円安でも日本に仕事が帰ってこない理由。そして僕らはどう生きればいいのか?

この様な状態になったのには様々な理由がありますが、その大きな理由のひとつが「円安になっても産業は日本に戻らない」です。
A man looks at an electronic stock board of a securities firm in Tokyo, Friday, May 23, 2014. Japan's Nikkei 225 was up 0.9 percent at 14,473.19 after the dollar climbed to near 102 yen overnight. A weaker yen is a plus for Japan's powerhouse export manufacturers. (AP Photo/Koji Sasahara)
A man looks at an electronic stock board of a securities firm in Tokyo, Friday, May 23, 2014. Japan's Nikkei 225 was up 0.9 percent at 14,473.19 after the dollar climbed to near 102 yen overnight. A weaker yen is a plus for Japan's powerhouse export manufacturers. (AP Photo/Koji Sasahara)
ASSOCIATED PRESS

異次元の金融緩和で円安に持っていったのに、輸出は増えずにGDPは下落と、多くの識者が言っていた「日本オワタ」ルートに完全に乗った感がある今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

この様な状態になったのには様々な理由がありますが、その大きな理由のひとつが「円安になっても産業は日本に戻らない」です。

私も長いこと製造業向けITの仕事をしておりましたが、2011年に「日本国内で製造業がらみの仕事をするのはヤバイ」と思い、海外の製造業に転職しようと思い、多くの企業の方に話しを聞きました。

その時にわかったことは、「製造業が海外に出るのは、人件費が安いからだけではない」ということです。

人件費以外の理由のひとつが、消費者がたくさんいること。車の工場をつくるのであれば、車を買ってくれる人たちがたくさんいる場所に工場を作った方が便利です。従って、中国やタイ、最近ではインドやブラジルに工場を作ることが多くなりました。そして、日本では車をはじめ様々な工業製品の販売台数が減少しています。

もう一つが、労働者がたくさんいることです。東南アジアの工場ですと、生産量を増やすとなると平気で月に100人200人の工員を増強します。その際に人材会社にお願いすると、翌日にも数百人の候補者を集めてくれるそうです。

一方、今の日本でその様なことはできるのでしょうか?牛丼屋が人手不足で深夜営業ができなくなる時代。公共投資で建設案件があっても、人手不足で断らなくてはならない工務店もたくさんあります。

多くの日本人は工場で働くことを好みませんし、正社員として働く事を望みます。しかし、日本で正社員として雇った場合工場の生産量が下がったとしても解雇することは非常に難しいです。

さらに、少子高齢化により、工場で働く体力がある人材はどんどん減っていきます。

この様な理由を考えると、例え日本人の人件費が円安で割安になったとしても、わざわざ他国に移した工場を日本に戻すことは考えられないのです。

そんな中で、これから私たち日本人がサバイブしていくためにはどうすればいいのでしょうか?

私が考える策はふたつです。

1.海外で外国人と仕事をし、外貨を稼ぐことができるようになる

2.国内でブルーカラーの仕事ができるようになる

1つめは、言わずもがなですが、これから円安が進むに従って、円を稼ぐことの価値は減っていきます。逆に相対的に外貨を稼ぐ価値は増えていきます。

そして、多くの日本企業は海外に拠点を移していくので、そこで働くということです。

本来であれば、タイ工場のマネージャはタイ人がやるべきです。インドネシアで工場を作るのであれば、インドネシア人を現地法人社長にして、彼に総指揮をさせるべきです。しかし、現実問題として、現在の日本企業が東南アジアの超優秀層を獲得することは難しいです。なぜなら、日本本社が外国人に適切な指示を出せない、日本本社の役員に外国人を入れることにアレルギー反応を示す人が多くいる、給与額が日本人 > 東南アジア人という不文律がある、などなど、海外の優秀層が納得できない、理不尽な状況だからです。

そんな状態だから、日本企業は海外に日本人を送り込みます。高いお金を使って本社社員を海外に駐在させる場合もありますし、現地採用という形で現地で日本人を雇うこともあります。今のところ「海外に出たい」という日本人はあまり多くないので、これらの役職は狙い目です。ただ、中長期的にはさすがの日本企業も現地人を要職に就けるようになりますので、過渡的なものかもしれません。

とはいえ、いきなり外国で外国企業で働くよりも働きやすいのは間違いないです。ので、まだこの様なステップがあるうちにここで経験値を積み、海外で働く・生活することに慣れ、現地のスタッフやマネージャとの仕事の仕方を身体で学ぶことは大切です。野球選手であれば、いきなりメジャーリーグに行くのではなく、社会人リーグや独立リーグ、日本プロ野球で経験値を積むわけです。そして、将来日本以外の企業でも働けるようになっておくことは、今後の世界でサバイブするために非常に有益な事なのです。

2つ目は、国内でブルーカラーとして働く事です。

今、飲食店のバイトの給料は高騰しています。建築業はさらに高いです。若い人の人口が減っている上に、大学進学率などが高くなり、ブルーカラーとして働く事にマイナスの感情を抱いている人が多いからです。

しかし、日本企業の海外進出に伴い、ホワイトカラーの仕事は減っていくのに対し、コンビニや飲食店、建築などは海外進出しようがありません。仕事の絶対量は減っていくかもしれませんが、それ以上に労働人口は減っていく可能性が高いです。だから、ブルーカラーとして生きることを決め、現場をまとめられたり、これから入ってくるであろう外国人移民をマネージしたり、各種国家資格が必要な職種で経験を積んで「高付加価値ブルーカラー」になっておくことも有益だといえるでしょう。

私は今、カンボジアで「サムライカレー」というカレー屋を運営しています。ここでやっていることは、まさにこの2つです。

ひとつは、海外で、外国人のスタッフと一緒に、現地のやり方を学びながら働く事。カレー屋を始めた直後から「カンボジア人はスパイシーなカレーが嫌い」という事を知り絶望的な状況になるも、現地人スタッフと一緒にカンボジア風のカレーを開発したりするなかで、ローカライズの方法を学んでいます。

看板ひとつを作るにせよ、日本人的に格好良くデザインされた看板でも「英語が読めない、綺麗すぎるデザインは現地の人からみるとアウェー感を感じる」など、日本人がいいと思うものが必ずしも現地人がいいと思うとは限らないということを身体で学ぶことが出来ます。

もう一つは、ブルーカラー的な仕事をするということ。

最初はカレーを3時間かけて混ぜるところまで自分たちでやっていたのですが、現地人スタッフを雇い、カレーを作ることを学びます。さらに、専業主婦の料理が旨いカンボジア人を雇うと、彼女が現場を指揮って我々がいなくてもカレーを作ってくれるようになります。そうすると、主業務は彼女が効率的に仕事ができるようにお膳立てをすることになってきます。

こうやって、ただカレーが作る工員ではなく、現場を仕切れるようになり、さらに現場全体もマネージできるようになると、カレー作りという仕事でも幅がどんどん広がっていきます。

実は、サムライカレーでは、この様な体験を受講生の人に実際に現場でしてもらっています。

大学生や社会人の研修生をカンボジア・プノンペンに呼び、彼・彼女らに経営権を与えます。新規で人を雇うことも、新メニューを開発することも、看板を作る事も彼らに任せます。現地でアンケートを取ったり、現地人スタッフと相談したり、実際の売上の推移から成否を判断したりしながら、お店を改善していく中で、外国で外国人と働くことや、現場をマネージすることを身体で学んでもらっているのです。

「お金を払って海外に働きに行くってどうよ?」という外野の声も聞こえますが、実際お店を回してみれば、お金をもらってもこの様な事をするのは困難だということが分かると思います。新しい事を行ってお店の売り上げが下がるリスクや、業務経験がない人を受け入れて仕事の仕方を教えるコストを考えたら、おいそれと受け入れるわけにはいかないのです。

我々は海外での人材教育を行っており、現地で「教育」をしながら、実践する舞台を提供しているのです。

実際、この研修を受けた人たちは、あっという間に就活で内定をとり海外勤務を勝ち取ったり、海外で就職したり、外資系企業に転職したりしています。

おそらく、「大学を優秀な成績で卒業し、公務員や大企業のホワイトカラー」という道は狭き門に鳴っていきますし、さらにその狭き門を通過した後も待遇は今よりも悪くなっていきます。

なので、多くの日本人が望まない、海外・外国人相手の仕事&ブルーカラーという道を試してみるのは悪くないと思います。それが向いていると思う人はその道に進んでいけばいいですし、向いてないと思えば、別の道を探ればいいのです。

こんな道に興味がある人は、サムライカレーのWebページをのぞいてみてください。

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