社会貢献につながる日本製のカトラリーをパタゴニアと共同開発

Made in JAPANのものづくりにこだわったカトラリーケースを製作しました。

この度ファクトリエは、パタゴニアの食品部門であるパタゴニア プロビジョンズとともに株式会社トビムシさんのカトラリーを入れる、Made in JAPANのものづくりにこだわったカトラリーケースを製作しました。実は、パタゴニア日本支社が他社とプロダクトを開発したのは、初となる試み。各ブランドの理念や信念が一直線につながった開発ストーリー、ぜひご覧ください!

■食品業界に警鐘を鳴らすパタゴニア プロビジョンズ

地球には、閾値を超えると取り返しのつかない環境変化が生じてしまう「プラネタリー・バウンダリー」という境界があります。

「成層圏のオゾンの破壊」「海洋の酸性化」をはじめとした計9つのカテゴリーがあり、 2015年に行われた測定では「気候変動」「生物圏の完全性の変化」「土地システムの変化」「窒素とリンの循環」の4つで閾値を超えていることが判明しました。消費や破壊のスピードが地球の再生能力を大きく上回っている今、2030年にはもう1つ地球がないと今の生活が維持できないという説もあります。

アウトドアブランドの雄であるパタゴニアが着目したのは、乱獲や自然破壊、遺伝子組み換えなどの問題がはびこっている食品業界。フードビジネスが抱えている課題を解決すべく、新たに立ち上げたブランドがパタゴニアプロビジョンズです。

「ビジネスを手段として環境危機に警鐘を鳴らし、解決に向けて実行する」を理念に掲げ、環境負荷が少なく、持続可能性に配慮した食品を開発。現在販売されているサーモンやスープ、フルーツ+アーモンド・バーは、全て有機栽培から生まれた原料が使用されています。

■日本製にこだわったプロダクト

今回のプロジェクトは、「日本の環境問題の解決に貢献できるプロダクトを作れないか」というパタゴニアプロビジョンズ側の企画からはじまりました。

日本の国土は、約3分の2が森林。森林を手入れして太陽光を地面に行き届かせ、炭素を吸収する豊かな土壌を育んでいくことは、地球温暖化の防止につながります。

森林を手入れする手段として行われているのが間伐ですが、間伐材は成長途中の木々であるため、木材としての用途に優れているとは言えません。運搬コストもかかるため、多くの間伐材が山の中に放置されているという問題も生じています。

その課題から生まれたアイデアが、間伐材を使用したカトラリーの製作です。間伐材の1つであるブナ材は、粘りが強くて折れにくいため、使用頻度が高いカトラリーにはもってこいの素材。飛騨のブナを選んだ理由は、飛騨市がブナを"市の木"として定めており、なおかつ奈良時代から木工職人の技術が受け継がれているというものづくりの側面を持っていたからです。今回製作した箸とスプーンは、株式会社トビムシという飛騨の職人さんによる手作業で仕上げられました。

パタゴニアプロビジョンズ側の責任者として今回のプロジェクトを先導したマネージャーの近藤勝宏さん。早速カトラリーをご愛用されているそうで、「普通の箸でご飯を食べるよりも美味しく感じます」とのこと。全く同感です。

■日本唯一の工場が織り上げる耐久性に優れたケース

当初、ケースに関しては、パタゴニアの洋服の製作過程で生じる歯切れの生地を使うという話もあったそうです。しかし、ケースも日本製である方が、日本の社会問題に貢献する意味合いがより強まるのではないか。そのアイデアがきっかけとなり、もともとパタゴニア日本支社長の辻井さんと私が個人的な知り合いだった縁から、日本の工場のものづくりにこだわっているファクトリエにお声がかかったというわけです。

歯切れの生地を使用しなかった理由はもう1つ。箸は先端が尖っているため、使い込んでいくごとに生地が傷んでいくという懸念がありました。今回、製作をお願いした『TAKEYARI』は、2号帆布という非常に分厚い生地を織ることができる日本で唯一の工場。完成したケースも帆布特有の重厚感があり、長年使用できる耐久性も兼ね備えています。

カトラリーの組み合わせも悩みました。実はカトラリーセットは竹を素材にしてアメリカでも作っていたのですが、フォークとナイフは実用性があまりなく、具材を軽く切るレベルであれば箸でも代用できるため、箸とスプーンという最小限の組み合わせに留めました。完成した商品をアメリカのメンバーに見せたところ、大変好評だったそう。持ちやすさや掬いやすさに配慮されているのが画像からも分かると思います。

■得意分野を掛け合わせて、新たな価値を生み出す

日本の環境問題を見直すきっかけになり、日本の技術力の高さを知るきっかけにもなる今回のプロダクト。「1つのものを長く使う」というパタゴニアとファクトリエに共通している理念も体現しており、まさに全てのストーリーが一直線につながって生まれた一品です。

今後は、木の材質を変えてマイナーチェンジを図ることも視野に入れているように、コラボはこれで終わりではありません。パタゴニアとファクトリエは、アプローチこそ違いますが、ビジネスと社会問題の解決を両輪でまわしていくという点では非常に近しいものがあります。それぞれの得意分野を掛け合わせることで、新たな価値を生み出していく。そんな未来への第一歩となるカトラリーセットで、今日も美味しいご飯に舌鼓を打ちたいと思っています。

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