軍事介入ではなく和平交渉を: 中東市民が米ロ大統領に送った書簡

9月5日から始まっているG20サミットを前に、シリアを含む中東19カ国に本部を持つ270近くの市民社会組織(CSO:NGOを始めとした、社会問題に取り組む非営利・非政府組織)が、G20議長であるロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、シリアへの軍事介入を主張するアメリカのバラク・オバマ大統領宛に共同書簡を送った(日本の安倍晋三総理大臣など、他のG20首脳にも送られている)。

9月5日から始まっているG20サミットを前に、シリアを含む中東19カ国に本部を持つ270近くの市民社会組織(CSO:NGOを始めとした、社会問題に取り組む非営利・非政府組織)が、G20議長であるロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、シリアへの軍事介入を主張するアメリカのバラク・オバマ大統領宛に共同書簡を送った(日本の安倍晋三総理大臣など、他のG20首脳にも送られている)。

「和平の機会は時間と共に失われつつあります。シリアの人々はあまりにも長い間苦しみ続けてきました。アラブの声として、私たちはシリアの兄弟・姉妹と連帯します」

「私たちは、国際社会、とりわけ米ロ両国に対し、シリアと中東地域全体の和平実現に向けて強力な指導力を発揮するよう、強く求めます」

このように訴える書簡で、アラブ系CSOは、米ロ首脳が政治的な影響力を適切に行使し、すべての紛争当事者が参加する形での、公正で持続可能な和平の実現に向けた交渉の開始を牽引するよう、求めている。そして、そのために必要なこととして、以下の3つを挙げている。

1. 即時停戦

民間人と人道支援関係者に対する暴力を止めること、民間人が人道支援にアクセスできるようにすること、民間人や民生品の移動に対する制約を取り除くことを目的に、シリア政府と反政府勢力が停戦に合意する。即時停戦は和平の前提条件であり、暴力と人々の苦しみをこれ以上悪化させないための最も効果的な道筋である。

2. ジュネーブ和平交渉の実現

ジュネーブ・プロセスは、シリア危機の政治的解決に向けた出発点。シリアの将来像と、そこに到達するための実行計画の合意を目指し、これを今後の羅針盤とする。

3. 透明で包摂的な和平プロセスの設置

シリア国内の多様なコミュニティに属する女性と男性、非軍事組織、市民社会組織などの代表が参加できる政治プロセスの基盤とする。これにより、シリアに住む全ての人がステークホルダーとなれる和平プロセスを始めることができる。

現在シリア情勢を巡る国際的な関心は、軍事介入が行われるかどうかに集まっている。筆者が所属するNGO「オックスファム」は、過去70年以上にわたって世界の紛争地で人道支援を行ってきており、現在もシリア、ヨルダン、レバノンにて、暴力を逃れてきた人々への支援を行っている。これまでの知見と現場の状況に鑑みて、オックスファムは、現段階における軍事介入は紛争解決の助けにはならず、人道危機の悪化をもたらすと警告している。

シリア危機による死亡者は、すでに10万人を超えており、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、近隣諸国に逃れた難民の数も200万に達している。支援を必要とする人の数が増える一方、オックスファムを含む人道支援団体は、資金難に直面している。国連6月に発表した過去最大の支援要請額も、現在のところ41パーセントしか集まっていない。

このような状況で国際社会がすべきことは、さらなる武器供与で紛争激化を助長することでも、懲罰的な軍事介入によって政治的解決を遠のかせることでもなく、大国間の対立を乗り越え、危機の政治的解決に向けた協調を最優先することだ。

主要国首脳が集うG20サミット。サンクトペテルブルクに世界の視線が注がれる中、世界の指導者たちが責務を果たすことができるのか、それともシリアの人々を失望させるのかが問われている。

注目記事