立競技場のキャラなんだ。

まあ、あくまで個人的なイメージだが、

イメージに近いのはめぞん一刻の響子さんだね僕の場合は

きっと、皆それぞれの現国立競技場のキャラがあると思うのだけれど、、

「艦これ」みたいに誰か絵師さんが国立競技場を「建娘」にしてくんねえかな。

ちなみに、伊東先生がコンペ応募したときの提案は絵画館前からどう見えるか軽く検証してみました。

意外や意外、新築においても伊東案は背景になろうとしてるじゃないですか!

改修案にいたっては西側しかいじらないからこうですよ。

まったく風景は今と変らない。

で、見ときます?

審査委員長の安藤忠雄さんが「日本を元気にする」と吼え、

審査員の内藤廣さんが「ザハ様のご機嫌を損ねるな!」とみんなを叱ってる案の場合です。

なんかもう俺あんま見たくないんですけどね。

仮面ライダーV3の後のライダーが、俺の一番好きなライダーマンじゃなくて、

仮面ライダーがいつの間にか、スポーンになってた感じです。

スポーンはスポーンで良さがあるんだけど、

ライダーシリーズに入ってくんなよって感じです。

以上、建築にもキャラがあり、キャラが継続されていないのはもったいない。

改修というのはそのキャラを活かしたパワーアップなんだ!という解説でした。

(2014年5月18日「建築エコノミスト 森山のブログ」より転載)

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