コンビニの出店戦略を地図にしてみたら...

コンビニの出店戦略の実態に関しては厳密な検証情報はなく、特定都市における出店数を比較したようなものや、単に四国にセブンイレブンが出店していないという情報を根拠にしたものが多数見られます。データが手元にあるので、このドミナント出店戦略を数値化、可視化してみます。

こんにちは、集計野郎マクガイバーです。

コンビニの出店戦略ではセブンイレブンのドミナント戦略が有名で公式ホームページにも記載してあるくらいです。

しかし、その実態に関してはどの程度そうであるのかといったような厳密な検証情報はなく、特定都市における出店数を比較したようなものや、単に四国にセブンイレブンが出店していないという情報を根拠にしたものが多数見られます。

関西ではローソンがドミナントしているのはいうまでもないし、特定の地域を抜き出して一般的な結論を持ち出すのは問題に思われます。

幸いなことに去年集めたものですが、データが手元にあるので、今日はこのドミナント出店戦略を数値化、可視化してみます。

(以後、ですます調ではなくなります。)

■ ロウデータで見る各コンビニの出店戦略

ここでは、ロウデータを地図上にプロットして各コンビニチェーンの出店戦略がどのようになっているかを見てみる。

赤:セブンイレブン、青:ローソン、緑:ファミリーマート、オレンジ:サークルK、紫:その他

以下の図は東京都内の中で各チェーンの出店戦略を最も顕著に表していると考えられる箇所を抜粋したものである。

青のローソンが多く見えるが、これは色の見えやすさも要因であることに注意する。

ここから見てとれる出店戦略の仮説は以下の通りである。

セブンイレブン:東京の中心部からやや離れた地域に店舗が多く、電車の沿線ではないところにも出店している。

サークルK:出店地域は狭く傾向は読み取りにくいが、セブンイレブンと同様の出店傾向が見られる。

ローソン:都心を中心に幅広く出店している。沿線上の出店傾向が強い。

ファミリーマート:都心を重点的に出店している。

こうしてみてみると沿線上の出店傾向があるローソンもセブンイレブンと変わらないドミナント戦略のように見える。

■ドミナンスを可視化する

続いて、各コンビニチェーンのドミナンスを可視化する。

ここでは、日本地図においてコンビニが存在している領域を切り出したバウンディングボックスを

一辺の最大セル数が300になるように正六角形で区切り、当該セル内における最も店舗数の多いコンビニチェーンを当該チェーンの支配している地域として色を塗りわける。

これを支配地域と呼ぶ。ただし、同一セル内で最も多い出店数が複数チェーンでタイであった場合はランダムにその中から選ぶものとする。

上記の図は後出しではあるが、各コンビニチェーンの出店戦略を最も表していると考えられる地図である。

中国地方から東海地方までを切り出している。色は下記の通りである。

赤:セブンイレブン、青:ローソン、緑:ファミリーマート、オレンジ:サークルK、紫:その他

各チェーンの特徴をまとめると以下のように読み解ける。

セブンイレブン:典型的なドミナント戦略、中国地方や滋賀などに重点的に出店しているが、他の地方には見られない。

サークルK:東海地方に重点的に出店しており、ほとんどの領域を支配している。

ローソン:足元である関西地方の店舗を支配している他に、比較的人口が少ないと思われる山間部や地方にも幅広く出店している。

ファミリーマート:ドミナントしている地域は少ないが、淡路島やその他人口が少ないと思われる地方に所々見られるように幅広く出店している。

またこの地図にはないが、東京の都心部、山手線圏内はファミリーマートが支配している(4セル)。

ちなみに日本全国で見ると以下のような感じになる。

■ドミナント出店を定量化する。

可視化では仮説のレベルを出ないため、ドミナント出店をしているかしていないかを表す指標を作成する。

定量化するにあたって、その統計量として以下の3つの条件が必要である。

ドミナント性・・・ある特定の地域を支配していること。これは先ほどの六角形グリッドのデータを用いることで満たす事が出来る。

空間的自己相関性・・・支配地域が空間的に隣接している数が多いこと。支配地域が隣接していること。

支配地域の数に対する非依存性・・・隣接数は支配地域が多いと高くなるので、店舗数の少ないチェーンには不利であるため。

この条件を満たす空間的自己相関の統計量として、今回はカテゴリカルな空間的自己相関のjoint-countの検定に用いるZスコアが使えそうなので、これを用いることにした。

(これ以外に上記の条件を満たし、ドミナント戦略を定量化できるよりよい指標は思い浮かばなかった。)

このスコアは帰無仮説(各チェーンにおける支配地域数を変えずにランダムにセルを配置した場合)におけるチェーンの支配地域の隣接数と実際のデータの隣接数を

標準偏差を踏まえた形で比較するものである。Rのspdepのjointcount.multiを用いることで算出できる。

■ 結果

結果は以下の通りである。

Zスコアでは、サークルK・サンクスが最も高い数値を示している事がわかった。

実際にはサークルK・サンクスもセブンイレブンと変わらない程度の高いドミナント戦略をとっている事がわかった。

また、これと比べるとファミリーマートやローソンは幅広く出店する戦略を採択している。

関西を足元に持つローソンがドミナンス指標ではファミリーマートよりやや優位にでる。

また、店舗数比率/支配地域比率のインデックス(より少ない店舗で地域を支配しているという指標)と空間的自己相関性を表すZスコアが比例する形になった。

■ 結論

セブンイレブンとサークルK・サンクスが最も高いドミナント戦略をしていたチェーンに群となる。

その後、ローソン、ファミリーマートと続いた。

■ 最後に

地図はQJIS使って作っています。ドロネー分割したり、人口や沿線とその乗降客数の情報等も使うと他のチェーンの戦略がわかって面白そう。

ちなみに今回この分析をしているのは、コンビニの出店戦略に興味があったからではなく、別の技術的な検証を行うためでした。

それについてはまた時間があれば、ブログを更新したいと思います。

追記:すいません、結論内部で間違った記述をしていた箇所があるため、本文を修正しました。

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