なぜ秘密保護法案が問題か?NYタイムズは語る

ついに日本の「特定秘密保護法案」について、ニューヨーク・タイムズ紙が注目を、いや正確には「警戒」を始めた。しかも、これは特定の個人によるオピニオンではなく、「エディショナル・ボード」による力強い社説だ。同法案については、既に多くの新聞社の社説だけではなく、全国の憲法研究者・メディア法研究者・刑事法研究者や、歴史学者による懸念の声が聞かれている。

ついに日本の「特定秘密保護法案」について、ニューヨーク・タイムズ紙が注目を、いや正確には「警戒」を始めた。しかも、これは特定の個人によるオピニオンではなく、「エディショナル・ボード」による力強い社説だ。同法案については、既に多くの新聞社の社説だけではなく、全国の憲法研究者・メディア法研究者・刑事法研究者や、歴史学者による懸念の声が聞かれている。

■社説の内容

ニューヨーク・タイムズ紙の社説の要約は以下のとおり。全文は、こちらで確認することが出来る。

(1)日本政府は、国民の知る権利を損なう秘密保護法の制定に向けて動いているが、「秘密」のガイドラインは存在しない。定義の欠如は、政府にとって不都合な情報が秘密指定となることを意味している。

(2)政府関係社は、秘密の暴露により懲役10年が科せられる可能性があり、文書を機密扱いにするインセンティブが働くだろう。

(3)すでに「防衛機密」の権限を持つ防衛省は、2006年から2011年に5万5000件の機密指定を行い、3万4000件が破棄。解除されたものはわずか1件にすぎない。

(4)秘密保護期間は無制限に延長でき、政府の説明責任は縮小するだろう。

(5)政府は、ジャーナリストに対する最長5年の懲役刑を脅しとして、より不透明になるだろう。日本の各紙や世論は同法案に懐疑的だが、安倍政権は早期成立を熱望している。

(6)安倍首相はNSCの創設を目指すが、ワシントンは機密情報の共有のため情報管理の強化を求めてきた。提案されている安全保障会議では、6部門のうち1つに、北朝鮮と共に中国が置かれている。これは、中国への対決姿勢とタカ派的な外交政策を反映しており、東アジアにおける日本への不信を拡大させるだろう。

「知る権利」の問題や、「秘密」の定義が曖昧なことなどについては、すでに各紙や専門家のコメントなどで知られているポイントかも知れないが、興味深いのは日本版NSCの創設と絡めながら、中国と北朝鮮を担当する部門の存在が安倍政権のタカ派外交を反映しているという危惧だろう。すでにNSC法案は今国会で成立することが決定したが、秘密保護法と絡めた議論が求められることが示唆されている。

■世論は慎重な審議を求める

共同通信社が先月実施した全国電話世論調査では、特定秘密保護法案に反対する人は50.6%と過半数となっており、賛成は35.9%となっている。慎重な審議を求める声は82.7%となり、自民、公明両党の幹事長が同法案を今国会中に成立させる方針であることとは裏腹に、国民はこの法案が性急に決定されていることに強い不安を覚えている。

果たして、政府は国民の懸念を他所に同法案を可決するのだろうか?疑念の目は、日本のみならず世界へと広がっていくだろう。

(※この記事は11月10日に掲載された「なぜ秘密保護法案が問題か?NYタイムズは語る」より転載しました)

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