SNSで散々な評価だったAmazonプライムデーはなぜ成功したのか

不満の声はあったものの、Amazonのプライムデーは膨大な売上を記録した。ブラックフライデーなどに匹敵する大量売上デーを作ろうとする目論見は成功したわけだ。
TechCrunch

利用者からの不満の声はあったものの、Amazonのプライムデーは膨大な売上を記録した。ブラックフライデーやサイバーマンデーなどを含む感謝祭後のセールス期間をライバルと想定し、それに匹敵する大量売上デーを作ろうとする目論見は見事成功したわけだ。

Amazonによるとプライムデーの売上は、プライム会員限定のセールスであったにも関わらず、ブラックフライデーの売上を超えたのだとのこと。ただし、ソーシャルネットワーク上での盛り上がりを獲得することはできなかったようだ。Twitter上で不満の投稿を目にした方も多いことだろう。

ソーシャルメディアの記事をみてみると、割引率や商品バリエーションなどについて不満を感じた人が多かった模様だ。また、Amazon製品(Kindleやタブレットなど)を期待していた人は、在庫数の少なさにがっかりした人が多かった様子だ。

販売数量をみると、Amazonデバイスが非常に多かったようだ。たとえばAmazon Echoスピーカーは数千台を売上、またFire TV Sticksは1時間のうちに何万台も売り上げたらしい。しかし在庫が出払ったあと、商品の補充は行われなかった。利用者は無益にキャンセルリストに登録することになってしまったのだ。

このAmazonプライムデーについて、ブログ、Twitter、Instagram、WordPress、Reddit、Foursquareなどのソーシャルネットワーク上でのメンションについて調査したAdobeによれば、ブラックフライデーと比してソーシャルネットワーク上での盛り上がりには欠けていたとのこと。プライムデー開始から10時間程度の間に、ソーシャルネットワーク上でのメンションは9万件ほどであったとのこと。しかし2014年のブラックフライデーについていえば(同じ時間幅で)20倍(160万)のメンションがあったとのことだ。

アメリカ国内からの発言をみると、50%が否定的な評価を下していたとのこと(#PrimeDayFailなどというハッシュタグも登場した)。主な原因は目玉商品の不在によるものだ。目立った商品はソックスやマイクロファイバー・タオル、ないしアダム・サンドラーの映画などで、魅力に欠けると評価した人も多い。評価の割合をまとめておくと「Sadness」が50%、「Joy」が23%、「Admiration」が19%で「Surprise」が8%となっている。

Adobe以外にもプライムデーに関するソーシャルの動向を取りまとめてみたところがある。たとえばAdWeekはAmobee Brand Intelligenceの調査を掲載している。それによるとプライムデー開催日の13時(東部標準時)段階で、分析した11万2581件のツイートのうち肯定的な評価は23%しかなかく、12%がネガティブ(65%は中立的なものであったとのこと)であったそうだ。プライムデー前日についてみると、Amazonについての投稿は22%が肯定的で大差ないものながら、ネガティブな投稿は7%だけなのだそうだ。ネガティブツイートが241%になったと評価している。

ただし、ネガティブなツイートが多くあったにもかかわらず、売上を大いに伸ばすこととなった。言ってみれば「悪評も宣伝のうち」(no such thing as bad publicity)を体現したことになるわけだ。

たとえばAdobeのシニアアナリストであるJoe Martinの指摘によれば、Experianのデータによると、Amazonへのリファラルトラフィックの15.2%をソーシャルネットワークからのものが占めることになったのだそうだ。1週間前の水曜日は11.3%だったので、35%伸びたことになる(ニュースサイトやメディアサイトからのものは6.7%で、こちらは前の週から4.3%の伸びとなっている)。

つまり、Twitter上での評判は良くなかったものの、いずれにせよ顧客を引き寄せる役にはたったということだ。リンクを辿ってAmazonを訪問した人には、実際に買い物をした人も多い。Amazonからはプライムデーにおける販売額などについてのレポートが出ているが、ネット上に流れた悪評についての言及はない。

Twitter上で「こんなものいらない」などとも言われた製品(マイクロファイバータオルなど)の販売数が多くなっているという現象が見られるのは、なかなか興味深い(マイクロファイバータオルは1万枚を売り上げた。また、やはりTwitter上で「Amazonのセールスでこれはなあ」などとも言われていたラバーメイドの食品保存容器セットは2万8000セットも売り上げている)。

もちろん宣伝になればなんでも良いわけでもない。たとえばAltimeter GroupのアナリストであるOmar AkhtarはInternet Retailer's wrap-upの記事で「このような否定的な評価が出てくることはAmazonにとってけっして良いことではありません」と述べている。ブラックフライデーなどのショッピングイベントは消費者に満足感をもたらすものであり、Amazonはそうした満足感を顧客に提供することに失敗してしまったと述べている。

繰り返しになるが、このプライムデーは年会費99ドルのプライム会員限定のセールスだ(訳注:日本とアメリカではプライム会員向けサービスの内容が異なります)。既に会員になっている人向けのものなので、少々悪評があったとしても気にすることはないとAmazonが考えているとするなら、それは大きな間違いだ。プライムデーについて悪い評判も多かったことや、改善可能性についても真摯に判断していく必要があるように思う。

さらに、プライムデー開催の目的は商品を売ることだけでなく、プライム会員を増やすということでもあったはずだ。それであればなおさらのこと、利用者の評価に耳を傾ける必要がある。

プライムデーの開催で売上が伸びたとしても、そこで生じた不信感がAmazonに対する悪感情の萌芽となる可能性もあるだろう。プライム会員になろうかと考えていた人も、ソーシャルメディア上に流れてくる悪評を見て考えなおしたというようなケースもありそうだ。

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(翻訳:Maeda, H

(2015年7月19日 TechCrunch日本版「ソーシャルメディアでの評価は散々(?)だったAmazonプライムデー」より転載)

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