若者が幸せな国ランキング、スウェーデンは2位。日本は?

この4月、あるランキングが公表された。その名もThe Global Youth Wellbeing Index (世界若者幸福度指数) だ。 この調査では、 世界各国の若者の状況を比較できるように、市民参加、経済、教育、健康、情報技術、治安といった若者に関連する6つのテーマに即したデータを集積し、指標化したものだ。

(http://www.youthindex.org/)

前回の記事、「若者なら今すぐベルリンにいくべき8つの理由」では若者ための街ランキングにも触れたが、他にも若者に関する国際的な指数はある。この4月、あるランキングが公表された。その名もThe Global Youth Wellbeing Index (世界若者幸福度指数) だ。 この調査では、 世界各国の若者の状況を比較できるように、市民参加、経済、教育、健康、情報技術、治安といった若者に関連する6つのテーマに即したデータを集積し、指標化したものだ。OECDの「よりよい生活指数」 (Better Life Index) にも似ている。

対象にした国は、世界の若者の人口の7割を代表する5大陸における30カ国だ。トップはオーストラリア、第2位はスウェーデン、それに続くのが韓国、イギリス、ドイツ、アメリカ、そして日本は第7位だ。

Well-being (ウェルビーイング) は、正確には単に「幸福」と訳すことはできない、というのも、個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態を表す概念として使われているからだ。1946年の世界保健機関 (WHO) 憲章草案において、「健康」を定義する記述の中で「良好な状態 (well‐being) 」として用いられたという。

なので正確には、「若者の良好な状態指数」 なのだろうが、ひとまずは若者幸福度指数に留めておく。

日本の若者は良好な状況か?

日本は30カ国中、第7位という結果で、東アジアでは韓国に次いで2番目という結果となった。韓国に比べて、6つの指標のうち、特に市民参加と教育の項目が低い結果となった。スウェーデンと比較しても、市民参加、教育で特に差が出ているのがわかる。日本は、市民参加の項目では30カ国中23位、教育は9位、経済と治安では2位、健康は8位、情報技術は6位だ。スウェーデンは総合的に高い評価を受け、世界では2位、ヨーロッパではトップであったが、市民参加の項目では30カ国中12位であった。

日本の市民参加の項目がなぜこんなに低いのか気になり、方法論をチェックしたところ、民主主義指数(スウェーデン2位、韓国は20位で日本は23位)、若者政策の有無(198カ国のうち約6割が若者政策を保持)、選挙権年齢(世界のほとんどは18歳で日本は20歳)、を指標に含んでいる影響が大きいように思える。とくに日本は選挙権年齢の高さは先進国の中でも異常だ。その他にもボランティア活動に従事しているかどうか、若者に対する信頼、政府の若者に対する理解をTRU Surveyというマーケティング会社の調査をもとにしているが、オープンデータではないので具体的な中身については掘り下げることができない。(こういう時にオープンデータって大事だと思う...)

別のデータでは真逆の結果

ちなみに若者の状況を測定する指標は他にもある。若者育成指標(youth development index)というものだ。こちらはコモンウェルス(かつてのイギリス帝国がその前身となって発足し、イギリスとその植民地であった独立の主権国家)の国を中心に、5つの指標(教育、健康、雇用、政治参加、市民参加)から若者の状況を指標化したものだ。

不思議なことに、スウェーデンと日本を比較してみると、総合ではスウェーデンは170カ国中、45位で、日本はなんと9位なのだ。さらに、政治参加と市民参加の指標がなんと日本のほうがスウェーデンよりも高いという結果だ。若者の投票率が日本では40%前後、スウェーデンでは80%近くであるにも関わらずだ。調べてみると、この指標の方法論では、政治参加の項目においては、若者政策・代表団体の有無、政治教育の有無(Ace Project)を指標に入れていること、そしてGall upによる政治的な意思表明を公的機関にしたことがあるかどうかに関する調査を具体的な指標の項目にしており、投票率を含めていないのだった。(ちなみにGall Upによる世界調査は、昨年はフリーでアクセスできたが現在はそうではない

若者政策のデータの不足。

この二つの指数を俯瞰してみると、世界においても、まだまだ若者政策におけるイニシアチブとそのための統合的なデータが不足していることがよくわかる。また、若者の具体的な状況を把握するための指標も決して統一されておらず、かつイニシアチブによってそれが異なることから、似たような指標でも結果が大きく異なるような事態が起きていることがよくわかる。

日本では、PISA(国際学習到達度調査)のランキングが上がった下がったが報じられ注目を浴びている(PISAは上記二つの指数には採用されていない)。しかし学習到達度のみならず若者の包括的な状況を考慮した指数にも注目する必要は十分にある。そうすることで日本の若者を取り巻く社会状況の何が世界のそれと似通っていて、違うのかということがわかる。(例えば、若者代表団体の有無、選挙権年齢・被選挙権年齢の高さなどは明らか)

私が先週まで働いていた、ベルリンの世界の若者政策のシンクタンク Youth Policy Press は (上調査にデータを提供していた) 、10月にアゼルバイジャにて開催される世界初の若者政策フォーラムのサポートをすることになっているが、これは国際連合、ユネスコ、欧州評議会の若者政策担当が集まるフォーラムとなる。子ども若者育成支援推進法を逆戻りさせないためにも、日本からもぜひ参加者が出ることを願う。

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