日本の就活がどんだけオワコンなのかがわかる、日本とドイツの就活事情の違い5つ

今まで積み上げてきた経験を生かし、のびのびと実力を発揮し、評価される。それは日本ではなく、ヨーロッパです。

またまたTatsumaru Timesに寄稿記事をいただきました。今回はドイツで大学生をしている、スーパー毒舌ブロガーの雨宮さんによる投稿です。ドイツの就活事情についてわかりやすく書いてもらいました。

元記事はこちらからお読みいただけます。

刮目せよ! これが「個性が死ぬ」就活だ

日本の就活で一番大切なことは、「目立たない」こと。まず、目立ってはいけない。変に注目されてはいけない。就活ではとにかく、個性を押し込めることが大切です。

就活生必須アイテム「リクルートスーツ」。それを装備して黒髪をセットオン、女子は就活メイクアップ講座に通えば、「目立たない没個性」の就活モードが完成。それで「個性をアピールしてください」なんて嘲笑ものです。日本の会社に「天才」は必要ないんです。「そこそこやれる目立たない凡人」が上司に気に入られる秘訣です。

天才が必要ない上、「異端」は即座に追放されます。一度フリーターだった? 留年した? 大学中退? 日本の就活では、「みんなが進む道」から外れたら険しい道のりが待っています。

これぞ実力主義!ドイツの就活はこうだ!

ドイツは超実力主義の世界。能力があればそれでOK。日本とは違う5つのポイントを紹介します。

1.専門化育成のシステム

就職への道は、ドイツでは主に2つあります。

①高校卒業→Ausbildung→就活

②大学生→(インターン)→就活

近年では、大学生を経て就活をする②のパターンが増加傾向にあり、①のAusbildung後の就活が減少傾向にあります。

Mehr Statistiken finden Sie bei Statista

グラフ:青=Ausbildung→就活 / 赤=大学生→(インターン)→就活

それぞれのキャリアスタイルについて簡単にまとめてみます。

①高校卒業→Ausbildung→就活

Ausbildungは専門学校に通いながら働くシステムです。企業が支援しているので、学費はかかりません。その分給料は、ほとんどの場合時給にしてバイト以下です。だいたい3年で卒業となります。そんなに長くかかる上お金ももらえないんじゃ、やる意味なくない?いえ、それでもAusbildungがないと、将来すっごく困ります。

事務仕事でも、販売員でも、Ausbildungを持っていないと就職するのが難しい上、昇進が難しくなります。いわば免許のようなもので、Ausbildungも大学卒業資格も持っていない場合は、ブルーカラーの仕事やガストロノミーくらいでしか働けません。ブルーカラーなら一生肉体労働、ガストロノミーなら一生ウエイターなど、キャリアアップは絶望的です。レストランで正社員として働く上でも、Ausbildungがあるなしではその後の展望が天と地の差です。

卒業時のカバーレター(上司からの推薦状)や修了書なども就活に大きくかかわってきます。高校入試のときに、中学校の内申も見られるのと同じような形です。企業としては、「Ausbildung終了=即戦力」なので、どれだけ使えるのかを、その書類で判断するわけです。

②大学→卒業→就活

大学→就職の場合はもっとわかりやすく、「特化」させます。理系やビジネス系の学部の場合、卒論のテーマがそのまま就活に影響することも多いです。また、大学の成績も見られます。とびっきり良い成績である必要はありませんが、コンスタントに単位を取っていること、関連分野は得意である必要があります。

また、大卒の場合Ausbildungの人たちよりも優遇されます。日本も専門学校より大卒のほうが初任給が多いですよね。ドイツでは大学の試験はかなり厳しく、卒業することに大きな価値があります。

UNICUMのこちらの記事によると、例えば、銀行員は、Ausbildung名(Ausbildung終了後の給料が1800~2100ユーロ、同分野に相応する大学学部(経済)卒業後の給料は3300ユーロ〜となっています。どの分野でも大卒が優遇されるのは間違いありません。そのため、大学に入ったけどついていけずに退学→Ausbildung、Ausbildungを終えて働き始めたけどキャリアアップがしたい→大学という道もあります。フレキシブルです。

2. 大学生でも即戦力が求められる! インターンの重要さ

BY CCO

最近のドイツの大学では、多くの学部が無給6週間フルタイムのインターンを必修にしていて、学生であっても即戦力を求められています。経営を学んでいても、経理のインターンをするのか、人事のインターンをするのかで就活は変わるわけです。

Ausbildungと同様、インターンでも修了書をもらいます。就活の時に「実務経験の有無」はとても大切です。特に学生だと実務経験がある、そしてそれが優秀だった、というのは大きなアドバンテージとなります。他の学生に差をつけられますからね。

さらにドイツのインターンは、日本のように1週間「社会見学」のような内容ではありません。日本はどちらかといえば、「その企業、職種が合っているか試してみる」という要素が強いですよね。でもドイツは、「実務経験を積む」ことが目的なので、インターン生であっても、優秀ならばどんどん仕事を任され、出来が悪ければ、コピー担当もありえます。

部署を移動するなんてありえません。採用してから配属決定なんてしてたら、会社が研修しなきゃいけないもん。時間もお金もかかります。だから、インターンをしておいてもらう。徹底的な実力主義です。また、インターンで「このままバイトして、卒業したら就職しない?」「就職先を紹介するよ」など声が掛かる可能性もあります。コネは大切です。

3. で、あなたは何が出来るの? 実力主義の採用

ドイツの就活で一番大切なのは、「仕事をこなす能力」です。日本でいえば、「協調性」とかでしょうか。そんなもの求められません。会社が欲しているのは、「自分の仕事」を早く、正確に仕上げる人。効率よく、自発的に働ける人。

採用もそれに準じた決定になります。まず、「何が出来るか」。ドイツには、宅検や簿記などの資格はありません。そこで大切なのが、Ausbildungで○○を任されました、大学で学んだ○○は得意です、というアピールです。日本でいう資格は理論武装なので、ドイツでは求められません。ですが「できます」と言って内定をもらったら、本当にそれをいきなり任されたりします。嘘をついたり見栄を張ると痛い目にあいます。

かといって完璧である必要もなく、今あるスキルと、これから得るであろうスキルのポテンシャルをかんがみて、採用決定されます。

4. 面接のノリが違う。お見合いなんですよ、就活は

日本の就活では、三次面接とかまでありますよね。集団面接で、グループワークさせられたり。就活はお見合いだなんていう人がいますけど、学生は「選別される側」である事実は変わりません。

就活っていつやるの? はい、卒業が確定してから、もしくは卒業後したくなった時にします。リクルートに特化したサイトはないので、まとまった求人情報サイトを見たり、「人事 正社員 募集」などでググったり、直接企業に問い合わせます。

れでドイツの面接ってどうなのよ? はい、説明します。まず、面接は1対1で、1回。それで終わり。いや、本当です。人事担当の人と1対1で話して、それでよければ採用。場合によっては担当部署の上司が来たりで相手が複数の場合もありますが、面接は1回きりが普通。自分の場合が特殊だと困りますのでドイツ人の友人数名に確認しましたが、やっぱり基本1回のようです。

私の場合はホテルのインターンだったんですが、人事担当+サービス担当+ホテル責任者の3人対私で、コーヒーを飲みながら和やかに面接が進みました。流れは、「自己紹介、志望理由、アピール」→「企業側の紹介、仕事内容、待遇」→「お互いの質問」→終了。こんな感じ。ドイツの就活はまさに、お互いお見合いって感じですね。

5. だから優秀な人材は海外へ行く

別にドイツのやり方がすべて正しいとは言いません。でも問題は、日本の就活システムが変わらない限り、優秀な人材がいなくなる、ということです。だって面倒くさいもの。実力で評価してくれないもの。たとえ10個の資格を持っていても、茶髪で面接に行ったら落とされるのが日本の就活ですから。「就活メイク講座」とか果てしなくどうでもいいですねぇ。こういう講座で金儲けできるんだから、日本って本当に終わってます。

最近は優秀な人たちはあえてベンチャーへ行ったり、起業しちゃってますね。やりたいことやれるから。でもそれって、国家の損失ですよ。

これからばりばり働いて日本支えていく世代が、企業に失望してるんですから。根性論が廃ってバブルがはじけたのに、まだ古いやり方でやってるの? もうお笑い種ですよ、先進国として。

営業成績優秀な友達が、酒の席で上司に殴られ、人事に文句を言いに行ったらしいw そしたら二人とも左遷だとさ。友達はすぐに仕事辞めましたけど。協調性を大切にして生産性が落ちてもいいんですか? 学生は毎日ネットとにらめっこして説明会予約して、黒髪に戻して。企業も就活生のお昼ご飯用意したり、何十人もの社員が仕事の手を止めて説明会に来て。いやぁ意味がない。時間とお金の無駄ですねぇ。こんなんじゃ実力評価してくれる海外に行きますって。

それでも日本は先30年は変わらない。だからヨーロッパにおいで!

でもこんな批判、もうずっと前からされてます。それでも日本は変わらないんです。30年後も、みんなリクルートスーツ着てるんじゃないですかね。どうです? がっかりしませんか?

「やりたいことをやって稼ぎたい」「一旗あげてやる」「俺が世界を変えるんだ!」という意欲にあふれている人! 残念ながら日本では評価されません。むしろ異端児として扱いづらいレッテルを貼られるでしょう。

んな人は、今すぐにヨーロッパで就活をはじめましょう! 今まで積み上げてきた経験を生かし、のびのびと実力を発揮し、評価される。それは日本ではなく、ヨーロッパです。

寄稿者プロフィール

雨宮紫苑。1991年生まれ。日本の大学卒業後、ドイツでまた大学生やってます。専攻は政治とジャーナリズム。海外経験を生かしたライフハック系の記事や、ドイツ語・日本語ニュースの紹介ブログを運営中。ライターで生計を立てるために目下奮闘中です。

雨宮さんありがとうございました!

いやードイツの就活事情おもしろいですね。ぼく自身も日本の大学を卒業して新卒でドイツのシンクタンクで働いた経験があったのですが、何しろ日本で就職活動をしたことがなかったので、こういう記事書けなかったんですよね。雨宮さんは日本でもドイツでも就活をしていたので、その実体験に基づいた日本との対比がなんとも興味深かったです。

それにしてもドイツのAusbildung制度は面白いです。日本でいう専門学校みたいな感じですが、企業が支援しているので学費がかからないというのは助かります。大卒との給料の違いここまで如実に現れるとそりゃ大学からのキャリアを選択する人も増えるわけです。ドイツの大学進学率は日本よりも低く、しかしヨーロッパにしては低い失業率を維持するドイツの秘訣は、大卒だけでなくAusbildungを通じたキャリアプランがこのように設計されているからということもあるんでしょうかね。

ぼくも初めてドイツで仕事得たときは、本当に面接は一回だけでした。しかもインターンしたときも有給(月13万円くらい)いただいました。日本だとインターンって無給が暗黙の了解脳ような気がしましが、ヨーロッパだとErasmus+ Traineeshipを申請すればEU圏の自分の国以外のインターンするときには、補助金がもらえます。そういった機会も充実しているので、国外で就業する機会もやりやすなっているのがヨーロッパのやりかたです。これ、日本人でヨーロッパに留学している人でも利用できるのぜひ活用するといいですよ!

関連記事:

注目記事