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2016年03月25日 23時52分 JST | 更新 2017年03月25日 18時12分 JST

「水泳10万メートル」「全児童の湯飲み製作」ある小学校長が果たした子どもとの約束

1個の湯飲みが完成するまでに1か月かかります。形を作ったり素焼きをしたり。200個ほどひびがわれて作り直し、2月に完成しました。

631個の湯飲みの前で「夢をかなえてほしい」と子どもたちに語る角野公利校長=14日、横浜市立北方小、猪野元健撮影

横浜市立北方小学校の校長は毎年、子どもたちと様々な約束を交わしてきました。定年退職の今年度は、全児童数分の湯飲み631個を製作しました。

3月14日の朝会。体育館のステージの幕が上がると、子どもたちから「わあ」という声があがりました。陶器の湯飲み631個がずらりとならぶ、見たことがない光景です。湯飲みはぴかぴかで、一つひとつ色も形もちがいます。

角野公利(かくの・きみとし)校長(60)は去年4月の始業式で、全児童の湯飲みを作ると約束しました。業務時間外、土日、長期休みなどを使い、ほぼ毎日図工室に通いました。

1個の湯飲みが完成するまでに1か月かかります。形を作ったり素焼きをしたり。200個ほどひびがわれて作り直し、2月に完成しました。

角野校長は、朝会で二つのことを伝えたかったと語りました。「小さなことを積み重ねていくことで、大きな成果が出せるんだよ。目標に向かって一歩ずつ進んでほしい。手で作った湯飲みに同じものはなく、一つ欠けるとみんなに渡せなかった。必要のない人間はいない、全員が大切なんだ」  

湯飲みを受け取った子どもたちは、両手で大切に持っていました。篠原美結さん(3年)は「本当に約束を守る校長先生にびっくりしました。一つも同じものがないことがうれしいです」。茶木亜花莉さん(6年)は「卒業しても湯飲みを見たときに目標に向かってがんばろうと思えそうです」と話します。

朝会の日、角野校長は朝6時から体育館で湯飲みを並べた

教員から一人ずつ手渡された湯飲みを大切そうに持っていた子どもたち

図工室に持ち込んだろくろで湯飲みの形を作った(角野校長提供)

角野校長は5年前の始業式から毎年、1年間で実践することを子どもたちと約束をしてきました。「『目標を持とう』『努力をしよう』と伝えているので、一緒に取り組もうと考えました」。水泳10万メートルを泳ぐ、フルートで曲を演奏する、箱根駅伝と同じ距離を走る、といった約束をどれも一から練習して果たしました。

大学卒業後、自動車の営業マンとして働き、数年後に夢だった教員に転身。今月末で定年退職を迎えます。最後の約束に湯飲み製作を選んだのは、形に残るものにしたかったからといいます。「これだけの湯飲みを作ることは、思っていた以上に大変でしたが、人生の何かの糧になる子どもが一人でもいれば、なんでもないことです。夢をかなえてほしい」

小学生の新聞「朝日小学生新聞」3月18日付の記事に加筆し、写真を追加しました。媒体について詳しくはジュニア朝日のウェブサイト(https://asagaku.com/)へ。