熊本地震1か月、生活再建へ歩み始めた住民の希望と不安

熊本地震から一カ月。役所も壊滅的な被害を受け、生活の再建が遅れていた益城町で、ようやく5月20日、罹災証明書の発行が始まった。

熊本地震から一カ月。役所も壊滅的な被害を受け、生活の再建が遅れていた益城町で、ようやく今日(5月20日)罹災証明書の発行が始まった。

罹災証明書とは自然災害によって被災した家屋の被害の程度を証明する書類で、これがないことには生活再建支援金や住災害復興融資も受けられず、生活再建の見通しがまったくたたない。この書類を手にするには、住宅の被害を市町村の担当が立ち会って調査し、「全壊」「大規模半壊」「半壊」それに「一部損壊」の4つのいずれかに判定してもらわなければならない。今も車中泊をしている男性(60)に話を聞くと、罹災証明書の発行手続きのためだという。

「家族は他県に避難しているけど、私は罹災証明書の申請待ち。郵送とかネットとかじゃできないし、そもそも行政からの説明もないし」

今回の発行でようやくご家族の元に戻れますかと聞くと「でも仮設住宅も第一期は50くらいでしょ。当たるかわからんし、ハズれたらまたこうして車中泊で待つことになる」

すでに日中は30度近くの暑さになる中、いまだ車中泊を強いられている人の中にはこうしたやむにやまれぬ事情を抱えている人もいる。東北の震災でもそうだったが、自治体ごとの対応格差は深刻だ。

末松ひとみさん(63)の不安も生活資金と住宅だ。16年生活し、リフォームしたばかりの家は、2回目の本震で全壊した。その状況を見ると、改めて地震の威力と恐ろしさが伝わり、どんなに恐ろしかっただろう。

「同じ場所に立て直すつもりですが、やはり地震に強いしっかりとした家が建てたいと考えると、それだけ多くのお金がかかりますし」

益城町は水がきれいなこともあって、半導体をはじめ国内外から様々な企業の工場誘致に力を入れてきた。末松さんもそうした工場に勤めているが、今回の地震が企業離れにつながらないかも不安だ。

「ご近所でも、益城町を離れることを決めた方が多い。この町に人がいなくなってしまうんじゃないか。これから先どうなるのか不安でなりません」

とにもかくにも今は住宅の確保が最優先課題だが、元の生活に戻るのには2〜3年はかかると思うと末松さんは言う。そのためには各地域さらには熊本県の経済も再び活性化させていかなければならない。まさにここからが正念場であり、東北同様に日本全体で関心を風化させることなく山積する課題に取り組み続けることが必要になる。

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