1300億円の根拠

旧「新国立競技場」、1300億円というコストは、もっと安くすることができたはず。

自民党の行革推進本部では、稲田政調会長からの依頼を受けて、旧「新国立競技場」プランの検証をしています。

1300億円という予算がどう決まったのかも検証の対象の一つです。

2012年3月末に、新国立競技場の「基本計画を策定するための資料作成支援業務」をJSCが公募し、都市計画研究所と久米設計の2社が応札し、都市計画研究所が受注しました。

設計条件の策定と都市計画の手続きへの対応が主な業務で、4月下旬に契約が行われました。

2012年5月に、JSCの有識者会議の下に設置された施設建築WGが、安藤委員長の提案を受けて、国際的なデザインコンペを行う意向を固め、最初の契約にはなかったデザイン競技の支援が都市計画研究所との契約に追加されます。

デザインコンペが追加された理由として、元のスケジュールではデザインが決まるのがオリンピックの立候補ファイル提出後になってしまうため、インパクトのあるデザインを持ったメイン会場を立候補ファイルに載せるために、デザイン競技でデザインを決める必要があったことがあげられます。

そのため、JSCから都市計画研究所に対して、7月初旬までに新競技場の規模及び費用を出すように指示が出ました。

本来は、6か月程度の期間をかけてやる業務を2か月でやらねばならないため、同じような競技場を参考にして坪単価を出して、安全側に見積もるという対応を都市計画研究所はしました。

新国立競技場は、東西で8mのレベル差があり、それを埋めるためのデッキが必要になるので、同じようなデッキを持っている日産スタジアムを主に参考にし、必要に応じてその他のスタジアムも調査しました。

7.2万人の日産スタジアムの規模を8万人に拡大し、ロッカールームその他の施設を積み上げていくと29万平方メートルになり、その規模でも神宮の敷地には入ることを確認しました。

日産スタジアムが建設された1997年の建設コストを100とすると、建設コストは88と算出されました。1997年と比べてコストは安くなっていますが、資材や労務単価はすでに上昇し始めていました。

日産スタジアムのスタンド全体(屋根と電光掲示板等は入っていません)とフィールドの基礎については、建設コスト586億円を述べ床面積で割った坪単価34.5万円にデフレーター88%を掛けて30.3万円。それに29万平方メートルをかけて878億円。

人工地盤に関しては、日産スタジアムの人工地盤が8.5mなので、これを参考にして、98.5億円を延べ床面積で割って坪単価26.6万円にデフレーター88%を掛けて23.4万円。これに2.7万平方メートルを掛けて64億円。

さらに人工地盤上の立体公園の費用5.5億円と東京都体育館との間の道路などの道路をまたぐ人工地盤の費用が24億円で、人工地盤合計で94億円。

球技場として使用するときの機械式可動席の費用が33億円。

陸上競技のフィールド表面等の整備が8億円。

開閉式の屋根に関しては、軽量屋根を前提として大分スタジアムの24.4万円にデフレーター88%を掛けて21.4万円。面積を掛けて132億円。

開閉式の屋根が幕を前提とするようになったのはザハ案が採用されてから。

ホスピタリティは、日産スタジアムでは不十分ということだったので、ウェンブリーを参考にして13億円。

絵画館側の外構が9億円、大江戸線との直通の出入り口が10億円等を合計して、消費税5%でコンペ要項の1300億円をはじき出されました。

求められるスペックに対して1300億円というコストをはじき出した過程は、時間の制約の中では特に問題視するようなところはないように思えます。

問題は、JSCがまとめた新競技場のスペックにあります。

本来はオリンピックに必要ない8万人の収容人員が、規模を不必要に拡大させ、それがコストに直接跳ね返っています。

6万人のスタジアムにして、オリンピックに必要な追加分は仮設にすれば、面積が小さくなり、外構工事その他も縮小することができたはずです。

こうしたことを考えれば、1300億円というコストは、もっと安くすることができたはずですし、開閉式の屋根も、すでに前例のある方式で132億円の見積もりになっていました。

JSCが新国立競技場の要求項目の絞り込みができなかったことが、その後のコストの肥大化につながったことがはっきりしました。

(2015年9月5日「河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」より転載)

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