パリ留学後、2万人の小さな町にあるニット工場に就職した若者

500近くのアパレル工場を訪問してきましたが、その中で感じることは「人」の問題。25年間で、工場の数、そして従業員の数ともに、実に四分の一にまで減少しています。
People working in a shoe factory
People working in a shoe factory
Felipe Dupouy via Getty Images

ファクトリエを立ち上げて3年。この間、500近くのアパレル工場を訪問してきましたがその中で感じることは「人」の問題。

25年間で、工場の数、そして従業員の数ともに、実に四分の一にまで減少しています。実際のデータでもこの通りです。

安く商品を製造できる海外に生産がシフトするのは、経済論理からするとある意味当然という結果かもしれません。

また、そもそも三大都市以外はどんどん過疎化しているわけで、「若い働き手がいない」のが現状。これは皆さんご存知の通りです。

■仲良しの工場でも採用の話は控えめ。

地方の工場は、地元の高校生を卒業後に招き入れたい気持ちでいっぱい。

しかしながら、対象となる高校生の数は少数。それゆえ、普段の商品開発では結束がある工場間でさえ、こと採用になるとナーバスにならざるを得ない状況が続いています。

■コンビニのほうが時給もよく楽、という現実

「工場」のイメージも良いとはいえず、「3K(「きつい」「汚い」「危険」)と言われてきた工場での勤務より、近くのコンビニのほうが時給もよくて楽というのが、厳しいながらもそれが現実なんだと、工場を回る中で知りました。

■しかしながら、都会から地方の工場へ就職した若者もいる

和歌山の2万人の小さな町にあるニット工場。

この工場には昨年、当時28歳の男性が入社しました。

彼の経歴は非常に変わっています。

大阪で生まれ、京都の大学へ進学。在学中にモントリオールに1年交換留学したのち、卒業後はモントリオールに2年間滞在。その後、パリへと1年間留学し、2014年、今在籍している工場に就職。

工場には縁などなかった人生。

しかしながら、工場の社長とパリ留学中に出会い、工場が手掛ける生地に魅せられて就職を決意されたそうです。

他にも、埼玉から長野県のシャツ工場に就職した女性、大阪から岡山のジーンズ工場に就職した者も工場を回る中で知りました。

彼ら彼女らと話をするうえで感じるのは、工場や工場が生み出す製品に大きな魅力を感じているという点。簡単に言うならば「やりがい」。

そんなことを聞いていると、働き手がいない、給料が高い工場に人が流れる、と、ただ文句を並べている工場には人は集まらないのは当然かもしれないと感じさせられます。若手を採用できている工場は、そのための努力をしています。採用するために、振り向いてもらうために何かしらのアクションを取っています。

この事実は多くの工場の方に知ってもらいたいと思いますし、「こんな魅力的な工場があるんだ!」と、工場の継承者になる得る若い世代にもその存在を知ってもらいたい。

ファクトリエは11月14日(土)に、学生限定で日本を代表する一流アパレル工場の方々と交流できるイベント「学生のためのアパレル工場サミット2015」を開催しますが、開催背景には、上述の通り「魅力的な工場があるんだ」ということを知ってもらいたいという想いがあるため。もちろん、アパレル工場にとっては、アパレルに興味のある学生に自らをアピールできる場になることを望んでいます。

そして、日本製のファッションはわずか3%しかないという今の時代、高校生や大学生が日本製に触れることさえ奇跡のような状況だからこそ、メイドインジャパンってこんなに良いものだったのか、と知って体感してもらいというシンプルな想いもあります。

このようなイベントも通して、工場の継承者問題に切り込みを入れていければと思います。

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