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2018年11月30日 10時52分 JST | 更新 2018年11月30日 10時52分 JST

自社アパレルブランドを成功させる4つのヒント

下請け依存から脱却する効果的な手段、自社ブランド。成功を収めているブランドはどういった取り組みを行っているのか。

11月17日に開催した【第5回工場サミット】。Session1では、工場の代表取締役を務める4名に登壇していただきました。
11月17日に開催した【第5回工場サミット】。Session1では、工場の代表取締役を務める4名に登壇していただきました。

日本のアパレル工場は、ほとんどが他社ブランドから依頼を受けて商品を製造しています。下請けやOEMに依存していると、他社からの依頼が途絶えた際に経営が立ち行かなくなり、実際に閉鎖の憂き目にあっている工場は少なくありません。

下請け依存から脱却する手段として効果的なのが、自社ブランドの立ち上げ。経営の安定性を図る上でも、自分たちらしい商品を作る上でも追い風になります。

しかし、自社ブランドを軌道に乗せることは決して容易くはありません。現在成功を収めているブランドはどういった取り組みを行っているのか。11月17日に開催した【第5回工場サミット】の中で、「自社ブランドの挑戦」というセッションを設け、4つの工場の代表取締役に集まっていただきました。

覚悟と矜持をブランド名で体現:HITOYOSHI株式会社(熊本)

HITOYOSHIが自社ブランドを立ち上げたきっかけは、親会社の倒産。「奮起しなければならない状況下で、火事場の馬鹿力がエネルギーになった」と代表の吉國さんは言います。立ち上げ当初は今とは違うブランド名でしたが、思い入れのある熊本県人吉市という場所に誇りを持ち、街そのものを背負う覚悟を決めて、HITOYOSHIと命名しました。

その意志は、Made in HITOYOSHIというコピーにも表れています。作り手として、「日本製だから品質が優れているわけではない」ということを理解しており、Made in JAPANでは自分たちの良さを伝えられないと考えました。日本ではなく、人吉からものづくりを発信する。その矜持がブランド名やコピーで体現されています。

■得意分野に一点集中し、技術を究める:株式会社革包司博庵(東京)

「日本最古の革小物工房」として、財布や名刺入れなどを製造している博庵(ヒロアン)は、ものづくりを徹底的に究めることで勝負しています。扱う商品は自分たちの技術を最大限に発揮できる革小物だけに一点集中しており、他の分野には手を広げていません。

製造工程は職人による手仕事が中心で、昔ながらの家内制手工業を今も続けています。技術が詰めこまれた製品は同業者をも唸らせるクオリティを誇り、世界各国のブランドから「技術を教えてほしい」という依頼が舞い込むほどです。

その分、新しい人材への技術伝承に時間がかかるため、指導する力量も問われます。革の質を見極める目、道具の使い方、イマジネーションの膨らませ方などは、簡単に伝えられるものではありません。そこが課題である一方、だからこそ他のブランドが追随できない差別化にもなっています。

認知されることを第一に考える:株式会社ユーティーオー(岩手)

カシミアニットを手がけているUTOは、商品を製造した後の売り方にも目を向けています。UTOが考えたのは、オーダーや問い合わせをインバウンドで呼び込むこと。そこでまず、自分たちがカシミアの専門家であることを世間にアピールしました。

HPの作り込みはもちろん、代表の宇土さんは『カシミヤとニットの話』という書籍まで出版します。カシミアを詳しく勉強したい人たちは、決まってこの書籍に手を伸ばすそう。書籍をきっかけにテレビ局のディレクターやショップのバイヤーとの関係性が生まれ、デパートとも取引が始まりました。

この戦略にも表れているように、「まずは知ってもらうこと」をUTOは大切にしており、ふるさと納税も積極的に活用。3年連続で2億円を記録し、リピート率は5割を超えています。なお、秋冬は自社ブランドに注力しているものの、気温が上がる春夏はカシミアのニーズが下がるため、この期間はOEMに専念しているそうです。

顧客との距離を近づける:有限会社デ・アイ(熊本)

スカート専門工場のデ・アイでは、商品のクオリティを上げるために、モニター会員を保有しています。具体的には、完成前の商品を社員の知り合いに特別価格で提供しており、デザインや着用感などの感想を吸い上げているとのこと。特に試験的なチャレンジを行った際には、消費者の率直な意見を参考にし、商品を進化させてから流通網に乗せるという手法を取っています。

販売後に改善点や欠陥が見つかった場合、すでに商品が広範囲に行き届いていれば、一気に信頼を失うことにも繋がりかねません。メーカーと顧客の距離を近づけながら商品を作ることは、リスクヘッジを図る上でも効果的ではないでしょうか。

ノウハウの融合がものづくりを盛り上げる

このように、取り組み方は4者4様。正解はなく、セッションの最中にも盛んにディスカッションが行われました。たとえば、UTOはふるさと納税を活用している一方、HITOYOSHIはふるさと納税に頼らない方針を採っています。

ただ、日本のものづくりを盛り上げたいという思いは、全ての工場に共通しています。ノウハウも包み隠さずに公開していただき、「方法が分からなければ聞いてください」と口を揃えておっしゃっていました。他ブランドの事例を知ることは、自社ブランドを確立する過程で大いに役立ちます。これからも伝え手として情報を発信していきたいと改めて感じたセッションでした。