愛媛で創刊したスポーツ専門誌「Edge」(エッジ)から見える地方の企業力【創刊号ブログ#1】

書庫に創刊号が200冊以上...「創刊号マニア」の筆者が、勝手ながら「創刊号」の紹介ブログを始めます。
今年創刊された 愛媛のスポーツマガジン Edge(エッジ)』(愛媛新聞刊)
今年創刊された 愛媛のスポーツマガジン Edge(エッジ)』(愛媛新聞刊)
Tamasaburau

 専門性とは怖いレッテルで「BAR評論家」と名乗り始めたところ、「たまさぶろさんは、スポーツの専門家ではないですよね?」とYahoo!ニュースから、レッテルを貼られた。よもや、元CNN chife director of sportsとして、もはや融通の効かない大企業となったYahoo!の社員「スポーツの専門家ではない」などと断罪されるとは心外この上ない。

 こちらもすっかり忘れ去られてしまったが、一部上場出版社の元社員として、学生時代から「創刊号マニア」を自称して来た。残念ながら出版業がもはや「斜陽産業」となってしまった21世紀、「創刊号」について語る者もいなくなった。

 「平成」も終焉を迎えようとしている今、創刊号200冊以上はストックしている書庫を眺め、考え直した。「この子たちに陽の目を当ててやらないといかん...」。

 誰に迷惑をかけるわけでもない。そろそろブログあたりで、のんびり公開しても罰は当たるまい。

 そんなわけで、勝手ながら創刊号ブログを始めようと思い立った。

 まずは今年創刊された、学生時代の同期が編集長を務めるこちらからお披露目しよう。

「愛媛のスポーツマガジン Edge(エッジ)」は、2018年2月28日に愛媛新聞社から創刊された文字通り「愛媛のスポーツ」に特化した雑誌だ。

 スポーツ業界にも出版業界にも身を置かぬ方からすると、「なぜ愛媛?」という疑問も湧くだろう。しかし愛媛の方、四国の方からすれば釈迦に説法なテーマだが、愛媛は野球どころとしてあまりにも名高い。

「野球」という和訳を考案したのは明治27年(1894年)、鹿児島出身の中馬庚(ちゅうま・かのえ)(この方、なぜか名前の読みが定まっていない珍しい方です)。だが、なぜか通説では愛媛県松山市出身の正岡子規とされることが多いのも、その縁あってこそと思われる。

 正岡子規が「野球」という和訳の発明者とされるのは、その野球愛からだろう。幼名「正岡升(のぼる)」という本名にひっかけ自身の号を「野ボール(野球)」とし、おそらくこれが広まることで「正岡子規=野球」説が広まったと考えられる。

 また、巨人「初代監督」とされる藤本定義の活躍による影響もあるだろう。藤本は松山商、早稲田で活躍、当時の東京鉄道局野球部(現在のJR東日本にあたる)で投手として在籍し、黎明期の東京巨人軍を相手に2勝を挙げ、名を轟かせた(当時の巡業で巨人は36勝3敗。3敗のうち2つに立ちはだかったのが藤本だった)。その野球センスを見込まれ、監督に就任。7年で7度の優勝を勝ち取り、巨人の第一期黄金時代を築き上げた人物だ。

 さらにプロ野球黎明期の「ミスター・タイガース」景浦將も松山出身。コミック『あぶさん』の主人公の名は、彼にちなんだとされている。

 以降、巨人の藤田元司(投手および監督)、西本聖投手、遊撃手だった河埜和正、愛媛県人初のメジャーリーガー元ヤクルトの岩村明憲など時代を代表する野球選手を輩出し続けている。

 よって半ばスポーツ業界に身を置く私からすると「愛媛のスポーツ専門雑誌」は奇異なことでもなんでもなく、愛媛だからこそ「ありえる」雑誌だと考えている。

 発行人は土居英雄、編集人は元永知宏。これが私の同期である。

 創刊号の特集は、その雑誌の行方を占う意味でも興味深い。目次にさっと目を通しても中々、唸らせるチョイス。巻頭特集は「愛媛から世界へ」と題し、サッカー日本代表元監督、現FC今治の岡田武史オーナーにインタビュー。将来のエースと目される阪神の秋山拓巳投手、現・福島オーブスの岩村明憲監督、ジュビロ磐田の川又賢碁選手、さらには声優・水樹奈々とけっこう豪華なメンバーが出揃う。

 愛媛にはプロ野球団こそないものの、元巨人で投手だった河原純一監督が率いる愛媛マンダリンパイレーツが、日本独立リーグ野球機構・四国アイランドリーグの雄として人気を博しており、今年は後期優勝を果たしている。

 また、サッカーもJ2にFC愛媛があり、元日本代表監督・岡田武史氏が率いるFC今治も「世界」を目指している。バスケットボールもB2の愛媛オレンジバイキングスが存在。他にも県内学生スポーツの動向や結果を掲載しており、話題に事欠かない県民事情がありそうだ。

 雑誌はもちろん有料ではあるが、購読費だけで賄える商売ではない。入広(いりこう)、つまり広告収入の比重は非常に高く、現在のファッション誌が大した部数でもないにも関わらず、つぶれずに存在するのはそのためだ。

 この広告も重要な表4(つまり裏表紙)には愛媛トヨタ、表2(表紙の裏)にはレクサス松山、表3(裏表紙の裏)には三浦工業株式会社と地元企業のしっかりしたサポートが感じられる。愛媛新聞社の広告営業の力強さを思い知る出来だ。ちなみに三浦工業さんは、松山で創業された世界に展開するボイラー屋さん。地方の企業力が極めて侮れないと痛感する。

 元雑誌屋としては、けっこうワクワク感満載な新雑誌。地方活性化のためにも、こんなメディアは今後、増えて行くのかもしれない。他地方からしても、ひとつのロールモデルに違いない。

 元永編集長自身も愛媛の出身。創立118周年という由緒正しい県立大洲高校から立教大学野球部卒。東京と愛媛の二重生活が続いていると言うが、年齢に負けず、ぜひこれからもこの雑誌を切り盛りして欲しいと陰ながらエールを送りたい。

注目記事