金賢姫氏、拉致問題を語る「まだまだ越える山がある」大韓航空機爆破の実行犯

今も、北朝鮮が大韓航空機爆破事件への関与を否定している中、真実を話し続けることが、生き残った自分の使命であり責任だと語る金賢姫氏。今回の再調査ついて、そして彼女の見た田口八重子さん、横田めぐみさんの様子について、じっくりと話を聞きました。
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1987年11月に起きた大韓航空機爆破事件。その実行犯の一人だった金賢姫氏が服毒自殺に失敗し、逮捕されたことによって、北朝鮮による恐るべきテロ行為の全貌と、さらに彼女たちスパイの日本人化計画に関与したとされる日本人拉致被害者たちの存在が明らかになりました。

今も、北朝鮮が大韓航空機爆破事件への関与を否定している中、真実を話し続けることが、生き残った自分の使命であり責任だと語る金賢姫氏。

北朝鮮による拉致被害者などの再調査の結果報告が目前に迫っている今、改めて「報道ステーションSUNDAY」は、今回の再調査ついて、そして彼女の見た田口八重子さん、横田めぐみさんの様子について、じっくりと話を聞きました。

長野:今回北朝鮮が本格的に拉致問題解決ということで特別調査委員会というものを作りました。拉致被害者のご家族の皆さんも大変結果に期待をしているんですが、まず今回の本気で調査をするという姿勢についてどういう風に感じていますか?

金賢姫:えぇ...まあ、金正恩が政権を取ってから2年あまりになりますけど、まだ国内的に色々な困難があると思います。まず、政治力も弱いし、人民たちの尊敬心や忠誠心も祖父とか父よりは比べものにできないほど低いんですよね。

だから、いろいろな混乱を切り抜けるために、今度の拉致問題を切り出したと思います。そして個人的に、金正恩は日本の在日同胞であった母の影響も受けているし。

父が命令したわけで、自分が命令したことではないから不安感も少ないし。それで日本とは関係改善をさせようという、そういう心はあるだろうと思います。

長野:全員帰ってきてほしいと思うのですが、いかがですか。

金賢姫:えぇ、それはちょっと時間もかかるし、まだまだ越える山があるんですよね。

長野:その越える山っていうのは北朝鮮が死亡・未入国と発表している日本人のことですよね?

金賢姫:えぇ、発表している彼らを全部返すのはどういう意思を持っているか、それが問題ですからね。

長野:北朝鮮が死亡としている人の中に田口八重子さんと横田めぐみさんも入っているんですけど、お2人含めて全員、生存しているという風に思われますか?

金賢姫:えぇ、私の考えでは、特にあんな対南工作で働いた私の立場ではそう言えるんです。そして北朝鮮では田口さんが死亡したとして死亡確認書を出したんですよね。でもあれを見ても86年に死亡したと言いますけど、私は87年まで北朝鮮にいました。でも、あの時に北朝鮮に入った時に田口さんが死亡したという話は聞いたことがありません。

あの中で拉致被害者の人たちが死ぬなんてありませんよ。ありえないんです。あんな中で。

長野:どうしてありえないんですか?

金賢姫:食べるものは、あそこで十分に生活はできます。あの中で。自由がないだけで。みんな特別に管理されていますよね。田口八重子さんが死亡したという話は聞いていないし、横田めぐみさんは韓国人と結婚して、新婚生活をしたという話も聞いたり、どこに住んでいるという話も聞いたり、娘を産んだという話も聞いたり、まぁ、いろいろ聞きました。

田口さんがマシク嶺の峠で交通事故だと言っているんですけど、私も一度元山に行くときに一度行ったことありますけど、あそこは車は一台もないところなんです。あんな静かなところで交通事故なんかあり得ないですから。ああいうのを見て、あれはみんな嘘で。ただ、返さないために文書で死亡だと言っているのだと私は思っています。

長野:なんで北朝鮮はそこまで嘘を言って、返そうとしないんですか?

金賢姫:それは死亡だと言ったら簡単ですよね。返さなくてもいいんですから。田口さんもそうだし、横田めぐみさんも。ほかの被害者たちは対南工作機関で勤めているんですから、とにかく自分たちが秘密しているところで働いていますよね。対南工作に関する秘密が暴露されることを嫌がるんです。そして、もう一つは北朝鮮では金日成家族に関する、出来事とか話は絶対秘密です。あれは一つでも漏れちゃいけないんですよね。

神格化されている国ですから。少しでも知っていたらもうダメですから。だから秘密を守るためにあんなに死亡したと言うのだと私は思います。

ある日、田口さんとテレビを観ていて、そこに出ていた歌手ですね、有名な。チェ・ヘヨクという有名な歌手が出てくると、あぁ...と思い出したみたいに、テレビを見ながら、あぁ、あの方、私が行ったあのパーティーに来ていたけど、その中でなにかゲームをするのに、負けて服をどんどん脱ぐゲームをしたと。

長野:歌手の人が?

金賢姫:えぇ、それで歌手が負けてね、ゲームで負けてね、どんどん服を脱いでいっちゃってねってそういう話をしているから、私もびっくりしましたよね。それで、誰にも言えないから心の中で私もショックだったんですけどね。

長野:ということは、田口さんはそのパーティーに参加していた...。

金賢姫:えぇ、行ってたんですね。私の考えではね、あのパーティーは金正日の秘密パーティーなんですよね。そうでしょう?

長野:秘密パーティー?

金賢姫:秘密パーティーなんですよ。公開されるパーティーでもないし、一般人が参加できないパーティーなんですよね。だから限られているんです。高級幹部とか芸能人とかそれから田口さんの場合は対南工作機関で勤めていますから、秘密機関ですよね。秘密が保証されるところなんですよね。一般人とかほかの人と接触できる場でもないし。秘密が保証される人だったから、ああいうパーティーに呼ばれたんじゃないかなと私はそんな風に思います。

拉致被害者に関しては、金正日が直接命令して実行したんですから全部ではないけどある程度知っているだろうと思います。田口八重子さんとか横田めぐみさんとかね。ある程度知っているしね。だからそういう秘密は保証されると認められたから、パーティーに呼ばれたんじゃないかなと思います。

拉致された人たちがああいう党重要の秘密機関に勤めているんですよね。特別管理されているし。

長野:その特別管理はどの部署がしているのですか?

金賢姫:対南工作は調査部ですね。当時は調査部だったんですけどね。後になって、そこで拉致被害者を管理する課ができたんです。課では専門的に拉致被害者たちを管理するんです。教育したり、とにかく生活もそうだし。とにかく特別管理しているんです。

長野:ということは、いま北朝鮮に居る拉致被害の日本人の人たちをもう全部把握して管理しているということ?

金賢姫:それはもちろんです。それは昔から特別管理されていたんですから、もう知っていますよ。もう今更、再調査が必要じゃないんです。でも、日本人妻とか遺骨とかそれは新しくしなくちゃいけないですよね

長野:今回その特別調査委員会に国家安全保衛部が関わるということでかなり進むんじゃないか、なんて言われているんですけど、この国家安全保衛部がその特別管理している、対外情報調査部の中にずいぶん入って調べたり...なんてことがあったりするんですか?

金賢姫:北朝鮮ではもともと、党中央の調査部とそれから国家安全保衛部は別の完全に別の機関なんです。で、党中央部の調査部は金正日、金正恩の命令を直接に受けて実行する、そういう何かとっても権力の強いそういう機関だったし、安全保衛部は拉致被害者とは関係なしに、外国人とは関係なしに一般人、国内人...一般人民を監視して統制して、それから悪いことをしたら、密かに収容所に送る。そういうちょっと怖い、一般人民にとって怖い機関でした。

だから全然別の機関なんですけど、最近保衛部の役割がちょっと増えたんですよね。脱北者が多くなって。増えてね、それで脱北者を中国まで行って拉致したり、なにか召還したりそういう仕事までやるからちょっと権力が強くなりましたよね、最近は。

で、今回の再調査に保衛部の責任者がいま...任命されていますから、私たちは日本人妻とか、遺骨にある色々な問題も合わせてやることに、役目がつくだろうと思います。そして拉致被害者はもうすでに特別管理されていますから、党中央部の調査部とかもまぁ...協力はするでしょう。協力して何かをやると思います。

長野:なるほど。国家安全保衛部というのはどちらかというと国内のことだから、それこそ日本人妻とか遺骨収集の関係。そしてこっちの対外調査部の方が拉致被害者を管理していると。別々で、協力してやる...。

金賢姫:やるだろうと思います。

長野:ということは、国家安全保衛部が入ったから拉致被害の問題が進展するというのは間違っているわけですね。

金賢姫:はい。

長野:横田めぐみさんのことをちょっと伺いたいんですが、お会いになったのは何年だったんですか?

金賢姫:1984年6月頃でした。

長野:それはどういう状況だったんですか?

金賢姫:えぇ、その当時私は工作員同僚の淑姫(スッキ)さんと一緒に中国語を勉強していました。その招待所、勉強する招待所がヨンソン招待所だったんですけどね。そこから私たちのいるところから、一谷間超えたら横田めぐみさんの招待所がありました。

スッキさんはもう前に横田めぐみさんから日本語を教わっていました。とても親しくて、めぐみさんのことを私にもよく聞かせてくれましたね。

それで...午後3時、4時くらいでね。真昼間だったんですけど、2人でめぐみさんに会いにいきました。横田めぐみさんにスッキさんが何をしていたの? と聞いたら本を読んでいたと言っていました。白い顔でかわいい顔で、ブラウス、スカートを履いていたかな。

印象はとてもおとなしくて、静かな雰囲気でした。で、私とめぐみさんとは初対面ですよね? それで、もじもじしながらも言えなかったんですよね。何を言おうかって。サイダーを一緒に飲んでね。そうするとスッキさんが私たち歌でも一緒に歌いましょうとね。めぐみさんとスッキさんが君が代を歌ってね。10分か15分で帰りました。

長野:金賢姫さんは、田口八重子さんと1981年から1年8カ月の間、招致所で生活をしています。どんな様子でしたか?

金賢姫:ふつうは先生で、私は学生の立場だったんですけどね。お酒を飲んだ時にはやっぱり思い出すみたいで子供のことを言うんですよね。そしてほかの北朝鮮の子供を見たら、また子供のことを言うんですよね。連れて行きたいとね。

長野:あぁ...小さい子がいると?

金賢姫:えぇ...いつも数えるんですよね。自分の子供は何歳かなって数えたりね。で、まぁ、お酒を飲んで「私泣きたい」と言いながら、子供のことを言いながら涙を流すときには、私もちょっと胸が痛かった。

そして夕方散歩よくするんですけど、ドナドナの歌をね、よく歌っていました。いまも覚えているんですけど...。

♪ある晴れた昼さがり市場へ続く道 荷馬車がゴトゴト子牛を載せていく

かわいい子牛売られていくよ 悲しそうな瞳で見ているよ

ドナドナドナドーナー~

子牛を載せて荷馬車が揺れる

あの歌をよく歌いました。

私はこの歌を聴きながら、何かね自分の立場を言っているのじゃないかなと。さびしそうに聞こえて。

長野:金賢姫さんは田口さんも横田さんも生存していると思うということですが、今、どういう状況に置かれているという風に思われますか?

金賢姫:海外でみんな関心を持っているから、前よりももっと特別な管理をされていると思います。とにかくほかの人と接触できない、ちょっと自由のない特別管理じゃないかと思います。死亡したといったんですから、死亡していないと発覚したら、だめなんですよね。だから見えないように...見えないところに特別管理されるだろうと思います。

長野:それはやっぱり先ほどもお話をされていたと思うんですけど、2人が対南工作に関わっているからということなんですかね? つまり、田口さんにしてみれば大韓航空機の事件がありましたけど、実行犯である金賢姫さんの日本人化計画に関わったとか、すべてがつながってしまうから、北朝鮮にとっては隠したいということですか?

金賢姫:えぇ、そうなんでしょうね。対南工作と、さっきも言ったように金日成に関する、家族に関することも知っているのも...関わると思います。だから、私はあの2人が一番最後になるんじゃないかなとね。

長野:でもきっといまも生存していると?

金賢姫:えぇ、生存はしていると思います。私が言いたいのはこれからも北朝鮮はとにかくより多くの利益を得るためにいろいろなカードを使いながら出るだろうと思います。だから日本側もそれに忍耐心を持って対処していかないといけないのだと思います。

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