"地産地消"こそが、アパレルの未来をつなぐ

Webショップが年々増加している今、地域のセレクトショップはいかにして存在感を放っていくべきか。今回はそれを探りたいと思います。

日本経済の7割を占めるのは、ローカル経済圏と言われています(なぜローカル経済から日本は甦るのか:冨山和彦著 PHP新書)。景気が悪くても、地元のスーパーやバスなどのインフラは生活に欠かせません。

アパレルはインフラに比べると必需品とは言えませんが、地元の人たちに消費してもらうことがビジネスの安定につながることは間違いないでしょう。Webショップが年々増加している今、地域のセレクトショップはいかにして存在感を放っていくべきか。今回はそれを探りたいと思います。

地元でつくられたものには、自ずと愛着が生まれる

地元の人たちに来店してもらうためには様々な手法がありますが、「地元でつくられているアイテムの販売」こそが、消費者の心をつかむ上で大きな要素になると個人的には思っています。店頭である洋服に目が留まり、スタッフから詳細を聞いたところ、実は地元の工場でつくられたものだった。

すると、そのアイテムがより一層身近に感じられて、購入した後にはより一層愛着が湧くのではないでしょうか。後日、「知り合いがその工場で働いている」なんていうローカル情報も判明するかもしれません。

先日、私が運営している工場直結ブランド『ファクトリエ』は、千葉県東金市に工場をかまえる老舗メーカー『精巧 (せいこう)』とタッグを組んでポロシャツを開発しました。ファクトリエはWebでの流通をメインとしていますが、最近ではリアル店舗での販売にも力を入れはじめており、このポロシャツも千葉県柏市のセレクトショップ『true』で購入することができます。

『精巧 (せいこう)』は世界的ブランドのポロシャツを手掛けていますが、千葉の中でもそれを知っている人たちはほとんどいないでしょう。しかし、セレクトショップに足を運んで実際に商品を手に取り、スタッフとコミュニケーションを図ることで、「世界水準の工場が千葉にある」という事実を知ることができる。そういった架け橋としての役割を担えるのは、セレクトショップならでは魅力です。

消費者によっては、アイテムのバックボーンを知ったことをきっかけに、「自分の手でつくってみたい」「生まれ故郷の産業を守りたい」という気持ちが心に芽生えるかもしれません。工場の次世代を担う人材が不足している今、地産地消のビジネスモデルは雇用を生み出す上でも大きなプラスになるのではないかと考えています。

在庫を抱えるリスクをなくすために購入はiPadで

またファクトリエのフラグショップでは、サンプルだけを店頭に置き、購入はiPadで行っているのですが、各地域のセレクトショップでも同じ販売手法を導入。在庫を抱える必要がないように、リスクヘッジに優れた流通モデルを取り入れているのも特徴の1つです。

関東に止まらず、富山、福井、島根、鳥取、青森・・続々と広がる輪

(10月からスタートするEFG STORE様:鳥取県米子市)

各地域のセレクトショップに、その地域で生産されたアイテムを置くという試みは関東以外のエリアでも行っています。ファクトリエ側からお声掛けするケースもあれば、セレクトショップ側からオファーをいただくケースも。ファクトリエが開発しているアイテムは全て日本製なので、セレクトショップも日本製をメインで扱っているところがほとんどです。

人と人が直接触れ合うという原点を今こそ見つめ直す

私が地元の婦人服屋の息子だからこそ思うことかもしれませんが、現在のアパレル業界は、「この洋服は誰がどこでつくっているのか」という背景が見えない時代になりつつあります。購買の利便性は上がっているのかもしれませんが、生活が豊かになっているかと言えば、大いに疑問です。人と人が直接触れ合い、地元の人たちが地元で生まれたものを愛するという原点を、今こそ見つめ直すべきなのではないでしょうか。

若いときから地元のセレクトショップに通い、親になってからは子どもを連れて服を買いに行く。そして子どもがアイテムを通して地元の産業を知り、地元愛を深める。そんなサイクルを紡いでいけるのは、実際に店舗をかまえるセレクトショップをおいて他にありません。私は全国の工場を渡り歩く中で、素晴らしい産業が各所にあることに毎回驚かされるばかりです。それを各地域の人たちに伝え、地元をより好きになってもらうために、今後も提携先を増やしていきたいと考えています。

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