「メイドインジャパンは売れる」は幻想か

果たして今はメイドインジャパンという言葉だけで消費者の心を惹きつけられる時代なのでしょうか。

近年、あらゆる商品にメイドインジャパンという言葉が冠されているのを目にします。

洋服、家電、自動車、食品。日本のものづくりが評価されるのは非常に嬉しいことですが、果たして今はメイドインジャパンという言葉だけで消費者の心を惹きつけられる時代なのでしょうか。

■アジアで台頭する韓国ブーム

ここ数年、アジアでは韓国ドラマの影響を受け、韓国製の洋服や化粧品を使用することがクールであるという風潮が高まっています。

韓国製であることを消費者にアピールするために、「メイドインコリア」を目立たせるようにタグ表示させる工場も少なくありません。その方が売上につながっている事実からも、韓国ブームが本格的に到来していることが分かります。

■商品に語れる特徴はあるか

私が運営しているファクトリーブランド「ファクトリエ」の商品は全てメイドインジャパンですが、日本製であるという表面的な事象を伝えることが目的ではありません。

「ファクトリエ」が行っているのは、世界的ブランドを手がけるような一流の工場とものづくりに取り組み、それぞれの工場でしか成し得ないこだわりを隅々までに行き届かせることです。

そうして生み出される商品には、触れた人の琴線に触れる真っ直ぐな力があり、思わず誰に語りたくなる不思議なマジックがあります。「ファクトリエ」が目指しているのは、 "語れるもので日々を豊かに"という企業理念の実現であり、決して日本製であることだけをPRしたいわけではないのです。

■海外進出の第一歩となる台湾店をオープン

1月24日、「ファクトリエ」は海外進出の第一歩として、台湾店をTSUTAYA BookStore & Caféにオープンさせました。

これまで、代官山蔦屋書店や二子玉川蔦屋家電、梅田蔦屋書店にて、ものづくりの本質や価値を伝える数々のイベントを開催してきたように、TSUTAYAを運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)さんとは以前から交流があります。

BookStore & Café形態での台湾出店はCCCさんにとっても初であり、同じ目線で共に支え合いながら新しいチャレンジが出来るという点に魅力を感じ、今回タッグを組むことに決めました。

店内の雑貨や小物は全て日本からの輸入品で、カフェスペースを担当するのはWIRED CAFÉ。信義地区というショッピングの激戦区において、隅から隅まで純日本製で統一することで他店と差別化を図っています。

■世界観の表現に欠かせない伝え手の存在

店舗やブランドの世界観を表現する上で大きな役割を担っているのは、お客様との接点となる伝え手です。私はオープン2日前に現地入りし、通訳を伴いながら数時間にわたって現地スタッフに商品説明を実施しました。

世界観を全身で表現してもらうために、スタッフが着用するユニフォームもファクトリエの提携工場で製作。伝え手のモチベーションや知識を最高潮に高め、心身ともに万全の状態でオープン初日を迎えました。

■想像を超える大反響

こちらの写真は21時に撮影したもの。

平日にもかかわらず、遅い時間帯になっても入場制限の列は途絶えませんでした。

伝え手の話を聞きながら細い部分のこだわりに驚く人、試着して着心地の良さに嘆声を上げる人、詳しい説明が書かれたPOPを熱心に読み込む人。

その光景を見ながら、商品に込めた思いは言葉と国境を超えて伝わるのだということを改めて確信しました。

ELLE」「GQ」といったファッション誌、「天下」「BusinessNEXT」といったビジネス誌からも取材が相次いだため、今後は広範囲に情報が発信され、遠方からの来客も増えていくはずです。

メイドインジャパンでもメイドインコリアでも、その言葉の表層を追っているだけでは一過性のブームに乗れたとしても、カルチャーとして長く根付かせることは出来ません。

ブランドとして世の中に伝えたい価値があり、それがマーケットから共感を呼ぶのであれば、産地がどこであっても「売れる」という結果につながっていくのではないでしょうか。

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